症状も悪化!? 大学病院での「予約のたらい回し」を避ける方法

今回は、診察までに時間がかかる大学病院の診療システムの弊害を考察します。※いくら見た目年齢を若く保っても、「目の老化」は避けて通ることができません。50歳を過ぎれば、白内障や緑内障、加齢黄斑変性、眼瞼下垂など、加齢による目の疾患のリスクが上昇します。加齢による目の疾患は、症状が少しずつ進行するものも多く、気づいたときには取り返しがつかなくなるケースも少なくありません。本連載では、加齢によって生じる目の疾患について、医師がやさしく解説します。

数カ月も待たされた挙句「進行している」と言われ…

【事例3】 大学病院内でたらい回しされているうちに、緑内障の症状が悪化した!

 

守さん(50歳・会社員)は、最近急速に目の不調を感じるようになりました。

 

営業車で得意先回りをしているとき、人が急に飛び出してくるような感覚に襲われるようになったのです。また駐車場に車を停めるとき、距離感がうまくつかめず、何度も切り返してようやく停められるということが増えてきました。

 

そこで近所の眼科に行ったところ、「緑内障が進んでいるようですね。うちでは治療できないから、大学病院に行ってください」と言われ、大学病院を紹介されました。

 

予約を入れた日時に、有給休暇を取って大学病院に行ったところ、外来には溢れんばかりの患者がいて、午前10時の予約だったはずが、実際に診察してもらえたのは午後3時でした。

 

担当したのは、30代後半くらいの男性医師でした。いかにもベテランという感じで、ほっとしたのもつかの間、あれこれと問診をして眼底をのぞいたあげく、「進行した緑内障です。この病院には専門の先生がいるので、その先生の予約を取って診察を受けてください」と言われてしまいました。

 

守さんは「5時間待ったのに、治療を始めることもできないのか」と内心がっかりしましたが、そう言われたことに従うほかありません。

 

結局その日は、緑内障を専門とする医師の予約を入れて帰りました。ちなみのその医師の外来は非常に込み合っており、予約を入れることができたのは1カ月半先でした。

 

さて、1カ月半後の予約日に、再び有給休暇を取得した守さんを待っていたのは、またしても茫然とさせられる事態でした。

 

10時の予約のはずが14時の診察になったのはまだしも、緑内障の専門だという医師に、「だいぶ進行しているので、眼科医長の先生に診てもらったほうがいいですね。予約を取ってまた来てください」と言われてしまったのです。

 

「また予約か」、思わずため息が出ました。

 

眼科医長の診察日は、当然のようにすでに予約がびっしり入っており、ようやく空いているところに入れてもらえたのは、なんとさらに2カ月も先でした。

 

そして予約当日に、守さんの診察をした眼科医長はこう言ったのです。

 

「どうしてもっと早く来てくれなかったんですか。かなり進行していて、今からの治療だと回復する可能性が低いかもしれません」

 

「僕の事情じゃなくて、そっちの都合でこうなったんですよ!」

 

思わずそう言い返したくなった守さんなのでした。

 

守さんは大学病院で、「予約のたらい回し」をされているうちに、症状がどんどん進んでしまいました。

 

実はこのようなことは、大学病院ではけっこうな頻度で起こっていることなのです。

 

私も大学病院に入局したばかりのころ、「一体、どうなっているの? このシステムは?」と強い疑問を感じました。

 

その背景には、先ほども触れたように、病気ごとに専門が細分化されたことと、大学病院をはじめとした大病院特有のシステムがあります。

 

初診の患者さんは、初診担当の医師の下で診察を受け、「誰にこの患者さんを担当させるか」が決められます。初診担当医の役割は担当を振り分けることなので、初診の段階では治療が始まりません。

 

実際の治療が始まるのは、早くても2回目の予約時(専門の医師による初回の診察時)になります。

 

このとき担当した医師に豊富な知識と経験があればいいのですが、大学病院ですから当然、いろいろなレベルの医師がいます。中には入局したばかりで、経験の浅い医師もいるわけです。

 

守さんの医師はキャリア8年目で、それなりの経験を積んではいたのですが、初めての重い症例だったので、慎重になってしまったのでしょう。

 

そのため、キャリアが上の眼科医長にゆだねることになり、治療開始が遅れてしまいました。

 

患者さん本位で考えると、このようなことはあってはならないことですが、大学病院というシステムの中ではしばしば起こっています。

 

むしろ最初から「いい先生」にぶつかることのほうが少ないといえるかもしれません。

 

このようなたらい回しを回避するための、紹介状の書き方にはコツがあります。

 

大学病院の紹介を受けるときには、単に「●●大学病院 眼科」あての紹介状ではなく、「●●大学病院 緑内障外来の▲▲先生」というように、専門の先生の宛名が書かれた紹介状を書いてもらうのです。

 

患者さんの側にも、紹介してくれる医師に全部お任せでなく、インターネットなどで評判のいい先生を調べて、「▲▲先生あての紹介状を書いていただけますか」とお願いできるくらいの知識があるとベターです。

 

眼科医以外による眼瞼下垂の手術は、危険を伴うことも

【事例4】 経験の少ない医師による眼瞼下垂の手術後、腫れが引かない

 

直美さん(57歳)は、1年ほど前から左右両方の目を開けづらく感じることが多くなってきました。

 

やがてまぶたが目にかぶさったようになり、視野が狭くなってきただけでなく、目を一生懸命開けようとするため、肩や背中のこりがひどく、頻繁に頭痛が起こるようになりました。

 

決定的だったのが、仕事先の市役所の窓口で、子供に「おばちゃん、どうして目が開かないの?」と聞かれたことです。

 

率直な子供の言葉に、「もうほかの人の目にも、はっきりわかるようになっているのね」と観念し、病院へ行くことを決意しました。

 

以前、同じ症状だった同僚に「●●大学病院の形成外科で手術を受けた」と聞いた直美さんは、早速、その大学病院の形成外科を受診しました。

 

直美さんにつけられた病名は「眼瞼下垂」でした。直美さんは昔から近視で、高校を卒業したころからハードコンタクトレンズを使ってきました。

 

ハードコンタクトレンズを入れているときにまばたきをすることによって、眼けん挙筋という筋肉がゆるんでしまったのが原因ということでした。

 

眼瞼下垂は自然治癒することは難しいため、緩んだ筋を縫い縮める手術が必要ということでした。

 

形成外科医長の診察と、手術の説明を受けたとき、直美さんは「この先生なら、安心して託すことができるわ」と心からほっとしました。

 

しかも、「この手術を受けた人は、手術前よりも目が大きくなるんですよ」と思いがけない「おまけ」がついてくることも知らされたのです。

 

「治るだけでなく、ぱっちり開いた目が手に入るなんてラッキーかも」と、手術を受けるのが楽しみになりました。

 

手術は両眼を同時に行うことにしたので、1泊2日で入院して受けることになりました。

 

職場に入院して手術を受けることを告げ、有給休暇を申請して臨んだまではよかったのですが、手術当日、直美さんはあっけに取られました。

 

てっきり執刀医は形成外科医長が務めるのだと思っていたら、大学を出たてのような若い医師が執刀するというのです。直美さんの心に、手術に対する不安が広がっていきました。

 

実際に手術が始まったとき、直美さんは自分の不安が的中したことを悟りました。手術は局所麻酔で行われるため、直美さんの耳には、いやでも手術の様子が伝わってきます。

 

形成外科医長がつききりで、「そうじゃない」「そこもっと●●して」など、若い執刀医に注意を与え続けるのを聞き、「よりによって私の手術に、こんな新米の先生を選ばなくてもいいじゃない」と恨めしく思いました。

 

手術は予定していた時間を大幅にオーバーしていたようです。途中で麻酔が切れ、「先生! 痛いので麻酔を追加してください!」と叫ぶ羽目に陥りました。

 

術後も目の腫れと出血がひどく、翌日退院できるはずだったのに、1日延びてしまいました。

 

退院後も目の腫れがなかなか引かないばかりか、時間が経つにつれて、右と左で目の形が違っていることも気になり始めました。

 

病院側も過失を認めていますが、手術から半年経った今も、まだ腫れが引かず、通院が続いている直美さんは、もはや怒りも通り越してただ呆れるばかりなのでした。

 

とても信頼していた病院ということで、直美さんの落胆がどれほど大きかったか、容易に想像ができます。

 

直美さんにとってアンラッキーだったのは、ひとつには、眼瞼下垂の経験のある同僚が形成外科で手術を受けていたため、自分も疑いなく形成外科に行ってしまったことにあります。

 

眼瞼下垂の手術は現在、眼科と形成外科との両方で行われているのですが、美容的な要素があるため、形成外科に行く人が多いようです。

 

もちろん形成外科でもきちんと治してくれるところもたくさんあるのですが、中には目に対する影響をあまり考慮せずに手術する施設もあるため、術後に目のトラブルが起こることも少なくありません。

 

特に緑内障の手術をした患者さんで眼瞼下垂になってしまった人で、眼瞼下垂の手術の際に白目に傷がついてしまうと、重大な合併症を起こすことがあります。

 

また、眼科の手術は必ず顕微鏡を使って行われますが、形成外科の手術は肉眼で行うため、針や糸がどこまで入るかなど、細かいところまで見えていなかったのでは?と思われる症例もあります。

 

私のところにも、形成外科で眼瞼下垂の手術をしたけれども、結果が思わしくないという患者さんが来ることがありますが、糸がまぶたの裏側に回っていて角膜を傷つけているなど、見えないところでトラブルになっていることが少なくありません。

 

まぶた周りについても、眼科で診察や手術を受けることをおすすめします。

 

もうひとつアンラッキーだったのは、眼瞼下垂の手術は本来それほど高度な技術を要求されるものではないので、若手の医師の経験の場とされてしまったことです。

 

直美さんのように、病院側が過失を認めるほどの失敗をすることは非常にまれです。

 

だからこそ形成外科医長も、若手の医師に経験を積ませようとして執刀させたのでしょう。

 

大学病院には、医師の卵を一人前に育てるという教育的な役割があります。

 

よく見聞きするのが、「初めての子の出産のとき、大勢の医学生が見学していてショックを受けた」という産婦さんの体験談です。女性にとって苦痛であることはよくわかりますが、大学病院を選んだ以上、そうした対象になり得ることをよく理解しておいたほうがいいのではないでしょうか。

 

直美さんにとっても、信頼していたベテランの医師でなく経験の浅い医師が執刀し、結果として失敗したのは非常に残念でお気の毒なことでしたが、大学病院という性質上、起こり得ることでした。

 

一般の人は「大学病院だから大丈夫」「大学病院だから、一番いい治療をしてくれるはず」と考える傾向がありますが、必ずしもそうではありません。

 

患者さん自身が医療機関に関する情報を集め、それぞれの医療機関のメリット・デメリットをよく理解して、総合的に判断して病院を決めるといいのではないでしょうか。

 

 

佐藤 香

アイケアクリニック院長

医療法人トータルアイケア理事

アイケアクリニック銀座院副院長 医師

アイケアクリニック院長
医療法人トータルアイケア理事
アイケアクリニック銀座院副院長 医師

獨協医大越谷病院・眼科専門外来として、黄斑外来・緑内障外来・糖尿病レーザー外来・PDT外来・硝子体内注射外来等を担当しながら、栗原眼科にも勤務。
白内障や眼瞼、結膜疾患の手術を中心に担当。その後、八潮中央総合病院眼科医長として、白内障、眼瞼、結膜疾患だけでなく緑内障手術、網膜硝子体手術、硝子体内注射など幅広く手術も行いながら、外来診療では地域住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。

http://cataract.eye-care-clinic.jp/

著者紹介

連載「目の疾患」の基礎知識…加齢がリスクになる白内障・緑内障・加齢黄斑変性とは?

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