疲れ目と診断され悪化…失明に至る「加齢黄斑変性」の初期症状

今回は、中高年に多い目の病気「加齢黄斑変性」について解説します。※いくら見た目年齢を若く保っても、「目の老化」は避けて通ることができません。50歳を過ぎれば、白内障や緑内障、加齢黄斑変性、眼瞼下垂など、加齢による目の疾患のリスクが上昇します。加齢による目の疾患は、症状が少しずつ進行するものも多く、気づいたときには取り返しがつかなくなるケースも少なくありません。本連載では、加齢によって生じる目の疾患について、医師がやさしく解説します。

次第に、暗いところでものが見えづらくなってきて…

【事例2】 加齢黄斑変性が発見されず、知らないうちに悪化していた

 

主婦の和子さん(65歳)は、10年前に亡くなった母親が、晩年、寝たきりになった姿を見ていたことから、「私は絶対にああはならない」と、固く心に決めていました。毎日つまらなそうな顔で、「こんなことになるなんて……早く天国のお父さんのところに行きたい」というのが口癖です。

 

そんな母親を気の毒だとは思うものの、同居していた和子さん自身の肩にのしかかってくる介護の負担はかなりのものだったので、同時に「もっと自分の健康に気をつけて、元気な老後を送ってくれればよかったのに」と恨みがましい思いも抱いていました。

 

母親を反面教師とした和子さんは、将来寝たきりになることのないよう、スポーツジムに定期的に通い、汗水を流して筋肉トレーニングに励んだり、機会を見つけてはハイキングに行ったりして足腰を鍛え続け、毎年の健康診断も欠かさず受けてきました。

 

視力があまりよくないので、親の代からのかかりつけの眼科で、定期的に視力検査や目の異常がないか、見てもらうようにもしていたのです。

 

ところがそんな和子さんに、思わぬ事態が起こってきました。暗いところでものが見づらくなってきたのです。

 

かかりつけの眼科に行ったところ、和子さんと同年輩の医師に「年齢からくる疲れ目ですね」と言われ、目薬を処方されました。ベテランの医師の言葉に、和子さんはほっとしました。

 

しかし、その目薬を使っても一向によくならないばかりか、日を追うごとに見たいところがぼやけて見づらくなっていったのです。

 

そこで、最近開業した眼科へ行ってみました。大学を卒業して10年も経っていそうもない医師に、最初は「こんなに若い先生で大丈夫かしら?」と一抹の不安を感じました。

 

ところが、話がわかりやすく丁寧で、かかりつけの眼科では見たこともないような機械で検査をしてくれたのです。その結果、「加齢黄斑変性」という病気になっていたことがわかりました。

 

幸い、まだそれほど悪化しておらず、薬で治せるという医師の言葉にほっとすると同時に、「どうして定期的に眼科に通っていたのに、病気を見つけてもらえなかったのかしら。私がベテランで信頼できると信じていた先生は何だったの?」と思うと、なんだかモヤモヤする和子さんなのでした。

 

和子さんは、定期的に眼科に通っていたにもかかわらず、加齢黄斑変性を見逃されてしまいました。

 

加齢黄斑変性は中高年以上の人に多い目の病気です。それを医師が見逃してしまうとは、「そんなことってあるの?」と思われる方が多いのではないでしょうか。ところが現実に、加齢黄斑変性に関しては、同様のことが少なからず起こっているのです。というのも、黄斑変性という病気自体の認知度が高まってきたのは、ここ10年くらいのことなのです。

 

私は医師になっておよそ10年経ちます。その私がぎりぎり大学で学べたくらい新しく診断法が確立された病気なので、年配の先生だと大学で学んでいないためにそもそもこの病気に関する知識がなく、治療をしたことがないという人も少なくないと言われています。

視野の欠損部分が広がり、ついには失明に至る怖い病気

黄斑変性は、ものが歪んで見えたり、視野の中心部分(一番見たい場所)が見えなくなったりして、やがて視野の欠損部分が広がっていき、ついには失明に至る怖い病気です。

 

20年くらい前、まだこの病気が知られておらず、検査方法も確立されていなかったころは、診断そのものがつかず、原因不明のまま失明していく患者さんも多かったことでしょう。

 

ところがその後、眼科治療は飛躍的に進歩しました。特にこの10年くらいの進み方は目覚ましいものがあります。

 

それはもしかしたら、ITテクノロジーの進化のようなもの、と考えていただくとわかりやすいかもしれません。

 

10年前、世の中はまだインターネットを使う人は多くありませんでした。また携帯電話を持ってはいても、日常の連絡に携帯メールを使うということはほとんどなかったのではないでしょうか。

 

ところが今や、インターネットで調べものをしたり、ショッピングをしたりすることが当たり前になり、お年寄りでもメールを使いこなす時代になっています。電車の中で本を開く人はまれになり、ほとんどの人がスマートフォンなどの通信機器の画面に夢中になっています。

 

私たちを取り巻く通信事情は、一昔前とは考えられないほど変貌を遂げたのです。

 

眼科治療においても、同様のことが起こっています。いえ、技術革新の速さという点では、さらにスピーディーな展開を見せているかもしれません。

 

それには、ごく限られた小さな領域を扱う科であるという、眼科の特性が関係しています。

 

眼科の患部は非常に小さいため、医師の肉眼では患部を細かく見ていくことは不可能です。検査においても、領域が狭いだけに、わずかな誤差でも許されません。

 

たとえば、黄斑変性の検査機器には光干渉断層計(OCT)というものがあります。造影剤を使わずに網膜の断層撮影ができるもので、この機械の登場によって黄斑変性の診断がつくようになりました。

 

肉眼での診断に限界がある以上、精密な機器に頼らざるを得ません。したがって眼科診療では、さまざまな検査・治療のための機械についての知識を医師自身が持って、適切なものを選択し、使い方を熟知することが必要不可欠になります。

 

つまり眼科医師にとっては、日進月歩の医療機器を取り巻く劇的な変化に対応できるかできないかが、患者さんに対して、いい治療ができるかできないかを左右するということです。

 

要は、医師の姿勢ひとつにかかっているのです。

 

どんどん新しくなる眼科診療について自ら知識を求める姿勢が非常に重要なのですが、残念ながら今でも、昔ながらの眼科診療のやり方で「よし」としている先生が少なからずいます。

 

黄斑変性の治療をする以前に、黄斑変性という病気を診断する機械がないため、診断をつけられない眼科があるということです。

 

和子さんの行きつけの眼科も、そういった事情で、診断をつけることができなかったのではないでしょうか。

「ベテランの医師だから安心」とは言い切れない

一般的に、患者さんの側には「ベテランの先生だから安心」という気持ちがあるように思います。

 

若くて経験の少ない医師よりは、長年眼科診療に携わってきて、多くの経験を積んできた医師を尊ぶ気持ちを、私は否定しません。事実、豊富な知識と経験に裏付けられた、優れた治療をされている先生方がたくさんいます。

 

ただ、「ベテランであれば安心できる」と頭から思い込むのだけは、やめていただきたいのです。

 

私は開業して4年になりますが、この4年の間にも、眼科診療は著しく進歩してきました。私のクリニックでは常に最新の医療機器を入れるようにしていますが、パソコンと同じようにこれらもどんどんバージョンアップしていくため、新たに付け加わった機能や、機械操作の変更点などに対応していく努力が欠かせません。

 

パソコンやスマートフォンに日ごろから親しんでいる方ならおわかりいただけると思いますが、一般的にいって機器類操作への適応力は年齢が若い人のほうが優れている傾向があります。

 

いまどきの会社員がITを使いこなせないのでは仕事にならないように、眼科医も数多くの医療機器類を使いこなせないと正しい病気の診断がつけられず、治療方針も立てられない時代になっているのです。

 

そのため、自分が大学等で学んだころの古い診療スタイルをよしとし、新しいものに適応できていない医師にかかってしまうと、治るものも治らないということが起こり得るのです。

 

くれぐれも「ベテランの先生だから、安心してお任せできる」という先入観は持たないようにしてください。

 

 

佐藤 香

アイケアクリニック院長

医療法人トータルアイケア理事

アイケアクリニック銀座院副院長 医師

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アイケアクリニック院長
医療法人トータルアイケア理事
アイケアクリニック銀座院副院長 医師

獨協医大越谷病院・眼科専門外来として、黄斑外来・緑内障外来・糖尿病レーザー外来・PDT外来・硝子体内注射外来等を担当しながら、栗原眼科にも勤務。
白内障や眼瞼、結膜疾患の手術を中心に担当。その後、八潮中央総合病院眼科医長として、白内障、眼瞼、結膜疾患だけでなく緑内障手術、網膜硝子体手術、硝子体内注射など幅広く手術も行いながら、外来診療では地域住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。

http://cataract.eye-care-clinic.jp/

著者紹介

連載「目の疾患」の基礎知識…加齢がリスクになる白内障・緑内障・加齢黄斑変性とは?

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