日進月歩の白内障治療…最先端の手術を受けるには?

今回は、白内障の手術における注意点と、眼内レンズの種類について説明します。※いくら見た目年齢を若く保っても、「目の老化」は避けて通ることができません。50歳を過ぎれば、白内障や緑内障、加齢黄斑変性、眼瞼下垂など、加齢による目の疾患のリスクが上昇します。加齢による目の疾患は、症状が少しずつ進行するものも多く、気づいたときには取り返しがつかなくなるケースも少なくありません。本連載では、加齢によって生じる目の疾患について、医師がやさしく解説します。

白内障の手術後、遠くが見えなくなりショック…

目の治療を放置したり、あるいは適切でない治療を受けたりしたために症状が悪化した事例を取り上げ、なぜそのような事態に陥ってしまったのか、原因を見ていきたいと思います。

 

【事例1】 白内障の手術をしたのに、ちっとも視力が回復しない

 

72歳の正子さんは、生まれてこの方、体にメスを入れたことがありません。もともと体が丈夫で大病をしたことがないのです。視力もよくて、両眼ともずっと1.5を誇ってきました。それだけに「手術」というものに対して、強い恐怖心を抱いていました。

 

しかし、健康自慢の正子さんも年齢には逆らうことができませんでした。老眼で近くが見えにくくなったのに加えて、70歳過ぎたころから目のかすみが激しくなり、頭痛や肩こりまで伴うようになったのです。

 

近所の眼科に行ったところ、「白内障」と診断されて手術を勧められました。

 

最初はためらっていたのですが、白内障の手術経験のある友人に尋ねたところ、「目がスカッとして、驚くほど見えるようになるわよ。あなたも怖がってばかりいないで、早く手術したほうがいいわよ」と言われました。健康保険が適用になるため、費用が1万円程度ですむというのも安心材料のひとつでした。

 

勇気を振り絞って手術を受けた正子さんですが、目のかすみが軽減され、近くのものが見やすくはなったものの、遠くが非常に見えづらくなってしまいました。子供のころから視力がよく、遠くのものがよく見えていただけに、この手術の結果に正子さんは強い不満を感じました。

 

執刀した眼科医に尋ねても、「手術は間違いなく成功している」の一点張りで、到底正子さんが納得できる説明ではありませんでした。

患者の不満の原因は、主治医の説明不足にある

白内障の手術に対して、正子さんのように「視力が回復すると思って手術を受けたのに、目がちっともよくなっていない」という不満を感じる人は、思っている以上にたくさんいます。

 

私はその原因の多くが、主治医の説明不足にあると考えています。

 

健康保険が適用になる眼内レンズは「単焦点レンズ」と呼ばれるもので、焦点をどこに持ってくるかで術後の見え方に違いが生じます。ですから、本来であれば手術前に、どこが一番よく見えるようになりたいか、患者さんの意向をきちんと聞いておく必要があるのです。

 

たとえば近視だった人が近くのものがはっきり見えないことに不自由を感じている場合、近くに焦点の合ったレンズを使い、遠くを見るときはメガネで対応するようにします。

 

また、近視がなかった人は遠くにピントを合わせて、近くのものは老眼鏡を使って見るようにします。

 

正子さんは視力がよかったということなので、遠くのものが見える状態が「当たり前」だったことでしょう。ところが、主治医が正子さんのそんな意向を踏まえることなく、近くに焦点を合わせたレンズを入れてしまったのです。これでは「こんなはずじゃなかった」という気持ちになるのも無理はありません。

 

事前に時間をかけてカウンセリングを行い、健康保険が適用となる眼内レンズは単焦点レンズなので、すべての視界がメガネなしでクリアに見えるようになるわけではないこと、「遠く・中間・近く」のうち、どこに焦点を合わせたいのか、患者さんの生活スタイルや希望を尋ね、すり合わせをしておくことが白内障の治療では非常に重要です。

 

ところが残念なことに、多くの白内障手術では、この肝心なところがなおざりにされているというのが現状です。

 

ほとんどの眼科では、施設ごとに「遠くに合わせる」「中間に合わせる」「近くに合わせる」というふうに、画一的に決められているようです。

健康保険適用外だが、遠近両方に焦点が合うレンズも

もうひとつ、正子さんにとってアンラッキーだったのは、主治医から健康保険が適用となる保険診療以外の治療法について説明してもらえなかったことです。

 

確かに一番費用がかからないのは保険診療ですが、白内障の手術は日進月歩の勢いで進んでいて、多少費用がかかってもいい治療法がたくさんあるのです。

 

たとえば、手術を受ける眼科が、「先進医療」という保険診療と自費診療を組み合わせた治療ができる病院としての認定を受けていれば、「遠くと近く」の両方に焦点を合わせることができる多焦点レンズを使った手術を受けることができるのです。

 

多焦点眼内レンズは健康保険の対象とならないため、施設や設備により異なりますが、両眼で50万〜100万円以上する高額なものです。

 

しかし、民間の医療保険に加入している人で、その保険に先進医療特約という特約を付帯していた場合、眼内レンズ代を含めて、手術にかかった費用について保険金が給付される仕組みになっています。

 

先進医療特約を付けた保険に入っている人には、強くおすすめしたい治療法です。

 

後からわかったことですが、実は正子さんも自分の生命保険に先進医療特約を付けていました。ところがご本人が生命保険の仕組みを理解しておらず、先進医療特約を付帯しているという認識もなかったそうです。

 

また、手術前に主治医から「先進医療特約を付けた保険に加入していませんか?」と確認されることもなかったため、「遠くも近くも、両方見えるようになりたい」という自分の希望に合った眼内レンズを、高額な費用負担なしに入れる機会を逸してしまいました。

 

白内障の手術で使うことのできる眼内レンズには、

 

①健康保険適用の単焦点眼内レンズ

②先進医療特約の対象となる多焦点(2焦点)眼内レンズ

 

のほかに、

 

③自由診療で利用できる多焦点(2、3焦点)眼内レンズ

 

があります。

 

乱視のある人が③の手術をすると、非常に満足度が高いのですが、このレンズについては本書籍の第3章で詳しくご説明したいと思います。

 

 

佐藤 香

アイケアクリニック院長

医療法人トータルアイケア理事

アイケアクリニック銀座院副院長 医師

 

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アイケアクリニック院長
医療法人トータルアイケア理事
アイケアクリニック銀座院副院長 医師

獨協医大越谷病院・眼科専門外来として、黄斑外来・緑内障外来・糖尿病レーザー外来・PDT外来・硝子体内注射外来等を担当しながら、栗原眼科にも勤務。
白内障や眼瞼、結膜疾患の手術を中心に担当。その後、八潮中央総合病院眼科医長として、白内障、眼瞼、結膜疾患だけでなく緑内障手術、網膜硝子体手術、硝子体内注射など幅広く手術も行いながら、外来診療では地域住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。

http://cataract.eye-care-clinic.jp/

著者紹介

連載「目の疾患」の基礎知識…加齢がリスクになる白内障・緑内障・加齢黄斑変性とは?

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