加齢によって「目の不調」が引き起こされるメカニズムとは?

いくら見た目年齢を若く保っても、「目の老化」は避けて通ることができません。50歳を過ぎれば、白内障や緑内障、加齢黄斑変性、眼瞼下垂など、加齢による目の疾患のリスクが上昇します。加齢による目の疾患は、症状が少しずつ進行するものも多く、気づいたときには取り返しがつかなくなるケースも少なくありません。本連載では、加齢によって生じる目の疾患について、医師がやさしく解説します。

いくら容貌が若くても、「目」には正直な年齢が出る!?

「目がしょぼしょぼする」「暗いところが見づらい」「目の焦点が合わない」など、歳を重ねるにつれ、多くの人が目の不調を訴えるようになります。

 

早い人だと40歳くらいからこれらの症状を感じ始めます。

 

そして60歳を過ぎると、どんなに気力に富んで若々しく見え、他にどこも悪いところがないという人でも、「最近目が見えづらくて」「目の不調さえなければ、完璧なんだけど」など、「目にだけは正直に年齢が出る」と感じることが多いようです。

 

この連載では、加齢によって起こる目の病気の症状や、治療法についてお話ししたいと思いますが、その前に目に関する基本的なことを知っていただくために、目の構造についてご説明していきましょう。

 

「目」というとき、通常は顔の表面に出ている部分を指します。でもそれはもちろん、ものを見る器官としての「目」の、ほんの一部にすぎません。

 

目は、

 

①眼球:外界からの光や形をとらえる部分

②視神経:眼球からの光や形などの情報を脳に伝える部分

③まぶた、まつ毛:眼球を保護する部分

 

と、構造的に大きく3つに分けることができます。

 

このうち、主役級の役割を果たしているのが眼球です。

 

 

精巧なカメラのような「目」…まず構造を理解しよう

眼球は目の表面から奥に向かって、細長いボールのような形をしています。成人の場合、直径がおよそ24ミリ、重さが7.5グラム程度と、小さな器官ではありますが、ここから受ける情報は、人間がいわゆる「五感」を駆使したときの全情報の90%を占めるといわれています。

 

それだけに非常に緻密な組織で構成され、私たちが生活を送る上で非常に重要な役割を果たしています。

 

よく言われるのが、「目は精巧なカメラのようなもの」ということですが、目について知れば知るほど、「これほどよくできたカメラはない」と思えてきます。

 

では、眼球を構成する要素を、外側からパーツ別に見ていきましょう(図表1)。

 

[図表1]目の仕組み

 

①角膜

 

角膜とは、黒目の表面を覆っている透明な膜のことをいい、白目の部分とひとつながりになっています。角膜は、言ってみれば車のフロントガラスのようなもので、その奥にある水晶体とともに、レンズの役割を果たしています。

 

まず角膜で光を屈折させ(第1段階)、さらに水晶体で屈折させる(第2段階)というイメージです。

 

レンズが曇ると鮮明な写真を撮ることができないように、角膜に何らかの事情で濁りが生じると、はっきりとものを見ることができなくなります。濁りがひどくなると、強い視力障害が起こってくるため、角膜移植が必要になります。

 

ただし、角膜は現代の科学技術をもってしても、人工のものを作ることができません。臓器提供を待つしかないというのが現状です。

 

また、角膜にでこぼこがあると乱視になります。

 

②水晶体

 

水晶体とは、角膜の奥にある凸型の、直径9ミリ、厚さ4ミリくらいのおはじきのような形をしたレンズのことです。

 

水晶体はおもに水(約65%)とタンパク質(約35%)によって構成されており、チン小帯という糸のような組織によって、眼内の毛様体という筋肉部分に固定されています。

 

私たちが見たいものに焦点を合わせて見ることができるのは、水晶体と毛様体がカメラのオートフォーカスレンズのような働きをしているためです。

 

水晶体は、自身の持つ弾性と周りの筋肉である毛様体の働きによってその厚みを変えます。近いものを見るときは厚みを増し、遠くのものを見るときは薄くなります。

 

近視の場合は網膜の手前でピントが合ってしまうため、近くは見えるけれども遠くは見えにくくなります。遠視は近視とは逆で、網膜より後ろでしかピントが合わないため、近くも遠くも見えにくい状態です。また乱視は、角膜のゆがみによって光のタテ軸とヨコ軸のピントがずれてしまうため、どこもぼやけて見えてしまいます(図表2)。

 

[図表2]屈折異常による3つの見え方

出典:杉田美由紀監修(主婦の友社)『目の病気の最新治療』をもとに作成
出典:杉田美由紀監修(主婦の友社)『目の病気の最新治療』をもとに作成

 

中年以降になると、水晶体の弾性や毛様体の筋肉が硬くなってくるため、レンズの厚みを調整する能力が衰え、ものが見づらくなってきます。これが老眼の原因です。

 

また、水晶体は若いころは無色透明ですが、20代の終わりくらいから水分量が減り、弾力性が劣ってくるためタンパク質が変性してしまい、少しずつ濁りが生じてきます。

 

その濁りがひどくなり、多かれ少なかれ日常生活に支障をきたすようになった状態が白内障です。

 

③虹彩

 

角膜と水晶体の間に存在し、正面から見たときのこの色いかんで、目が青色に見えたり茶色に見えたりします。

 

中央にある開口部分である「瞳孔」は、カメラの「絞り」のような役割を果たし、暗いところでは大きく開いて大量の光を取り込み、明るいところでは開きを小さくして過度に光が入るのを制限する働きをします。

 

④網膜

 

角膜を通って入ってきた光は、情報処理されて神経信号に変換され、カメラでいえばフィルムのような場所に像として映し出されたとき初めて「ものとして見る」ことができます。

 

この「情報処理をして画像を結ぶ」という大切な役割を果たしているのが網膜です。

 

網膜の厚さはわずか0.2ミリほどで、とても薄い膜ではありますが、色彩等を識別する感覚細胞が1億個以上も集まっています。非常に感度の高い組織といえるでしょう。

 

この感度の高さは、私たちが起きている間中、絶え間なく発揮され続けています。意識的に見ようとしなくても、目は絶えず何かを映し出しており、そのとき網膜は働き続け、情報処理をし続けているのです。

 

絶えることなく動き続ける機械がエネルギーを大量に消費するように、網膜も大量の酸素や血液を必要とします。

 

私たちの体内の血管は、体の中に埋もれているため直接見ることはできませんが、唯一、網膜の血管だけは外側から見ることができます。

 

網膜から血管の状態を見ることを「眼底検査」といいます。

 

網膜の血管は脳の動脈につながっているため、「眼底検査」をすることで、脳の血管がどのような状態になっているかを知ることができます。

 

その意味でも、網膜は大きな役割を果たしています。

 

⑤黄斑

 

網膜の中心部には、「黄斑」という部分があります。黄斑には特に細胞が集中していて、視力や色覚をつかさどる重要な働きをしています。

 

黄斑に障害が生じ、視力低下や色覚異常が起こる「加齢黄斑変性」は、一定以上の年齢になると発症しやすくなります。

 

 

 

アイケアクリニック 院長
アイケアクリニック銀座院 院長 

集中力を要する緻密な作業を得意とし、特に最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。
まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。
日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケアー「トータルアイケア」の提供を目指す。
現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌などさまざまなメディアに取り上げられている。

http://cataract.eye-care-clinic.jp/

著者紹介

連載「目の疾患」の基礎知識…加齢がリスクになる白内障・緑内障・加齢黄斑変性とは?