「食べ放題」のビジネスモデルに学ぶ、企業の儲けの仕組み

みんな大好き、食べ放題のお店! しかし、お客がたくさん食べてしまっても、お店は困らないのでしょうか? 人気経済学者、塚崎公義教授がズバリ解説。将来の経済不安には、正しい経済学の知識で対抗を。連載、第5回目です。※将来の資産形成、老後の人生設計すべてに「自己責任」が求められる時代。巷にはさまざまな経済情報・投資情報が溢れていますが、読者の皆さんは正しい知識を身につけ、活用できているでしょうか。本連載は、多くのメディアでもおなじみの塚崎公義久留米大学教授が「目からウロコ」の経済談義を通じて、正しい経済学の知識を伝授します。

考える手がかりは「店のコスト」の性格

食べ放題のレストランには、食欲旺盛な客ばかり来ます。店としては来てほしくない客ばかり集まってくるわけですから、倒産しても不思議ではないのに、倒産するどころか儲かっている店も多いようです。今回は、その理由を考えることで、企業が儲かったり損したりする仕組みについて学びましょう。

 

考える手がかりは、店のコストの性格です。店を借りるコスト、従業員の給料、材料費などがどう決まるかを考えることで、「意外と食べ放題の店は儲かるかも」と思えるわけです。ビュッフェスタイルの店であれば、給仕が不要だ、といったメリットも多々ありますし。

企業のコストには「固定費」と「変動費」がある

普通のレストランで1500円の定食を提供しているとします。客が定食を食べて1500円を支払うと、店の売上高は1500円になります。では、コストはどれくらいかかるでしょうか。

 

じつは、材料費だけなので、それほどかからないのです。たとえば材料費は500円だとしましょう。材料費のように、売上が増えるに従って増えていくコストのことを「変動費」と呼びます。

 

それならば、客が一人来るごとに1000円儲かるわけですから、レストランはどこも大儲けしているのでしょうか。そんなことはありません。それは、客が来ないと店を借りるコストや従業員を雇うコストなどの分が赤字になるからです。そうしたコストを「固定費」と呼びます。

 

固定費は、客が来なくても必要ですが、客が来たからといってコストが増えるわけではありません。そこで、客が一人来るごとに「売上マイナス変動費」である1000円だけ赤字が減っていき、客数が一定水準を超えると黒字になります。その時の客数のことを「損益分岐点」と呼びます。

食べ放題の店のほうが「客あたり利益」が大きいワケ

食べ放題の店では、客が3000円払って入場し、1人前1500円の料理を3人前食べるとします。客としては3000円で4500円分の料理が食べられて大満足です。

 

しかし、同時に店も大満足なのです。それは、客が一人来るたびに売上が3000円増えるのに、材料費は500円の3倍である1500円しか増えないので、赤字が1500円も減るのです。

 

店にとってのメリットは他にもあります。客が満足するので来店客が多く、店が混んでいることです。店にとっては、客の数が少し増えるだけで利益が大きく(一人あたり1500円)増えるのですから、店が混んでいることは非常に重要なのです。

 

たとえば固定費が120万円のレストランに客が1000人来ているとします。売上は300万円、固定費は120万円、変動費は150万円ですから、利益は30万円です。客数が2%増えて1020人になったとします。売上は306万円、固定費は120万円、変動費は153万円ですから、利益は33万円です。なんと客数が2%増えただけなのに利益が10%も増えているのです。

ビュッフェスタイルの店なら、さらなる効率化も可能に

食べ放題の店には、いくら注文しても良い店のほかに、店の真ん中の大皿に料理が並んでいて客が自分でほしいものを取って食べる「ビュッフェスタイル」と呼ばれている店もあります。これは、店にとって更にメリットが大きいのです。

 

誰でも思いつくのは、料理を綺麗に皿に盛り付けて客席まで運ぶ手間が不要だ、ということです。注文をとる手間も不要ですし、新人給仕係が注文を聞き間違えて料理を作り直す必要もありません(笑)。

 

ほかのメリットとして大きいのは、コックが効率的に働けるということです。大量の料理を一度に作るために効率が良いのです。1人前の料理と20人前の料理で手間が20倍かかるわけではありませんから。これを「規模の利益」とか「スケールメリット」とか呼びます。大企業が中小企業より儲かる理由の一つですね。

 

もうひとつは、コックが一日中忙しく働けることです。注文を受け付けてから料理する普通のレストランの場合、コックが本当に忙しいのはランチタイムだけで、それ以外の時間は比較的余裕があるはずですが、ビュッフェスタイルのレストランなら、朝からコックが料理を始めることができるわけです。まあ、その分だけ少しコックの給料を高めにしないといけないかもしれませんが(笑)。

食材を大量に買えば、仕入先が値引きしてくれるかも!

普通のレストランでは、豊富なメニューを取り揃えていますから、その分だけ多様な材料を仕入れておく必要があります。そうなると、客が注文しなかった料理の材料は余ってしまい、廃棄することにもなりかねません。

 

しかし、ビュッフェスタイルだと、少品種のあらかじめ決めた物だけを作りますから、仕入れに無駄がありません。これは、廃棄される食材の損失が少ないというのみならず、小さな冷蔵庫を備えておけば良いということにもなります。

 

少品種の材料を大量に仕入れるわけですから、もしかすると、値引き交渉が可能かもしれません。「大量に買うから安くして下さい」と言えば、食材の売り手としても前向きに検討するでしょうから。

 

ビュッフェスタイルだと、客が入店して直ちに食べ始めるという点も、魅力です。客としては待たされないのでイライラせずに済みますし、店としては客が待っている時間が無いので客の滞在時間が短くなり、すぐに次の客が入店してくる、ということになるわけです。

食べ放題のレストランにおける「客の心得」とは?

さて、店の話から離れて、食べ放題のレストランに行く客の心得を一つ。元をとろうと思って必死に食べる人が多いのですが、それはやめましょう。一つには、材料費で3000円分の料理(6人前)を食べるのは無理だからです(笑)。せいぜい「2人前(他の店で食べれば3000円必要)食べれば」と考えましょう。

 

それ以上に重要なことは、「元をとってもとらなくても、払ったお金は戻らない」ということです。どうせ払ったお金が戻らないなら、苦しい思いをして無理に食べるより、満腹になった時点で食べるのをやめるほうが幸せですから。

 

このように、「お金を払ってしまった以上、払ったお金のことは忘れて、今から一番幸せになれることをしよう」という事例は非常に多くあります。払ったお金のことを「サンクコスト」と呼ぶわけですが、これは非常に重要なので、別の機会に詳しく記しましょう。

 

今回は、以上です。

 

筆者は当欄の題材を探すべく、読者の皆様からの質問や要望等をお待ちしております。なるべく経済初心者の方からの質問、あるいはお子様に聞かれて答えられなかった素朴な質問などがありがたいので、よろしくお願い致します。幻冬舎ゴールドオンライン編集部のメールアドレス「ggo_info@gentosha.co.jp」へ「塚崎公義教授にここが聞きたい係」をタイトルとしてお送りください。ご希望に添えない場合もございますが、なるべく頑張りますので。

 

 

塚崎 公義

久留米大学教授

 

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久留米大学商学部 教授

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。
著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。
趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載塚崎公義教授の目からウロコの経済談義

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