賭け事だと思えば悪くない!?「高金利通貨投資」の考察

トルコリラをはじめとする高金利通貨投資ですが、高金利等の魅力がある一方、暴落リスクの存在も忘れてはなりません。もし投資するならどんな注意が必要でしょうか?人気経済学者、塚崎公義教授がズバリ解説。将来の経済不安には、正しい経済学の知識で対抗を。連載、第4回目です。※将来の資産形成、老後の人生設計すべてに「自己責任」が求められる時代。巷にはさまざまな経済情報・投資情報が溢れていますが、読者の皆さんは正しい知識を身につけ、活用できているでしょうか。本連載は、多くのメディアでもおなじみの塚崎公義久留米大学教授が「目からウロコ」の経済談義を通じて、正しい経済学の知識を伝授します。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」とも言うわけで…

本連載の第3回の記事、『「必ず儲かる話」が「必ず損する話」になる理由とは?』でも強調しましたが、世の中には苦労もせずリスクもなく儲かる案件などありません。万が一そんな案件があったとしても、誰かが先に投資してしまっているでしょうから、読者のところには美味しい案件は回って来ないでしょう。なにせ世の中には、資金も知恵も時間も十分にある投資家がウヨウヨいるわけですから。

 

しかし、虎の子を得るために虎穴に入ることを、リスクを承知で「賭け」として行うのであれば、期待値は悪くないかもしれません。そこで今回は、前半で高金利通貨への投資にはリスクがあることをしっかり認識していただき、そのうえで賭けとして考えるなら高金利通貨への投資は悪くない、という話をしたいと思います。

高金利通貨のリスクは、その国の政府の立場で考えよう

昨年、個人投資家に人気が高い高金利通貨であるトルコリラの相場が暴落しました。このように高金利通貨にはリスクがあるのですが、それはどのようにすればわかるのでしょうか。

 

じつは、トルコという国やトルコの経済について調べる必要はありません。トルコ政府がなぜ、日本人の個人投資家から高い金利で金を借りるのか、トルコ政府の立場に立って考えればわかることです。

 

トルコ政府は、世界中の投資家(銀行を含む。以下同様)に「普通の金利で金を貸して下さい」と頼んだはずです。そして断られたはずです。そうでなければ、わざわざ零細個人投資家である筆者等に「高い金利を払いますから金を貸して下さい」とは言わないでしょうから。

 

筆者はトルコ経済やトルコリラについて詳しくありませんが、「世界中の投資家に断られたということは、何か大きなリスク要因があるのだろう」という点は、容易に想像がつきます。つまり、トルコリラへの投資はハイリスク・ハイリターンだというわけですね。

 

したがって、老後のための大切な資金を大量にトルコリラ投資に用いるようなことは厳に避けるべきだと考えています。競馬や競輪やカジノに老後のための大切な資金を投じる人がいないのと同じことですね。

 

しかし、小遣いを賭けて楽しむ賭け事としてとらえれば、高金利通貨への投資は悪くありません。

個人投資家全体としては、利益を得る可能性が高い理由

カジノなどは、客が賭けた金の中から「胴元」のコストや利益を差し引いたあとで、勝ち客に「配当」を支払います。したがって、客全体としては損をしているわけですが、それを知ったうえでも賭けを楽しみたいから賭けているわけです。

 

しかし、高金利通貨への投資は違います。むしろ、個人投資家全体としては利益を得る可能性の方が高いと考えてよいでしょう。そう考える理由を示しましょう。

 

プロの投資家は、リスクが嫌いです。「50儲かるか50損するか確率が半々」ならば、投資しません。そうは言っても儲けたいので、「70儲かるか50損するか確率が半々」なら、投資するかもしれません。

 

ということは、プロの投資家がトルコ政府に金を貸さなかったのは「期待値がマイナスだから」とは限らないわけです。もしかすると、トルコ政府に金を貸すことは「60儲かるか50損するか確率が半々」という賭けなのかもしれません。そうだとすると、投資家が断った投資案件でも、期待値はプラスだということになります。ならば、賭け事としてはカジノよりも割がいいのかもしれません。

 

ちなみに、こちらの連載の第1回『なぜ株式の短期投資は「カジノより儲かる」と言えるのか?』と第2回『なぜ株式の長期投資は「銀行預金より有利」と言えるのか?』(ともに有料記事)で株式投資は短期でも長期でも期待値がプラスである、と記しましたが、高金利通貨に関しても基本的な考え方は同じですから、そのメカニズムに関する詳しい説明は、第1回と第2回を参照していただければ幸いです。

リスクを十分認識せず投資している人もいて、心配

ここから少し話が難しくなります。「期待値」というのは、勝ったときの利益額に勝つ確率を乗じたものですが、わかりやすく言えば「何万回も賭けをしたら儲かるのか否か」だと考えてよいでしょう。問題は、実際には人々は何万回も賭けをするわけではない、ということです。

 

「客が1円を賭けると、100回に1回だけ100円になって戻ってくる賭け」があるとします。客にとっても胴元(主催者)にとっても期待値はゼロですから、何万回か賭ければ損得無しになるはずです。しかし、「胴元になるのは怖いので嫌だが、客になるのはワクワクするので好きだ」、という人が多いのではないでしょうか。

 

じつは、高金利通貨を持つというのは、上記の賭けの胴元になるのと似たようなものなのです。

 

高金利通貨に投資した場合、「おそらく何も起きないから、少しだけ高い金利を稼げるが、トルコリラが暴落したら投資額の多くが失われてしまうし、万が一トルコ政府が破産したら投資が全部失われるかもしれない」といった立場に立たされるからです。

 

つまり、「期待値としては得だが、大損をする可能性もある」というリスクを抱えることをどう考えるか、ということですね。

 

これをしっかり判断した上で投資を決めればよいのですが、高金利通貨に投資している個人の中には、リスクを十分認識していない人が多いようなので、心配です。

暴落&売られ過ぎのときに買えば、大儲けの可能性も

通常時の高金利通貨投資は、「高い確率で勝つけれども、利益は小さいのでワクワクしない」一方で、「負ければ大損だけれども、その確率は低いので、それほどドキドキするわけではない」といったところでしょう。

 

しかし、高金利通貨が暴落しているときは違います。株でも高金利通貨でも、暴落するときには売られすぎる場合が多いのです。「正しい値段」よりはるかに安い値段まで売られるメカニズムが働くからです。

 

たとえば多くの機関投資家では担当者に「損切り」というルールを課していますし、銀行から借金をして高金利通貨を買っている投資家は、銀行が不安になって借金の返済を迫ってくると高金利通貨を売らざるを得ないのです。株式の信用取引をしている個人投資家は、株価が暴落すると「追加証拠金」を要求されて、泣く泣く株式を売却する場合がありますが、それと似たような事が起きるわけですね。

 

そうした「売りたくないが泣く泣く売る人」が出てくることを見越して、投機家たちがあらかじめ売っておく(空売り)、というケースもあり、売られ過ぎを助長することになるかもしれません。

 

投資の初心者が暴落に狼狽して「この世の終わり」が来るような気がして持っている物をすべて投げ売りする、といったことも、売られ過ぎを助長するかもしれませんね。

 

そのようにして売られ過ぎた分は、急速に値が戻るかもしれません。投機家たちが底値だと思えば、空売りしている分を買い戻すからです。売りたい人はすべて売ってしまったので、売り注文が出てこない間に値段が急激に戻る、ということもしばしば起こります。

 

そうしたときには、底値で買うことができれば大儲けも夢ではありません。平常時に高金利通貨に投資しても、せいぜい高い金利が受け取れるだけですが、暴落して売られ過ぎたときに買えば、投資額が何割も増えることも、それなりの頻度で起きるわけです。

 

しかし一方で、暴落した通貨が経済活動に悪影響を与えるため、「正しい値段」が下がってしまい、結局暴落した分が戻るのではなく、更に暴落を続ける場合もあります。通貨の暴落によって輸入物価が上がり、インフレになり、「物価が上がるから賃金が上がり、するとさらに物価が上がり、経済が大混乱する」といった悪循環に陥る可能性があるからです。

 

これはスリリングでエキサイティングな賭けです。もっとも、何が起きるかわからないときに賭けをするわけですから、くれぐれも小遣いの範囲で楽しむ事を忘れずに。絶対に老後のための貴重な資金を投じることがないように、十分お気をつけ下さい。

 

今回は、以上です。

 

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塚崎 公義

久留米大学教授

 

久留米大学商学部 教授

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。
著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。
趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載塚崎公義教授の目からウロコの経済談義

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