老後対策の観点から考える…家は購入すべきか、借りるべきか?

退職金、公的年金が当てにならない今の時代、自身による老後資金の準備は欠かせません。しかし、いつ、何から始めればいいのでしょうか? 本連載は、青山学院大学大学院教授の榊原正幸氏の著書、『老後資金、55歳までに準備を始めれば間に合います』(PHP研究所)から一部を抜粋し、人生後半のマネー戦略の一部を紹介します。

老後対策で最初に行うべきは「自宅の購入」

私が「マイブームは老後対策」と思い始めて、最初に着手したのは自宅の購入です。いわゆる「終の棲家」を確保しておこうと考えたのです。老後に借り家住まいでは心許ないと思ったこともありますし、住宅ローンはどうしても長いローンになりますので、もし家を買うなら少しでも早めに始めたほうがいいと思ったというのもあります。

 

また、長期的に先を見越して、インフレ対策をしておこうという思いもありました。そして、自宅を購入しておくことというのは、最も安全で効率的な不動産投資にもなると考えたのです。

 

不動産投資は「せんみつ」といわれており、本当に投資する価値のあるよい物件というのは「千に三つ」しかないというほど、成功するのが難しい世界です。しかし、そんな中でも、比較的成功しやすい不動産投資として、「自宅投資」というのをオススメしたいと思います。

 

「自宅投資」というのは、不動産投資のような感覚で「自宅」を取得することを指した造語です。「自宅」を取得するというのも、広い意味での不動産投資になるという考え方です。

 

「分譲(=購入)か、賃貸か。どっちがお得!?」といったようなタイトルの特集をよく雑誌などで目にします。この議論については、「ライフスタイルや価値観によって人それぞれなので、一概にどちらが得とはいえない」というのが最も的を射た解答なのですが、「一概にどちらが得とはいえない」というのでは解答になっていないようにも思いますので、ここでは少しユニークな角度から、広い意味での不動産投資として自宅を購入することについて考えます。

 

先に結論を書きますと、ここでは「分譲(=購入)か、賃貸か」については、「分譲(=購入)」に軍配が上がるという立場で考察を展開していきます。自宅(自己居住用の不動産)は、賃貸ではなく、物件を慎重に検討したうえで購入したほうがよいというわけです。

 

本連載では、「老後対策」の一環として自宅投資を推奨します。なにしろ、老後において「食う寝るところに住むところ」がなければ話になりません。

 

また、「ずっと賃貸でいいよ」という考えの人でも、一定以上の高年齢になってしまうと、貸してもらえなくなる可能性もありますので、やはり「食う寝るところに住むところ」は自前で確保しておいたほうがいいという考えが根底にあります。本連載では、「老後対策」というところに軸足を置いて考えますので、自宅投資についても「老後対策」ということが思考の底流にあるのです。

 

そもそも、「老後に住むところがなくなる」または、「老後には、狭くて汚いところにしか住めない」というのが最も惨めなパターンなので、それを避けようというのが発想の原点です。そう考えると、賃貸ではダメで、「わりとお気に入りの自宅」を買っておくことが重要です。それを準備するというのが、老後対策として最初に行なうべきことなのです。

値崩れが少ない「都心」で「駅近」の物件を選択

ここで重要になるのは、やはり「値崩れが少ない物件を買う」ということに尽きます。なぜかというと、老後対策として買う自宅は、終の棲家である半面で、「もしかして老後に『サービス付き高齢者向け住宅』(通称『サ高住』)に移り住む場合には、売却することもありうる」と考えておかなければならないからです。また、財産形成の側面から考えても、「値崩れが少ない物件を買う」ということは重要です。

 

そう考えると、これからの不動産市場においてどうしても譲れない条件が浮き彫りになります。それは「都心の駅近(えきちか)」ということです。これが「値崩れが少ない物件」の最大の条件なのです。

 

しかも、老後には出かけるのが億劫になりますから、「都心の駅近」というのは老後対策の観点から重要な要件になるのです。「老後は働かなくなるのだから、都心に住む必要はないんじゃないか」というのは大きな間違いです。老後こそ、都心に住んでおかないと困るのです。「買い物難民」になってしまっては話になりませんし、病院も近いほうがいい。また、友人や子供や孫と会うにも、利便性が高いところに住んでいるほうがいいのは当然のことです。

 

このようなことから、高齢化が進展する日本の社会においては、長期的にみて、ますます「都心の駅近」の物件のニーズは上がっていくと思われます。ということは、資産価値の維持の観点からも「都心の駅近」というのが最重要の条件になるのです。

 

なお、「都心」というのは東京都内のことだけを意味するのではありません。東京・大阪・横浜・名古屋・京都・福岡・札幌・仙台といった、いわゆる大都市であれば「都心」です。そして、「駅近」というのは地下鉄やJRなどの駅の近くを意味しています。バス停の近くというのは利便性がイマイチなので、本連載では「駅近」には含みません。

 

ちなみに、「駅から徒歩5分」の物件と「駅から徒歩15分」の物件とでは希少価値は何倍違うのでしょうか。「(徒歩)5分と15分だから、3倍じゃないの?」と単純に考えてしまいそうですが、正解はそうではありません。正解は「9倍」です。「駅から徒歩5分」の物件の希少価値は「駅から徒歩15分」の物件の希少価値の9倍なのです。それは、正解が時間(分数(ふんすう))の比率ではなく、面積という「二乗」の比率だからです。

 

つまり、「駅から徒歩5分」の物件というのは、駅から半径400メートルの円の中にある物件です(不動産の世界では「徒歩1分」を80メートルに換算します)。半径400メートルの円の面積は16万π㎡です。それに対して、「駅から徒歩15分」の物件というのは、駅から半径1,200メートルの円の中にある物件です。半径1,200メートルの円の面積は144万π㎡です。すなわち、希少価値は、「駅から徒歩5分」の物件:「駅から徒歩15分」=16:144ですから、9倍違うのです。円の面積で考えないといけないというわけですね。

 

というわけで、駅から徒歩「5分」の物件の希少価値は、「15分」の物件の「9倍」にもなるので、ぜひとも「5分」にこだわりたいところです。

 

そして、できることならマンションではなく、一戸建てを買っておくのがいいと思います。これは第一に希少価値の面から、そして第二に資産価値の面から、戸建てに軍配が上がるからです。

 

第一に、駅近にはマンションばかりが多く、一戸建ては少ないので、希少価値の面から考えて一戸建てのほうがいいのです。売るときに高く売れます。終の棲家なので売らないとしても、リバースモーゲージ(自宅を担保にした老後資金の借り入れ)も一戸建てのほうが組みやすいと考えられます。

 

第二に資産価値についてですが、マンションは、よほどの一等地(東京の超一等地のように手の届かないような物件)でもない限り、価格における土地の部分の占める割合が低いのが一般的です。ですから、マンションは値崩れが大きくなるのです。値崩れしないのは土地部分だけで、建物部分は値崩れの対象になるのです。

 

以上のようなことから、資産価値の維持の観点から考えてマンションよりも一戸建てにしたほうがいいのです。

 

 

榊原 正幸

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

 

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青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

専攻は会計学。1961年、名古屋市に生まれる。1984年、名古屋大学経済学部卒業。1990年、名古屋大学大学院経済学研究科博士課程修了。1997年、東北大学助教授。2001年、レディング大学よりPhDを授与される。2003年、東北大学大学院教授を経て、2004年から現職。

著者紹介

連載大学教授がやさしく解説!科学的マネー戦略による「老後資金」準備術

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、PHP研究所、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

老後資金、55歳までに準備を始めれば間に合います

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榊原 正幸

株式会社PHP研究所

「安心老後」と「貧乏老後」の分かれ道は、55歳!? 「預貯金、株式投資、保険、副業、自宅購入、不動産投資、金地金・・・、結局どうすればいいの?」――還暦間近の大学教授が科学的に分析し、読者の疑問に答える画期的一冊。 …

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