不動産投資初心者必修!「不動産売買契約書」の読み方

今回は、初めて投資用不動産物件を購入する際に注意すべき「不動産売買契約書」の読み方を解説します。※本連載では、投資用不動産業界の健全化を目指す一般社団法人首都圏小規模住宅協会が、正しい知識と公平な情報を紹介します。

契約書は「売主=甲」「買主=乙」との記載が一般的

【今回の著者紹介】

竹村 鮎子 弁護士

練馬・市民と子ども法律事務所

2009年弁護士登録

 

Aさんは不動産投資1年生。まずは駅に近い単身者用のワンルームマンションを購入することにしました。検討を重ねた結果、手ごろな物件が見つかり、いよいよ契約です。しかし、不動産会社から提示された契約書には分かりにくい言葉が並んでいて、Aさんにはチンプンカンプンです。しかし、不動産会社の営業マンは、当たりまえのように専門用語を使うので、Aさんはひとつひとつ言葉の意味を聞くのもなんだか躊躇してしまいます。

 

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契約書は、当事者間の合意内容を書面にしたもので、契約の場において、もっとも重要な書面です。契約の内容についてトラブルになった場合、契約書に書いてあることを「知らなかった」「意味が分からなかった」では済まされません。不動産売買契約書は、難解な言葉が多用されていて、理解するのが難しいかもしれませんが、物件購入の際は、きちんと契約内容を理解しておく必要があります。

 

まず、契約書を読み慣れていない方は混乱されることも多いので簡単にご説明いたしますが、契約書では、売主が「甲」、買主が「乙」と記載されることが一般的です。したがって当事者のAさんは「乙」となります。

 

当事者を確認しましたら、次は売買の目的物に関する表示を確認しましょう。

 

契約書には取引される不動産が記載されています。地番(ちばん。登記所が土地につける番号のことで、一般的な住所とは異なります)や地目(ちもく。土地の用途による区分のこと。宅地、畑、山林などの種類があります)、地積(ちせき。土地の面積のことです)については不動産登記簿とつき合わせてご確認ください。土地の地目が「畑」であった場合や、土地の現況が農地であった場合には、売買に各自治体の農業委員会の許可が必要になる場合がありますので、ご注意ください。

 

また、土地の面積については、昔は測量技術が未熟だったことから、登記簿上の面積と、実際の面積とが異なる場合がよくあります。売買代金が土地の面積に応じて決められている場合には、面積の不一致は後のトラブルにつながりかねません。この場合には、瑕疵(かし)担保特約などで、実際の面積と登記簿上の土地の面積が異なっていた場合の清算方法について、きちんと確認をしておきましょう。

 

なお、アパートやマンションなど、区分所有建物の面積は、一般にパンフレットでは壁芯面積(へきしんめんせき。壁や柱の中心線で測られた面積のこと)を記載していることが多いですが、不動産登記簿は内法面積(うちのりめんせき。壁の内側部分の寸法で測られた面積のこと)で登記されています。このため、不動産登記簿の面積は、パンフレットなどの床面積より少なくなっていますが、これは面積の測り方の相違によるものなので、大きな問題はありません。

通常、売買代金は「一括」で支払われる

売買代金は一括で支払われることが通常です。また、売買代金が土地の1平方メートルあたりの価格によって計算されている場合などには、引き渡しまでに土地の測量を行い、その結果に応じて、売買代金を清算することがあります(これを実測清算といいます)。

 

手付金については、契約が成立した証である「証約手付」、契約違反があったときに没収される罰である「違約手付」、解除権の留保の対価の趣旨である「解約手付」の3つの種類があります。

 

不動産売買において一般的であるのは「解約手付」であり、これは、売主は手付金を放棄、すなわちそのまま買主に渡し、買主は手付金の倍額を売主に支払うことで、売買契約を解除できるという性質のものです(手付損手付倍返しと一般にはよく言われています)。

 

契約は一旦締結したら、合意がない限り、相手方に何か違反がなければ解除できないのが原則です。しかし、解約手付が交付されていれば、手付を放棄、または倍返しをすることで契約を解除することができることになります。

 

ただし、解除ができる期間は、民法上、相手方が契約の履行に着手するまで、と定められています。しかし、「履行の着手」とは具体的にいつのことなのかが曖昧になりやすく、トラブルのもとになります。このため、手付解除ができる期間は、契約書で具体的に決めていることが一般的です。

 

解約手付は、違反行為がなくとも契約を解除できる性質を持っていますが、だからといって安易に契約を解除されると、取引が不安定になってしまいますので、手付の金額は、簡単に放棄(または倍返し)をしづらい金額に設定されることが通常です。相場としては、売買価格の10%程度だと言われています。

ローン審査が通らなければ、契約は「解除」に

買主が住宅ローンを利用して不動産を購入する場合、ローンの審査が通らなければ、契約は解除になると定められることが一般的です。

 

しかし、この場合も、「ローンが通らなかったら契約を解除できる」期間が定められています。ローンの審査がいつまでに終わるかは、銀行の判断に大きく左右されます。したがって、解除ができる期限までにローンの審査が終わらなかった場合、万一、ローンの審査に通らなくても、契約が解除できないことになってしまいます。このようなことを避けるため、ローン審査のスケジューリングは慎重に行い、契約解除ができる日までに銀行の判断が下りなさそうな場合には、不動産会社と相談して、契約解除のデッドラインを延長するなどの対処が必要です。

隠れた瑕疵がある場合に売主が負う「瑕疵担保責任」

売買契約成立前に、通常の注意を払っても発見できないような欠陥のことを「隠れた瑕疵(かし)」といい、不動産に隠れた瑕疵がある場合に売主が負う責任のことを「瑕疵担保責任」といいます。

 

例えば、不動産を購入した後に、土地の地下に不法投棄や土壌汚染があることが判明した場合や、建物に雨漏りがあることが判明した場合、買主は売主に対して、瑕疵担保責任に基づいて、損害の賠償や修理などを求めることが可能です。

 

ただし、欠陥は、「隠れた」ものである必要がありますので、例えば、事前に雨漏りがあることを知らされていた場合には、瑕疵担保責任の適用はありません。

 

民法の規定では、買主が瑕疵を知ってから1年以内に、売主に対して瑕疵担保責任を追及することができます。

 

また、民法の規定以外にも、新築建物の場合、建物の基礎や柱など、主要な構造部分については、売主または請負業者は、10年間の瑕疵担保責任を負うものとされています。

 

ただし、中古の建物の場合には、新築からの時間の経過により、どこかに不具合があることは当然のこととして想定されます。このため、契約書中に、「売主は瑕疵担保責任を負わない」という条項が記載されていることはよくありますので、中古建物を購入する際にはご注意ください。

 

しかし、売主が宅建業者の場合には、宅建業法が適用され、売主が瑕疵担保責任を負わないとする条項は無効となります。また、宅建業者は、物件の引渡しから2年間以上、瑕疵担保責任を負うことになります。

意味の曖昧な「特約」はトラブルの原因に!

個別の不動産の状況に応じて、特約がつけられることがあります。また、当事者が自由に条項を記載した結果、「当事者しか意味が分からない」というものになってしまうことがよくあります。このような場合、仮に後で裁判になった場合、「意味が分からない」として、条項自体の解釈が争われることになってしまいます。

 

意味の曖昧な特約はトラブルの原因になりますので、特約を定める必要がある場合には、誰が読んでも意味がきちんと分かるものになるよう、一度専門家にご相談されることをお勧めいたします。

契約書の内容に納得できない場合は?

Aさんは契約書の内容は理解できましたが、納得できない条項があります。このような場合、Aさんは契約書の内容の変更をすることはできるでしょうか。

 

不動産会社を通じた売買の場合、不動産売買契約書は一般的なひな型を使っていることがよくあります。このため、契約書に修正などは入れられないのではないかと不安になる買主の方もいるかも知れません。

 

しかし、業者から提示された契約書はあくまで「案」にすぎません。契約は売主・買主の合意によって成立するものなので、業者から提示された契約書だからといって、内容に手を加えられないということはありません。一度契約書にサインをしてしまうと、これを後から覆すのは非常に困難です。したがって、内容に納得いかない点があるのに契約をしてしまうことは非常に危険です。

 

疑問点や納得いかない点については、きちんと話をして、場合によっては契約書の内容を変更するなど、契約書を実情に応じてカスタマイズすることも必要です。

 

練馬・市民と子ども法律事務所 弁護士

2009年に弁護士登録、あだん法律事務所に入所。田島・寺西法律事務所を経て,2019年1月より、練馬・市民と子ども法律事務所に合流。主に扱っている分野は不動産関係全般(不動産売買、賃貸借契約締結、土地境界確定、地代[賃料]増減額請求、不動産明渡、マンション法等)の法務が中心だが、他にも企業法務全般、労働法関連、一般民事事件、家事事件、刑事事件など、幅広い分野を取り扱っている。実地で培った法務知識を、「賃貸経営博士~専門家コラムニスト~」としてコラムを公開しており、人気コンテンツとなっている。

著者紹介

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾」を介し、公平な情報をお送りいたします。

著者紹介

連載初心者から上級者まで…知っておくべき「投資用不動産」の基礎知識

本連載は、「不動産投資塾」の記事を抜粋、一部改変したものです。

 

 

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