世界有数の成長国「フィリピン」において、日本の富裕層による不動産投資が進んでいるが、昨今、「フィリピン株式投資」への注目が高まっている。本連載では、フィリピン不動産をはじめ投資事情に詳しいハロハロアライアンス・ディレクター鈴木廣政氏と、『フィリピン株.com』の編集長 仁科剛平氏に、「フィリピン株式投資」の魅力について伺っていく。第3回目のテーマは「フィリピン株式投資でキャピタルゲインを得る方法」である。

成長性抜群のフィリピンは「長期投資」に最適

改めて説明するまでもないことですが、株式投資で収益を得る方法は、売買益=いわゆるキャピタルゲインと、配当金=いわゆるインカムゲインの2通りに大別できます。

 

今回は、フィリピン株式投資でキャピタルゲインを得る方法について考えます。キャピタルゲインを得るためには、「株価が安いときに買って、高くなったら売る」という、きわめて単純なことを実行すればいいだけです。

 

ところが、とても不思議なことに、株式投資で儲けている人は、実際は半分もいないといわれています。たとえば、JPX(日本取引所グループ)が公表しているある調査では、

 

 ・利益の方が多い 92人(46.0%)

 ・損失の方が多い 59人(29.5%)

 ・ほぼ、プラスマイナスゼロ 49人(24.5%)

 

という結果が出ています。

 

では、なぜ多くの人が、「株価が安いときに買って、高くなったら売る」という単純なことができないのか、つまり、なぜ多くの人が株で儲からないのか? どうすれば、それができるのでしょうか?

 

キャピタルゲインを得るには、簡単にいって、(1)国全体の経済成長の果実を得る方法と、(2)市場の歪みから利益を得る方法、の2通りに分けられます。

 

(1)の方法は、一国の経済全体が成長すれば、株式市場に上場している企業も全体的にその恩恵を受け、成長するという考え方です。ここでポイントとなるのは、成長する市場(国)を選ぶという点と、長期で投資することの二点だけです。

 

たとえば、前回の記事で確認したように、24年前と現在を比べて、東京証券取引所の時価総額(株価×株式数)は全体ではほぼ増えていません。ところが、フィリピン市場では2.6倍になっています。

 

これで、最初の「なぜ多くの人が株で儲からないのか」という疑問の答えの1つが出ました。要は「成長する市場に投資していないから、当然儲からない」ということです。つまり、儲けたいならこれから成長する市場を選んで投資すればいい、ということです。

 

フィリピン経済は、人口ボーナスに加え、インフラ整備、海外資本の流入などにより、大きな成長が見込まれています。株式市場の成長は、名目GDP(実質GDPではなく)の成長とおおまかに相関していると考えていいでしょう。フィリピンの名目GDPは、2008年の7.7兆ペソから、2017年の15.8兆ペソと、過去10年で約2倍に成長していますが、近年になればなるほど、成長率は上がっています。そのため、今後は5~6年程度で2倍になるのではないかと思われます。だとすれば、名目GDPの成長と軌を一にして、株価が5、6年で2倍前後になると予測するのは、自然なことです。

 

一方、今後の日本経済は、人口減少が基調になることから、今まで以上に成長が鈍化すると考えるのが自然です。日本の株式市場の時価総額が、今後何倍にも成長すると考えるのは、かなり無理があるでしょう。国全体の経済成長の果実を得るという考え方をするなら、どこに投資すべきか明白でしょう。

 

ただし、この方法は5~10年単位の長期投資になります。国の経済全体の成長は、個々の企業の成長に比べれば、きわめてゆっくりしたものだからです。また、市場全体と連動するような買い方をしなければなりません。もし、短期で結果を得たいなら、次の(2)の方法を使うしかありません。

本来の実力から株価が乖離している銘柄を探す

もうひとつ(2)の市場の歪みを利用する方法について説明します。市場の歪みとは、主に個別銘柄への投資で用いられる考え方で、ある企業の現在の株価が、その企業が持つ「本来の実力」を反映していないときのことをいいます。

 

たとえば、本来は1,000円の実力を持っているのに、株価が500円に放置されていると思える銘柄を見つけます。この株を買っておき、いつか他の投資家たちがその株の本来の価値に気づいたときに、みんながその株を買うので、理論的な妥当価格まで上がるだろうという考え方です。逆に、本来は1,000円の実力なのに、2,000円の株価がついている銘柄は、いずれ実力通りになるまで下落するでしょう。

 

ここで、「なぜ多くの人が株で儲からないのか」という疑問の2つ目の答えがあります。それは、多くの人が、その企業の「本来の実力」=理論的に妥当な株価を考えずに投資しているため、投資のタイミングを間違えてしまうからです。

 

ただしこの場合、企業の「本来の実力」は、物理法則のように客観的なものとして存在するわけではありません。あくまで理論的に想定されるものであり、過去の投資家の経験則から、さまざまな指標が考え出されています。そして、現在のプロやセミプロの株式トレードの世界では、それをコンピュータに解析させて、「買い」「売り」のシグナルを出させて、自動的に売買するというやり方が主流です。

プロが少ない=普通の人でも勝ちやすい市場

ところが、フィリピンの株式市場では、その部分が非常に遅れています。まるで日本の30年前のように、アナログ的なトレード手法がまだ主流です。こういってはなんですが、フィリピンのトレーダーは、全体的にレベルが非常に低いように思えます。これは、フィリピン市場で「空売り」をはじめとした、デリバティブ取引が導入されていないことと、関係あると思います。

 

通常、プロのトレーダーは信用取引(空売り、空買い)や、オプション取引などのデリバティブ取引を駆使してトレードをします。そのため、デリバティブが導入されていないフィリピン株式市場は、現在のところ、プロやセミプロがあまりいない市場なのです。

 

逆にいえば、プロやセミプロのようにはトレードできない資産家、投資家が参入しても、十分に勝算のある、「普通の人でも勝ちやすい市場」がフィリピン市場の特性だともいえます。

 

実際、私(鈴木廣政)も株式投資については素人ですが、2年弱の間に、フィリピン株式投資でかなりのキャピタルゲイン(含み益)を得ることができました。多くのプロやセミプロがうごめく日本の株式市場では、こうはいかなかっただろうと思います。