本記事では、医療費削減が病院崩壊を招く理由を見ていきます。

繰入金を早急に「診療報酬」に置き換えることが重要

中でも大きな問題の一つは、国公立病院につぎ込まれている多額の「繰入金」を早急に、また段階的に診療報酬に置き換えていくことです。

 

科学、医学の進歩は目覚ましく、1〜2年で先進医療でなくなるものは多くあります。「先進医療とは何か」「不採算医療とは何か」ということを診療報酬でももっとはっきりさせ、定期的(2年毎など)な見直しが必要でしょう。

 

不採算と思われているものでも少し点数表を変えるだけで、すぐに採算医療になり得るのです。たとえば、一般救急、小児救急医療、周産期医療等もその中に入ります。

国立・民間の区別なく、同等に評価する制度が必要

誤解してほしくないのは、わたしは決して従来の国立病院や自治体病院の役割を否定しているわけではないということです。わが国の医療を一定レベルに保つために、これらの病院は立派にその役目を果たしてきました。そのためにある程度の「繰入金」は必要とされ、認められてきたと思います。

 

しかし、限られた国家予算と医療資金源の中では、無制限の繰入金は許されません。これからは国立・自治体病院であれ、民間病院であれ、一定レベル以上の質を持つ病院(病床の大きさは関係ない)は同じように評価されるべきです。それも補助金ではなく診療報酬で、です。これを達成するには第三者による病院機能評価で一定の基準以上を保っていることが不可欠です。

 

現在は民間病院も立派に公的役割を果たしています。税金を支払い、なおかつ国立・自治体病院等と同じ診療報酬点数表に従って診療を行っています。一方、自由診療や株式会社のような利益配分は許されていません。見方によっては民間病院のほうが公的病院より多く公的役割を担っていると言えるのです。

 

 

吉田 静雄

医療法人中央会尼崎中央病院 理事長・院長

 

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    本記事は、2017年5月30日刊行の書籍『病院崩壊』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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