本記事では、安定した資産防衛に成功している資産家の事例を4つ紹介します。

代々の地主で、不動産を法人で経営

〈ケース2〉所有と経営の分離による自社株の生前贈与

 

同族経営をしている不動産管理会社のオーナー、Eさんのケースです。

 

Eさんは代々の地主であり、法人が保有する土地に賃貸マンションやオフィスビル、アパートなどを建て、賃貸収入を得ています。ご本人は40代前半、奥様が30代、小学生になる女のお子さんが2人います。

 

問題は、資産規模が時価で数十億円にもなるという点でした。非上場である不動産管理会社(同族企業)の株式は、基本的に純資産価額で評価されるため、相続時には高額の相続税がかかります。

 

地主の方の場合、まだ若いからといって、対策をとらずそのままほったらかしにするケースが多々あるのですが、いざ本人に万が一のことがあると、莫大な相続税がかかってしまうのです。

 

Eさんの場合、よくよく調べてみると、不動産管理会社の年間キャッシュフローは約1億円ありますが、以前行った不動産投資の失敗などによる繰り越し欠損がありました。そのため、計算してみると株価が0円であることが分かったのです。

 

こうした場合、お子さんに同族会社の株式を生前贈与しても贈与税はかかりません。簡単に相続税対策ができてしまいます。

種類株式を活用して会社の議決権は保持

しかし、もうひとつ問題がありました。それはお子さんが2人とも女の子であるということです。

 

地主でお子さんに男の子がいないということはよくありますが、将来、女の子が結婚したときに、結婚相手によって財産が奪われてしまうことを心配する方は多く、実際にのっとられてしまうというのも少なからず起こるトラブルです。

 

そこで我々は、種類株式を利用して、株式の財産権だけをお子さんに生前贈与し、議決権はEさんに残したままにするという方法を提案しました。

 

こうすれば、会社を運営する権利はEさんに残ったままですので、どんな相手と結婚しても問題はありません。そして将来、Eさんが亡くなった後で、議決権の相続を決めればよいのです。Eさんの寿命があと40年だとしたら、これによって40年間放っておける相続税対策が完了しました。

 

地主のみなさんは、「いずれ相続税は払わなければいけないもの」と認識されていることが多いでしょう。しかし、払わなければいけないにしても、土地を切り売りしなくて済むやり方があることはぜひ、ご認識いただきたいところです。

本連載は、2016年5月25日刊行の書籍『資産防衛の新常識』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産防衛の新常識

資産防衛の新常識

江幡 吉昭

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税の増税、マイナンバー制度や出国税の導入など、資産家を取り巻く状況が年々厳しさを増していくなか、銀行や証券会社が販売手数料を目当てに、「資産防衛のサポート」と称して富裕層に群がっている現状…。資産家が金融営…

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