介護が原因となって、親のみならず子の世帯までが貧困化し、やがて破産に――いわゆる「介護破産」は、もはや社会問題の一つになっています。しかし、利用する側が積極的に動いて情報を集め、最適なサービスや施設を正しく見極めれば、介護破産に陥るリスクは大きく軽減できます。そこで本記事では、介護破産を回避する「補助金」「減税制度」を紹介します。

上限を超えた介護費を払い戻す高額介護サービス費制度

③ 高額介護サービス費制度

 

介護保険は、所得に応じて1~2割の利用者負担になります。しかし、介護保険を利用して支払った自己負担額が一定の金額を超えた時に、申請すればその分の金額が後日自治体から払い戻されます。この仕組みを「高額介護サービス費制度」といいます。

 

「一定の金額」は、介護保険負担限度額認定の段階によって異なります。

 

高額療養費と同じ負担軽減の制度ですが、こちらのほうはあまり知られていません。申請しなければすべての利用者が「現役並み所得者」の上限に設定されてしまいますので、対象になる場合は必ず申請しておきましょう。

 

手続きは自治体の窓口で行います。介護サービス利用時の領収書が必要になるので、捨てずに保管しておきましょう。払い戻しは手続きの約3カ月後に行われます。

 

あくまで「介護保険の対象費用の利用者負担額」が対象になるので、食事代・居住費・施設サービスにおける日常生活に要する費用(教養娯楽費など)は対象になりません。

 

[図表]高額介護サービス費の自己負担上限額

注1世帯内の65歳以上の被保険者の収入およびその他の合計所得金額の合計額が346万円未満(世帯内の65歳以上
の被保険者が1人の場合は280万円未満)の場合も含む
注2世帯内の65歳以上の被保険者の収入の合計額が520万円未満(世帯内の65歳以上の被保険者が1人の場合は
383万円未満)の場合も含む
介護保険の現役並み所得は、世帯に課税所得145万円以上の第1号被保険者がいる場合であって、世帯内の第1
号被保険者の収入の合計が520万円(世帯内の第1号被保険者が1人のみの場合は383万円)以上である場合
厚生労働省「高額介護合算療養費制度について」より作表
(2017年6月時点)
注1世帯内の65歳以上の被保険者の収入およびその他の合計所得金額の合計額が346万円未満(世帯内の65歳以上 の被保険者が1人の場合は280万円未満)の場合も含む 注2世帯内の65歳以上の被保険者の収入の合計額が520万円未満(世帯内の65歳以上の被保険者が1人の場合は 383万円未満)の場合も含む 介護保険の現役並み所得は、世帯に課税所得145万円以上の第1号被保険者がいる場合であって、世帯内の第1 号被保険者の収入の合計が520万円(世帯内の第1号被保険者が1人のみの場合は383万円)以上である場合 厚生労働省「高額介護合算療養費制度について」より作表 (2017年6月時点)

 

長引く療養等に役立つ…合算高額介護合算療養費制度

④ 高額介護合算療養費制度

 

世帯内の同一の医療保険(国民健康保険、後期高齢者医療制度など)加入者について、1年間(8月1日から翌年7月31日まで)にかかった医療保険と介護保険の自己負担額の合計金額が一定の基準を超えた場合に、超えた分の金額が支給されます。

 

ただし、高額療養費、および高額介護サービス費の支給を受けることができた場合には、その額は合計金額から除きます。高額療養費や高額介護サービス費の支給を受けてもなお支払いがかさむケースに適用されますが、そういったケースはそれほど多くはありません。それでも父親の要介護度がさらに重くなり、母親のがんが発覚して長期間にわたり多額の治療費がかかった場合など、いざという時のためにぜひ覚えておきたい制度です。

 

[図表]高額介護合算療養費制度のイメージ

注1 対象世帯に70〜74歳と70歳未満が混在する場合、まず70〜74歳の自己負担合算額に限度額を適用した後、残
る負担額と70歳未満の自己負担合算額を合わせた額に限度額を適用する
注2 介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円
厚生労働省「高額介護合算療養費制度について」より作表
注1 対象世帯に70〜74歳と70歳未満が混在する場合、まず70〜74歳の自己負担合算額に限度額を適用した後、残 る負担額と70歳未満の自己負担合算額を合わせた額に限度額を適用する 注2 介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円 厚生労働省「高額介護合算療養費制度について」より作表

 

なお、70歳未満の医療保険の自己負担額は、医療機関別、医科・歯科別、入院・通院別に2万1000円以上ある場合に合算の対象となり、入院時の食費負担や差額ベッド代は含みません。また、医療保険・介護保険のどちらかの自己負担額が0円の場合は支給されません。

 

まずは該当するかどうか、自治体の窓口に相談してみましょう。該当すれば介護保険の「自己負担額証明書」が発行され、この証明書を健康保険の窓口に提出することで、それぞれの保険から払い戻しを受けることができます。また2年以内ならば過去にさかのぼって支給の申請ができます。

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