
今回も引き続き、保険の販売代理店・担当者選びの重要ポイントを見ていきます。※法人保険で税金対策を行うには「全社・全商品比較」と「出口戦略」が不可欠です。本連載では、入り口となる「全社・全商品比較」をしっかり行ってくれる保険営業担当者、豊富な戦略をもとに一緒に「出口」を考えてくれる営業担当者の見極め方を紹介します。
「新規契約」の獲得こそ、営業マンの最大ミッション
前回の続きです。
⑨給料体系が歩合制に偏っていないか
歩合のウエートが大きい営業担当者の場合、手数料率の高い特定の商品だけを提案してくる可能性が高く、的確な保険設計ができるかどうか不安が残ります。また、歩合のウエートが大きい場合は退職率が高くなる傾向があり、出口戦略に支障をきたす恐れもあります。求人サイトを見ると、保険代理店の営業職は、「月給15万円プラス歩合」などといった広告が目立ちます。また、1社専属の直販などは、ほとんどが100%歩合制となっており、日々契約を取っていかないと食べていけなくなります。
見た目はビシッとスーツを着て、ベンツで迎えに来る営業担当者でも、月収は10万円台なんていうことは普通にあります。保険会社のディスクロージャーを見ると、1社専属の営業職員の平均給与は、月20万円台というところもあり、一見、儲かっているように見える営業担当者でも、実は見た目だけだったということは珍しくありません。
保険販売ビジネスは「新規契約」を取ってナンボの世界です。どんなに顧客と仲良くなろうとも、目先の顧客から「新規契約」をもらうことが最大のミッションで、それがそのまま給与に直結する商売です。そのため、なんとかして売ろうとします。なんとかしてセールストークをつくって目の前の見込み客を説得・納得させようとします。そういった営業担当者のカモにならないことが重要です。
⑩経営基盤が安定している代理店か
昨今の報道でもあったとおり、某駅前の有名な代理店が某国内生保に買われてしまうなど、保険代理店業界は激変の様相を呈しています。一部代理店では、大型なリストラをしたことによって労働訴訟が起きているケースもあります。経営基盤が安定し、長期的に代理店が存在しないと、出口難民、解約難民が増えてしまいます。
保険会社の代理店サポート職などに、あの代理店ははたして大丈夫なのか、何か悪さをしてないか、あの税理士は問題を抱えていないかなど、ヒアリングをしっかりして、出口で放置されないようにすることが重要です。
また、昨年の保険業法の改正によって、代理店は100%歩合の営業マンを雇用することは原則できなくなりました。外注や委託でなく、必ず固定給を出して社員として雇用しなければなりません。それまでは、社会保険に加入していない保険代理店が当たり前で、雇用環境がブラックな代理店が大半だったためです。
しかし、ルールが変わったとはいえ、会社のカルチャーはそう簡単には変わりません。いまだにルール違反すれすれでやっている保険代理店もあります。監督官庁の目の行き届かない部分もあり、営業担当者の疲弊感が非常に大きい保険代理店もあります。そういった部分もしっかり確認することが重要です。こういった流れは、今後、税理士等の士業系の保険代理店にも飛び火していくと予想されます。
「保険商品はどこから入っても同じ」というのはウソ
⑪経由する代理店や営業担当者によって契約条件やスペックが違う
実は、同じパンフレット、同じ商品名でも、経由する代理店によって、契約条件やスペックが違うことがあります。ブログなどでは「保険商品はどこで入っても同じなため、人を選ぶことが大事」とアピールされている記事をよく見かけますが、それは100%噓です。そういうブログを書いている人たちのレベルでは、いわゆる「パッケージ商品」で同じものを販売しているでしょうが、実際は違います。代理店や営業担当者によって、次のような違いがあります。特に金融機関同士、金融機関と一般代理店間では露骨な違いがあります。
●解約返戻率の違い
A代理店・・・10年で102% B代理店・・・10年で107%
●保険料の違い
A代理店・・・毎月5000円 B代理店・・・毎月6200円
●配当率の違い
A代理店・・・年2.5% B代理店・・・年1.0%
●引き受け限度額の違い
A代理店・・・死亡保険金額30億円まで設定可能
B代理店・・・死亡保険金5億円まで設定可能
●告知条件の違い
A代理店・・・死亡保険金3億円までは診査(健康診断)なし
B代理店・・・死亡保険金3000万円までは診査(健康診断)なし
●入金の際の使用可能通貨の違い
A代理店・・・円、米ドル、豪ドル、カナダドル、ニュージーランドドル
B代理店・・・円は不可、米ドル、豪ドルのみ
●保険関係費の違い
A代理店・・・年3.80% B代理店・・・年3.98%
●契約時に追加で必要な書類
A代理店・・・決算書3期分、資産証明書類 B代理店・・・一切なし
●出口戦略の違い
A代理店・・・一部商品の受取人変更は受付不可
B代理店・・・すべての商品において受取人変更は受付OK
●契約査定の違い
A代理店・・・かなりゆるめ
B代理店・・・かなり厳しめ(契約が引き受けられないリスクが高い)
●委託する運用会社の違い
A代理店・・・S銀行系列の運用会社
B代理店・・・M銀行系列の運用会社 C代理店・・・独立系運用会社
●約款を超えた特別な取り扱いの違い
A代理店・・・一切不可(どんなに迫っても平謝りされる)
B代理店・・・保険会社と交渉できる
●ペットネームの違い
A代理店・・・夢の定期便 B代理店・・・みらい記念日
●販売期間
A代理店・・・1年6ヵ月 B代理店・・・1年
あくまでほんの一例ですが、「保険商品はどこから入っても同じ」と言っている営業担
当者は、その時点で付き合いゼロとすべきでしょう。しかしこういった事実は、多くの営
業担当者自身が実は知りません。大半の営業担当者は、自分が販売しているものが一番ス
ペックが高いと「悪気なく」勘違いしています。大半の営業担当者は、所属している保険
会社や代理店から受けている研修内容や聞かされている条件がすべてと思って活動してい
るため、このような事実があることすら想像できないのです。
これだけスペックや取扱条件が違うと、保険の単純な効果だけでなく、税効果までも大
きく違ってきます。
以上、連載の第2回、第3回、第4回を通して11のチェックポイントを見てきましたが、まずは、本書で取り上げたような内容をすらすら話せる営業担当者を探すのがよいでしょう。本書をお読みいただいた皆さんには、これらを理解したうえで、法人保険の力を100%引き出してくれるような保険代理店、営業担当者を見つけていただきたいと思います。