
法人保険で税金対策を行うには「全社・全商品比較」と「出口戦略」が不可欠です。本連載では、入り口となる「全社・全商品比較」をしっかり行ってくれる保険営業担当者、豊富な戦略をもとに一緒に「出口」を考えてくれる営業担当者の見極め方を紹介します。
保険営業担当者や税理士にも「保険知識格差」が…
法人保険で税金対策を行い、会社と経営者の自由資金を最大化するためには、まず、「全社・全商品比較」と「出口戦略」が重要です。入口で「全社・全商品比較」をしっかりしてくれる保険営業担当者と出会い、「出口戦略」において豊富な戦略をもとに一緒に対策を考えてくれる営業担当者も必要です。
しかし、昨今、100%損金商品をはじめ、商品が増えてきたこともあり、
●全商品をまんべんなく理解している営業担当者が激減
●限られた出口戦略しか提案できない営業担当者が激増
しています。
保険営業担当者、税理士ごとの保険知識の格差も非常に大きくなっています。また、金融機関でも販売代理店でも、退職、異動、転勤、出向、リストラ、転職などで、担当者が途中で代わるリスクは日常化し、入口から出口まできちんとしたフォローがなされないケースがふえてきました。特に金融機関は、昨今リストラや再編問題で話題になっていますが、銀行員としての生き残りに保険販売は必須です。今後、より競争が厳しくなり、入口から出口までのフォローのない無理な営業、時代に逆行する押し売りセールスがふえていくものと思われます。
そもそも保険会社や販売代理店の場合、離職率が非常に高いという事実があります。現在、生命保険の営業担当者は日本中に20万人以上いるといわれており、実際、その顔ぶれは目まぐるしく入れ替わっています。「最初の担当者がいなくなっても、別の担当者にきちんと引き継ぎされるだろう」と思われるかもしれません。しかし残念ながら、保険販売の世界では、常に新規の顧客を追い続けなければならないという傾向もあり、契約者一人ひとりを丁寧にカバーするのは難しいという実情があります。
本来、税の専門家である税理士においても、保険の提案スキルには非常に格差があるのが現状です。中には、税理士業界団体の鎖国的しがらみでD生命の商品しか売ることができず、保険の知識は薄いままで、提案の幅も狭くならざるを得ない税理士もいます。税理士も競争が激しくなり、差別化が重要な昨今であるにも関わらず、提案スキルが高まらない税理士はたくさんいます。そんなことを顧問先はつゆ知らず、知らず知らずのうちに税の垂れ流し状態になっているケースが多く、税理士だからといって何でもかんでも相談してはいけない、人任せにしてはいけない時代にもなっています。
できる販売代理店、営業担当者の見分け方
法人保険という税務・財務対策に非常に有効なツールを手にしていながら、むしろ損をしてしまう――これほど残念なことはありません。
毎日忙しい経営者が、保険や税務の知識を幅広く身につけるのは、実際には難しいところですが、専門家に一から十までお任せにするのではなく、経営者の皆さん自身が、法人保険に対する正しい知識をある程度持たなければいけません。なぜなら、専門家の中には、法人保険を使ったスキームに詳しくない人もいるからです。また、知識がないことを見透かされて、「こいつはこのくらいで落ちるぞ」と、営業担当者にいいようにされてしまうことも多々あるからです。
では、「できる」専門家・パートナーは、どのように見つければよいのでしょうか。前述のとおり、まず、担当者が頻繁に代わる可能性に留意しなければなりません。保険の販売代理店やコンサルティング会社などの中には、社員が顧客を個人個人で管理するのではなく、組織的に管理して出口戦略でのフォローに注力しているところもあります。
もう一つ押さえておきたいのが、幅広い保険会社の商品を取り扱っているかどうか、ということです。
保険の販売代理店には、一社専属と、複数社の乗合代理店という2パターンがありますが、後者のほうが商品やスキームの選択に幅が出ることはいうまでもありません。ただし、「30社扱っています」とはいっても、現実にきっちり商品内容や事務的な扱いをえられるのは3〜4社になるため、本当に30社分しっかり提案できることはほとんどありません。
そういったところは、今月は「A商品を売ろう」とか「B商品を売ろう」とか社内で独自にキャンペーンを組むことが多いため、顧客には視野の狭い提案になってしまうことがあります。また、特定の保険会社だけから販売手数料の面で大きな優遇を受けている代理店があり、実質的に一社専属のようなケースもあります。金融庁が昨今かなり問題視している手数料の高額化問題ですが、販売手数料の優遇は、大手代理店や金融機関等が対象になりやすいので、こうした実態も頭に入れておくとよいでしょう。
次に、担当者個人についてです。親戚や知り合いが保険代理店を営んでおり、付き合いが10年、20年と長い場合であっても、法人保険の提案スキルに深刻な問題を抱えているケースは少なくありません。ある保険会社では、加入経緯が親戚や知り合いの場合、クレームの数が圧倒的に多くなっているというデータもあります。
親戚や知り合いだからこそだませるという理由で、説明をいい加減に行ったり、デメリットをきちんと説明しなかったりで、問題が生じているケースは後を絶ちません。法人保険は大きなお金を動かすうえに、会社の経営を大きく左右する大切な問題です。相談相手はくれぐれも慎重に選びたいものです。