安定高配当が望める個別銘柄…「キヤノン」の分析

今回は、安定高配当が望める銘柄の一例として、キヤノンを分析します。※本連載は、青山学院大学大学院教授の榊原正幸氏の著書、『現役大学教授が実践している堅実で科学的な株式投資法』(PHP研究所)から一部を抜粋し、人生100年時代の資産形成に役立つ、堅実で科学的な株式投資術を紹介します。

過去20年間減配なしの、理想的な安定配当企業

今回は個別銘柄としてキヤノンを取り扱います。安定高配当銘柄という視点から分析し、将来の投資戦略を立案します。

 

キヤノン(7751

 

まず、キヤノンに関する過去20年間分の配当関連データを図表1にまとめました。

 

図表1をざっと一覧していただくとおわかりのように、この企業は過去20年間において、リーマンショックの時期も含めて一度も減配をしていません。ですから、理想的な安定配当企業であると考えられます。

 

[図表1]キヤノン(7751)の配当関連データ

 

 

そして、年度中の最安値で計算した配当利回りを見てみると、2007年12月期まではずっと3%未満でしたが、2008年12月期以降の10年間は、ずっと3.7%以上の良好な配当利回りを計上しています。5.0%以上に達する年も何度かありました。

 

アベノミクス以降(2013年12月期以降)の目標配当利回りは「4.4%」であることが見てとれます。ですから、まずは配当利回りが「4.4%」になる水準が最初の買いの目標株価の水準であると考えます。そして、5.0%以上の配当利回りも示現していることから、「5.0%」でナンピン買いをすることとします。

過去5年間のチャートによるシュミレーション

まず、キヤノンの週足チャート(下記の図表2)をご覧ください。

 

[図表2] キヤノン(7751)の週足チャートと4.4%の配当利回りの線

(2012年6月11日~2017年10月27日)

※4.4%の配当利回りの線が赤色、5.0%の配当利回りの線が灰色。
2012年と2016年においては、5.0%の配当利回りの線も引いてあります。
※4.4%の配当利回りの線が赤色、5.0%の配当利回りの線が灰色。

 

ここでは2012年8月から始めて、時系列順に説明していきます。この企業は12月決算です。また、この企業は配当の予想額が公表されないことが多いので、そういった場合には次善の策として、直近の本決算における確定値ベースの配当額を基にして意思決定をしていくことになります。配当の確定値に基づく意思決定には若干の違和感もありますが、この企業の場合、過去20年以上にわたって減配していないという実績がありますので、減配の不安は非常に少ないです。

 

(1)2012

 

2012年7月下旬に公表された第2四半期決算で、上半期の配当額が60円と発表されました。期末配当額は未定ですが、直近の本決算における確定値ベースの配当額が年額で120円なので、これを基準にします。120円を4.4%で割り返すと2,727円となります。

 

2012年7月最終週に2,727円が付きますので、ここで買います。

 

また、同じ週に2,308円まで下がって底を打ちます。120円を5.0%で割り返すと2,400円となります。この株価で、最初に買った株数と同じ株数でナンピン買いをします。買いの平均単価は2,563円です。

 

その後、同年の10月中旬に二番底(2,328円)を付けていますので、いくらでも買いのチャンスはありました。同年の11月下旬に大きく上昇に転じるまでの最安値は2,308円(同年の7月下旬)でした。ですから売りの目標株価は、(2,308円×1.44=)3,323円となります。売りの目標株価を算出する場合の倍率は、最初の目標配当利回り(4.4%)の10倍の44%、すなわち1.44倍で計算します。売りの目標株価を算出する時には、ナンピンの配当利回り(5.0%)は用いませんので注意が必要です。

 

2012年の12月下旬に3,323円を超えますので、ここで売却します。結果としては、5ヶ月間の保有でしたのでインカムゲインは得られませんでしたが、29.6%のキャピタルゲインを得られます。

 

(2)2013

 

2013年1月30日に本決算が公表されました。そこで、2012年12月期の配当が年額で130円と発表されました。10円の増配は創立75周年記念配当ですし、2013年12月期の配当額は未定です。しかしながら、図表1にあるように、この企業の場合、2000年12月期以降、増配基調が鮮明ですので、配当の期待値を年額で130円と考え、これを基準にします。130円を4.4%で割り返すと2,954円となります。

 

2013年8月最終週に2,954円が付きますので、ここで買います。そしてその後、同年の11月最終週と12月第1週に3,410円まで上がりますが、同年9月に付けた最安値(2,913円)から17%しか上昇していないので売りは見送ります。

 

その後は、2014年2月第1週に2,889円まで下がって底を打ちます。

 

(3)2014

 

2月第1週に付けた2,889円を底値として、株価は上昇基調に入ります。最安値が2,889円ですから、売りの目標株価は、(2,889円×1.44=)4,160円となります。

 

(4)2015

 

3月第3週に売りの目標株価である4,160円を付けますので、ここで売ります。2013年8月から2015年3月まで1年7ヶ月間保有し、4.4%のインカムゲインを1年半分と40.8%のキャピタルゲインを得られます。

 

時系列の順番は前後しますが、2015年1月28日に公表された本決算で、2014年12月期の配当が年額150円と発表されています。150円を4.4%で割り返すと3,409円となりますので、2015年の3月に売却した後、次回の買いの目標株価は3,409円となります。

 

その後、2015年の9月最終週に3,409円が付きますので、ここで買います。

 

同年の10月に3,862円まで上がりますが、同年9月に付けた最安値(3,402円)から13.5%しか上昇していないので売りは見送ります。

 

(5)2016

 

2月に株価が3,000円を割り込みます。150円を5.0%で割り返すと3,000円となります。この株価でナンピン買いをします。買いの平均単価は3,205円です。この後2016年中は、株価は低迷が続きますので、2016年は保有し続けます。

 

2016年中に2,780円の底値を付けました。この2,780円の底値を基準にして売り値の目標株価を算出すると、(2,780円×1.44=)4,003円となります。

 

(6)2017

 

10月第3週に4,003円を超えますので、4,003円で売ります。保有期間が2年強にわたるので、2年分のインカムゲイン(配当)を得ながら、2年間で24.9%のキャピタルゲインが得られます。

キヤノン株の今後の投資戦略は?

2017年10月24日に公表された第3四半期決算で、下半期の配当額が10円増配になり、年額で160円と発表されています。この10円の増配は創立80周年記念配当ですが、先の[1]の(2)にも書いたように、この企業の場合2000年12月期以降、増配基調が鮮明ですので、配当の期待値を年額で160円と考え、これを基準にして次の買い値の目標株価を算出します。160円を4.4%で割り返すと3,636円となります。

 

そこで買い値の目標株価を3,636円としますが、この企業の場合、2012年と2016年に配当利回りが5.0%を超える水準まで株価が下がった実績もありますので、配当利回りが5.0%になる3,200円でもナンピン買いをすることを想定しておきます(なお、2014年にも配当利回りが5.0%をこえていますが〈5.2%〉、これは事後的な計算で5.2%となったものなので、ここでは度外視しています)。

 

またもちろん、今後の配当額の推移にも注意を払い続ける必要があります。

 

そして、この企業は2018年1月30日に2017年12月期の本決算を発表しています。予想配当額は「未定」と発表されましたが、配当の期待値を年額で160円と考えます。また、この本決算で2018年12月期のEPS予想値を259.32円と公表しました。前回の四半期決算(第3四半期決算)のEPS予想値と比較すると15%の増益になっていますので、本書の第2章の手法で評価点を算出しましたが、「-1点」となったので、アクティブ投資としては、2018年1-3月期は投資対象にはなりません。

 

すでに株価はかなり高くなっており、決算発表の翌日の2018年1月31日の株価は4,300円台ですので、もっと大きく下がってくるのを気長に待ちます。パッシブ投資としての買いの目標株価はあくまでも3,636円と3,200円です。

 

では最後に、3,636円と3,200円という買いの目標株価まで下がってくるのがいつ頃になりそうかを、大ざっぱに予想してみましょう。

 

2015年~2016年の株価推移の実績を見ると、次のようになっています。

 

最高値(4,539円)が付いた日:2015年4月13日

買い値(3,409円)が付いた日:2015年9月29日

最安値(2,780円)が付いた日:2016年6月28日

 

このように、次の買い値(3,409円)まで下がったのは最高値(4,539円)が付いた日から5ヶ月と16日を要していますし、最安値(2,780円)が付いたのは2016年6月28日で、最高値(4,539円)が付いた日から1年2ヶ月と15日を要しています。そして、今回の高値を2017年11月9日に付いた4,472円と仮定します。

 

これを基にして予測すると、キヤノンが次に買い値になるのは、2017年11月9日から5ヶ月と16日後として、2018年4月25日となります。ちょうどこの本が書店に並んだ1ヶ月後くらいですね。もちろん、次に買い値になるのはそれよりも先になる可能性もありますが、2018年4月以降、次の買いの目標株価である3,636円を待つことになります。

 

また、この予測の通りになるとすれば、次に最安値が付くのは2017年11月9日(最高値の4,472円が付いた日)から1年2ヶ月と15日後として、2019年1月24日と予想されます。それまでは下値模索を続けるという展開が予想されます。3,636円と3,200円を目標の買い値として、じっくりと待って、株価が買い値になったらその時点における業績と配当の様子を再確認して、大きな下方修正になっていなければ、淡々と買い進んでいけばいいのではないかと思います。

 

 

榊原 正幸

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

 

 

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青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

専攻は会計学。1961年、名古屋市に生まれる。1984年、名古屋大学経済学部卒業。1990年、名古屋大学大学院経済学研究科博士課程修了。1997年、東北大学助教授。2001年、レディング大学よりPhDを授与される。2003年、東北大学大学院教授を経て、2004年から現職。

著者紹介

連載人生100年時代の必修科目…堅実で科学的な株式投資の教室

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、PHP研究所、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

現役大学教授が実践している 堅実で科学的な株式投資法

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榊原 正幸

PHP研究所

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