安定高配当が望める個別銘柄…「本田技研工業」の分析

今回は、安定高配当が望める銘柄の一例として、本田技研工業を分析します。※本連載は、青山学院大学大学院教授の榊原正幸氏の著書、『現役大学教授が実践している堅実で科学的な株式投資法』(PHP研究所)から一部を抜粋し、人生100年時代の資産形成に役立つ、堅実で科学的な株式投資術を紹介します。

リーマンショック期の2年間以外、過去20年で減配なし

今回は個別銘柄として本田技研工業を取り扱います。安定高配当銘柄という視点から分析し、将来の投資戦略を立案します。

 

本田技研工業(7267

 

まず、本田技研工業に関する過去20年間分の配当関連データを図表1にまとめました。

 

[図表1]本田技研工業(7267)の配当関連データ

 

ざっと一覧していただくとおわかりのように、この企業は過去20年間において、リーマンショック期(2009年3月期と2010年3月期)の2年間以外は減配をしていません。ですから、安定配当企業であると考えていいでしょう。

 

このように、パッシブ投資の対象となる企業の原則的な条件は、「過去20年間において、リーマンショック期(2009年3月期と2010年3月期)の2年間以外は減配をしていない」

 

というものです。

 

そして、年度中の最安値で計算した配当利回りを見てみると、2007年3月期まではずっと2%以下でしたが、2008年3月期以降の10年間は、やはりリーマンショック期の2010年3月期を除けば、概ね良好な配当利回りを計上しています。

 

アベノミクス以降(2013年3月期以降)の目標配当利回りは「3.2%」であることが見てとれます。

 

このようにして、図表1のような配当関連データの一覧表を作成し、それを概観することによって、「買い値を決定するための配当利回り」と買い値の目標株価を見つけることができるのです。このような配当関連データを揃えるのはけっこう手間がかかりますが、一度やってしまえばずっと使えるので、手間を惜しまずにきちんと調べましょう。

 

すべての企業とはいきませんが、多くの企業が各企業のHPで過去10年分は決算短信を公表していますので、それを見て、配当関連の財務データを収集すればいいのです。そもそも過去10年分くらいの決算短信や財務データを公表していないような企業は、投資対象としては不適格ではないかともいえます。といいつつ、この本田技研工業はHPでは過去5年度分しか財務データを公表していないので、改善されるべきです。

過去5年間のチャートによるシミュレーション

まず、本田技研工業の週足チャート(図表2)をご覧ください。

 

[図表2]本田技研工業(7267)の週足チャートと3.2%の配当利回りの線

(2012年3月5日~2017年10月27日)

 

 

ここでは2012年6月から始めて、時系列順に説明していきます。

 

(1)2012

 

2012年4月下旬に公表された決算で、配当が年額76円と発表されました。76円を3.2%で割り返すと2,375円となります。2012年6月上旬に2,375円が付きますので、ここで買います。

 

その後、同年の11月中旬までは何度か2,375円かそれ以下になっていますので、いくらでも買いのチャンスはありました。同年の11月下旬に大きく上昇に転じるまでの間の最安値は2,294円(同年の10月中旬)でした。ですから売りの目標株価は、(2,294円×1.32=)3,028円となります。2012年の3月にも3,300円という高値が付いていますので、この3,028円という目標株価は非常に現実的なものです。

 

そして、2012年の12月中旬に3,028円まで上がりますので、ここで売却します。結果としては、半年間の保有で3.2%のインカムゲインを半年分と27.5%のキャピタルゲイン(=3.2%のインカムゲインのおよそ8年半相当分)を得られます。

 

その後は、アベノミクスが始まったこともあり、この企業の株価は2016年の2月まで高値圏で推移します。2016年2月に株価が下がってくるまではパッシブ投資としては買うことができない銘柄となるわけですが(=3年2ヶ月もの長い間待つことになるわけですが)、2012年の12月中旬に「27.5%のキャピタルゲイン」、つまり当初期待したインカムゲイン(3.2%)のおよそ8年半に相当するキャピタルゲインを得ています。ですので、再びパッシブ投資の買い値圏まで株価が下がってくるのを、余裕を持って(「8年くらい待ってもいいぞ!」くらいの気持ちで)じっくりと待てるのです。

 

また、その間に別の銘柄でパッシブ投資の対象を探すこともできますし、資金をもて余しておくのがもったいないという場合には、アクティブ投資や低PBR投資に資金をシフトしてもいいでしょう。

 

(2)2016

 

2015年11月上旬に公表された第2四半期決算で、配当が年額88円と発表されています。88円を3.2%で割り返すと2,750円となり、これが買いの目標株価になります。2016年2月12日に2,750円が付きますので、ここで買います。

 

その後、2016年3月に3,209円までは上がるのですが、再び下がってきて2016年7月6日に2,417円まで下がって底を打ちます。このパッシブ投資に関しても、アクティブ投資と同様に「最初の買い値から10%下がったところで買い増し(ナンピン買い)をする」ということを原則とします。

 

ただし、パッシブ投資の場合は、投資対象となる個別銘柄をじっくり検討できるので、ナンピン買いの株価は個別に割り出す方がいいでしょう。ナンピン買いの原則的なメドが、「最初の買い値から10%下がったところ」といった感じになります。というわけで、この時は(2,750円×0.9=)2,475円で、最初に買った株数と同じ株数で買い増しをします。結果的には最安値での買い増しに成功します。なお、買い値の平均単価は2,613円になります。

 

そして、2,417円が結果的な最安値ですから、これを起点にして1.32倍の株価が当面の売り値の目標株価になります。(2,417円×1.32=)3,190円です。

 

2016年8月31日に3,190円が付きますので、そこで売ります。ここでも、半年間の保有で3.2%のインカムゲインの半年分と22%のキャピタルゲインを得られます。今回のキャピタルゲインが32%ではなく22%になったのは、最安値が低かったために、売り値も低めの設定になったからですが、結果的には売ったすぐ後の2016年9月5日に3,224円の高値を付けた後でまた買い値圏まで株価が下がりますので、絶好の売りだったということになります。

 

その後、2016年10月31日に公表された第2四半期決算で、配当が年額88円と発表されています。88円を3.2%で割り返すと2,750円となります。2016年11月9日に2,750円が付きますので、ここで買います。これはいわゆる「トランプショック」による安値で、2,693円まで下がっています。またもや絶好のチャンスをものにできています(たった1日だけの急落でしたから、2,750円で買うのは難しかったかもしれませんが)。

 

そして、今回は2,693円が結果的な最安値ですから、これを起点にして1.32倍の株価が当面の売り値の目標株価になります。(2,693円×1.32=)3,555円です。

 

その後、同年の12月15日に3,579円まで上がりますので、3,555円で売ります。保有期間が短すぎてインカムゲイン(配当)は得られませんが、今回は、たった5週間で29%のキャピタルゲインが得られます。

本田技研工業株の今後の投資戦略は?

2017年4月28日に公表された本決算で、配当が年額96円と発表されています。96円を3.2%で割り返すと3,000円となります。2017年8月18日に3,000円が付きますので、ここで買います。ここでもまたもや絶好のチャンスをものにできています(この時もたった1日しか買い値になっていない上に、3,000円が結果的な最安値ですから、3,000円で買うのは難しかったかもしれませんが)。

 

下記の図表3に本田技研工業の2017年4月~2018年1月の日足チャートをお示ししました。この買いに関する売り値の目標株価は、(3,000円×1.32=)3,960円です。パッシブ投資の考え方では、この3,960円までは保有を継続することになります。

 

[図表3]本田技研工業(7267)の日足チャート(2017年4月~2018年1月)

 

 

そして、この企業の株価は2018年1月4日に売り値の目標株価の3,960円を超えていますので、ここで売ることになります(同月10日に4,151円まで上がって、株価は下がり始めています)。

 

なお、2018年2月2日に公表された第3四半期決算発表で、配当が年額で98円と発表されました。したがって、次の買いの目標株価は3,062円です。ですから、今後、株価が3,062円になったら、その時点において公表されている配当の予想値が減額になっていないことを確認した上で、積極的に買いを検討する水準であるといえます。

 

2018年2月2日の第3四半期決算で、5,577円という高いEPS〈予〉の値を公表しましたから、当分は3,062円までは下がらなさそうですが、気長に待ちます。

 

 

榊原 正幸

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

 

 

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青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

専攻は会計学。1961年、名古屋市に生まれる。1984年、名古屋大学経済学部卒業。1990年、名古屋大学大学院経済学研究科博士課程修了。1997年、東北大学助教授。2001年、レディング大学よりPhDを授与される。2003年、東北大学大学院教授を経て、2004年から現職。

著者紹介

連載人生100年時代の必修科目…堅実で科学的な株式投資の教室

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、PHP研究所、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

現役大学教授が実践している 堅実で科学的な株式投資法

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榊原 正幸

PHP研究所

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