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苛酷な労働環境、多額の税金…医師が置かれる厳しい現実とは?

前回は、なぜ医師の資産形成には「節税」の視点が欠かせないのかを取り上げました。今回は、労働環境や収入の面から、医師が置かれている厳しい現状を見ていきます。

高齢者の増加により、医師不足がますます深刻化

日本では人口が減少する一方で、高齢者が増加し続けています。内閣府が発表した『平成30年版 高齢社会白書(概要版)』によると、2017年の65歳以上人口は3515万人。総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は27.7%へ到達しました。

 

2042年には3935万人でピークを迎え、その後は減少に転じますが、高齢化率は上昇傾向にあると推計されています。2065年には高齢化率38.4%に達する見込みです。

 

これに伴って深刻化しているのが、医師の不足です。

 

医師の数は近年、年次で4000人ほど増加している(死亡等を除く)のですが、それでもまだまだ足りていません。『経済協力開発機構(OECD)調査』によれば、日本の人口1000人当たりの臨床医数は加盟国の下から4番目となっており、日本の医師不足が浮き彫りになっています。

 

資料:棒グラフと実線の高齢化率については2015年までは総務省「国勢調査」、2017年は総務省「人口推計」(平成29 年10月1日 確定値)、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29 年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果。点線と破線の高齢化率については、それぞれ「日本の将来推計人口(平成9年推計)」の中位仮定、「日本の将来推計人口(平成24年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による、推計時点における将来推計結果である。(注1) 2017年以降の年齢階級別人口は、総務省統計局「平成27年国勢調査 年齢・国籍不詳をあん分した人口(参考表)」による年齢不詳をあん分した人口に基づいて算出されていることから、年齢不詳は存在しない。なお、1950年~2015年の高齢化率の算出には分母から年齢不詳を除いている。(注2) 年齢別の結果からは、沖縄県の昭和25年70歳以上の外国人136人(男55人、女81人)及び昭和30年70歳以上23,328人(男8,090人、女15,238人)を除いている。(注3) 将来人口推計とは、基準時点までに得られた人口学的データに基づき、それまでの傾向、趨勢を将来に向けて投影するものである。基準時点以降の構造的な変化等により、推計以降に得られる実績や新たな将来推計との間には乖離が生じうるものであり、将来推計人口はこのような実績等を踏まえて定期的に見直すこととしている。  【出典】『平成30年版高齢社会白書(概要版)』(内閣府)
[図表1]高齢化の推移と将来設計  資料:棒グラフと実線の高齢化率については2015年までは総務省「国勢調査」、2017年は総務省「人口推計」(平成29 年10月1日 確定値)、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29 年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果。点線と破線の高齢化率については、それぞれ「日本の将来推計人口(平成9年推計)」の中位仮定、「日本の将来推計人口(平成24年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による、推計時点における将来推計結果である。
(注1) 2017年以降の年齢階級別人口は、総務省統計局「平成27年国勢調査 年齢・国籍不詳をあん分した人口(参考表)」による年齢不詳をあん分した人口に基づいて算出されていることから、年齢不詳は存在しない。なお、1950年~2015年の高齢化率の算出には分母から年齢不詳を除いている。
(注2) 年齢別の結果からは、沖縄県の昭和25年70歳以上の外国人136人(男55人、女81人)及び昭和30年70歳以上23,328人(男8,090人、女15,238人)を除いている。
(注3) 将来人口推計とは、基準時点までに得られた人口学的データに基づき、それまでの傾向、趨勢を将来に向けて投影するものである。基準時点以降の構造的な変化等により、推計以降に得られる実績や新たな将来推計との間には乖離が生じうるものであり、将来推計人口はこのような実績等を踏まえて定期的に見直すこととしている。

【出典】『平成30年版高齢社会白書(概要版)』(内閣府)

過酷な勤務状況による、医師自身の健康不安も

今、日本の医師は、非常に過酷な状況に置かれているのです。それを実証するように、全国医師ユニオンが母体となる「勤務医労働実態調査2017実行委員会」のアンケート『勤務医労働実態調査2017 最終報告 全文』には、次のような回答が寄せられています。

 

「あなたの業務負担は、この2年間で変わりましたか」という問いに対して、「減った」という回答は16.2%。「変わらない」という回答が39%。「増えた」という回答が43.8%。つまり、「増えた」という回答が半数近くを占めているのです。

 

1週間の実働時間を尋ねると、初期研修医で64.4時間、当直ありの病院勤務医で58.8時間。このことから24時間体制を担う医師が、過重な労働を行っていることがうかがえます。

 

このような過酷な勤務状況ですから、医師の健康不安も深刻です。「健康に不安」や「病気がち」と答えた医師は40.1%。皮肉なことに、患者の命や健康を守る医師の約4割が、健康に不安を持っているのです。病気がちである医師が2.9%いることも看過できません。

 

つい最近のニュースでは、2次救急指定されている茨城県の公立病院にて、2017年度、全体の約18%にあたる勤務医23人に時間外労働の「過労死ライン(月80時間)」を超える月があったことが、情報公開請求で入手した文書で分かったと毎日新聞で報じられていました(2018年6月1日)。

 

時間外労働が年間計1146時間にのぼった医師もいるそうで、医師の不足や偏在を背景に、24時間対応の総合病院で過酷な労働が常態化している現状が浮かび上がりました。

 

(注1) 「DECD単純平均」とは、各国の人口1,000人当たり医師数の合計を国数で除した値。(注2) 「DECD加垂平均」とは、加盟国の全医師数を加盟国の全人口(各国における医師数掲載年と同一年の人口)で除した数に1,000を乗じた値。(注3) *の国は2014年のデータ、**の国は2012年のデータ、***の国は2007年のデータ、それ以外は2013年のデータ。(注4) オーストラリア、フィンランド、ィギリス、アイルランド、カナダは推計値。
[図表2]OECD加盟国の人口1000人当たり臨床医数 (注1) 「DECD単純平均」とは、各国の人口1,000人当たり医師数の合計を国数で除した値。
(注2) 「DECD加垂平均」とは、加盟国の全医師数を加盟国の全人口(各国における医師数掲載年と同一年の人口)で除した数に1,000を乗じた値。
(注3) *の国は2014年のデータ、**の国は2012年のデータ、***の国は2007年のデータ、それ以外は2013年のデータ。(注4) オーストラリア、フィンランド、ィギリス、アイルランド、カナダは推計値。

収入への不満は「週80時間以上」もの労働が原因

昨今は誰もが名前を知っているような大企業であっても、リストラは珍しくありません。リストラされたサラリーマンの再就職は容易ではありませんが、これが医師であれば、たとえ仕事を辞めてもすぐに次の職場を見つけることができるため、一般のサラリーマンと比較するとかなり恵まれた職業に思えます。

 

ところが、そんな好待遇にもかかわらず、収入に不満を感じている医師が少なくありません。

 

その原因には、勤務医の仕事量も関係しています。全国医師ユニオンが母体となる「勤務医労働実態調査2017実行委員会」のアンケート『勤務医労働実態調査2017 最終報告 全文』によれば、勤務医の労働環境は過酷そのものです。

 

「改善してほしいこと」(複数回答)の回答では、1位が「完全な休日を増やす」で50%。次いで2位の「当直・日直回数を減らす」が30.7%。3位が「通常の残業を減らす」で30.6%でした。

 

「完全な休日を増やす」がトップであったことは、1カ月間まったく休みのない医師が1割程度もいるうえ、明らかに労働基準法違反となる月4回未満の休暇しか取っていない医師が3割以上を占めている実情を反映したものと考えられます。

 

さらに「最近辞めたいと思うことがあるか」という問いに対する回答は「いつもある」「時々ある」を合わせると31.4%。「稀まれにある」も含めると59.2%でした。努力を重ねて熾烈(しれつ)を極める受験戦争を勝ち抜いてきた医師の半数以上が、退職を考えるほど負担の大きい職場環境・・・。そんな現実があるのです。

 

一般的な労働者について、労働基準法第32条では「1週間に40時間を超えて労働させてはならない」と定められています。病院などが含まれる「特例措置対象事業」の場合は少し条件が緩めですが、それでも上限は44時間です。多くの医師は、労働基準法に定められている上限勤務時間の1.5倍も働いていることになります。

 

さらに他院でのアルバイトも含めたら、週に80時間以上働いている勤務医も珍しくありません。この80時間を超える労働は、過労死に直結する危険性が高いといわれます。昔から「医者の不養生」という言葉がありますが、医師の中には命を削って働いている方がたくさんいるのです。

 

このようにしてアルバイトに励んだとしても、所得が上がって所得税率が変わってしまうと、休日返上で忙しく働いているわりには「手取りが少ない」という残念な結果になることがあります。

高齢になっても仕事を辞められない医師

所得が上がった分だけ所得税率は高くなりますが、一度上げてしまった生活レベルは下げられないため、ゆとりのある生活ができないという方も多いでしょう。最近、私の会社のお客様にも、20代後半から30代前半の医師が増えてきました。中でも既婚の場合、たとえ年収が1000万円以上あっても生活に余裕があるわけではありません。

 

ある一定の収入があれば、妻は専業主婦。良い家に住んで、良い車に乗って、良いものを身に付けて、良いものを食べる。そんなライフスタイルを選びます。もちろん、子どもへの教育費も惜しみません。たくさん習い事をさせて私立の学校へも通わせています。医師の子どもが医師を目指すケースも多く、そうなれば学費が桁違いにかかります。

 

所得が高い分、所得税率も高いため、必死で働いているわりにはそこまでお金が残らないのです。ですから、年収が1000万円以上あっても「貯金がなかなかできない」という家庭は珍しくありません。

 

さらに30、40代の医師の中には「退職金が出ない」という方もいます。というのも年俸制が取り入れられている病院が多くあるからです。年俸制では退職金が出ないケースもあります。

 

そうした方々は、「自分の所得が高いのは退職金が出ないから」ということを理解して働いています。しかし同時に「今と同じような仕事量で50、60代まで働けるのか不安だ」と思っている方も多いといえます。

 

退職金が出ないケースでは、「60歳になったら定年退職する」という方は少なく、70歳くらいまで働く方も多いでしょう。社会貢献という目的もあるかもしれませんが、やはり収入を得るために医師を続ける方が多い印象です。

 

 

秋葉 侑輝

東京不動産投資株式会社 代表取締役

東京不動産投資株式会社 代表取締役

■運営サイト:医師のための不動産投資メディア「不動産投資アカデミー」(https://ft-academy.jp/


22歳で不動産ベンチャー企業に入社し、わずか3年後、社内最年少の25歳で取締役に就任。
その後、不動産デベロッパーにて取締役副社長に就任。2015年、東京不動産投資株式会社を設立。長年のキャリアの中で、医師をはじめとした高所得者に対する重い税負担が「不動産投資」によって軽減され、労働収入だけに頼らない効率的な資産形成となることに気づく。
その運用方法を解説する東京不動産投資株式会社主催のセミナーに参加した医師は、実に700人を超える。

著者紹介

連載医師のための節税の教科書

 

医師のための節税の教科書

医師のための節税の教科書

秋葉 侑輝

幻冬舎メディアコンサルティング

診察、事務処理、学会準備・・・ 休む暇なく働いているのにお金が貯まらないドクターへ 手取り額を増やして資産を築くために、押さえておきたいマネーリテラシー

 

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