
前回は、解約返戻金の使い道として「海外の中古不動産投資」等を取り上げました。今回は、法人保険を分割契約することで出口を調整する方法等を見ていきます。
経費を計上せず、既存資産を活かし損金をつくる
前回の続きです。
⑪既存資産を活かして損金をつくる
ここまで紹介した①から⑩は、解約返戻金で何かを買う、投資するといった形で経費を計上する方法でした。しかし、経費を使わない方法もあります。貸倒損失や固定資産の除去損、棚卸資産の評価損など、既存資産を活かして損金をつくって利益(解約返戻金)にぶつけるという方法です。
他にも、すでに保有している法人保険を使って損金をつくれる場合があります。
法人契約の変額保険に加入していて、その価値が払込保険料に比べて下がっているのなら、その保険を経営者自身が買い取ることで、損金をつくることができます。たとえば「1000万円を払って法人名義で加入した変額保険が、現在400万円の価値しかない」という場合、経営者が買い取れば、法人は投資損失として600万円の損金をつくることができます。
⑫分割契約によって出口の処理を調整しやすくする
通常、保険契約は1本で済ませることが多いですが、年間保険料を1000万円1本ではなく、500万円×2本にするなど、分割で契約をすることで、出口での処理を調整しやすくすることがよく行われます。分割して契約することで「この保険は○○さんの退職金確保、この保険は設備投資資金の確保」といったように、解約返戻金の管理がしやすくなり、利益も調整しやすくなります。
また、用途がより明確であれば、近い将来まとまった額が必要な場合には、5年ピークの商品、先々のお金を用意したいなら10年ピークの商品などと使い分けてもいいでしょう。
ただし、これには注意点もあります。大きな額の保険を契約すると、大口割引が適用されて保険料が多少下がったり、ときには返戻金が少し上がったりすることがあるのです。
大口割引がきく保険金額は、保険会社によって変わるものの、3000万円、5000万円、7000万円、1億円という区切りを設けているところが多いようです。加入時に内容をしっかり確認して、利益調整の利便性と比較してから決めることが必要です。
契約の「失効」の仕組みを活用すれば・・・
⑬契約の「失効」の仕組みを活用して、解約返戻金のピークをずらす
保険契約の効力がなくなり、保障が受けられなくなることを「失効」といいます。これは主に、保険料を払わなかったことが原因で起こります。支払期日を過ぎても保険料の払い込みがなく、さらに一定の支払猶予期間になってもそのまま支払いがない場合、保険契約は失効します。
失効すると、それまであった保障はなくなりますが、解約返戻金の回収権利は持ったままとなります。いつまでその権利を行使できるかは保険会社によってさまざまですが、権利を行使するまでは、資金(解約返戻金)は保険会社に置かれたままです。
本来、失効は「保障がなくなる」ため、契約者にとって不利益なことなのですが、失効を「意図的」に起こすことで、解約返戻金のピークをずらし、利益調整寄りの形に持っていくことが可能になるのです。
保険料を支払わずに契約が失効となったとしても、即時に選択肢そのものがゼロになるわけではありません。それを逆手にとり、解約返戻金のピークが契約から5年目であるにもかかわらず、「将来設計が変わったから、7年目にピーク時の解約返戻金を受け取りたい」となったときには、わざと失効させるのです。そして7年目で解約して資金を回収するというテクニックを使えば、解約返戻金のピークをずらすことができます。
出口でどうしても経費化できない場合、退職金や修繕の時期がずれたときなど、いざというとき、どうしようもなくなったときの非常手段として認識しておきましょう。