公共投資、減税、金融緩和…景気回復に最も効果的な策は?

今回は、景気が悪化した際の対策として、公共投資、減税、金融緩和のうち、最も効果が高いものはどれか考えてみましょう。※本連載は、わかりやすい経済解説で知られる久留米大学商学部教授・塚崎公義氏の著書、『経済暴論』(河出書房新社)の中から一部を抜粋し、普段なかなか報道されない、日本の景気と財政の実態について解説します。

確実に一定数の失業者を減らせる「公共投資」が一番!?

景気が悪化したときには、政府が公共投資と減税、日銀が金融緩和を行なって景気の回復を図ります。では、どれが一番効果があるでしょうか?

 

筆者は公共投資であると確信しています。景気が悪いときには、金融緩和は効きが悪いはずです。現存する工場の稼働率が低いときに「金利が下がったから、借金して工場を建てよう」といわれても、建てる企業は少ないでしょうから。まして、金利がゼロになってからの追加的な金融緩和は、企業行動にほとんど影響を及ぼさないはずです。ちなみに2015年以後のアベノミクスでは、ゼロ金利下の金融緩和が景気を回復させましたが、これは特殊な事例なので、本書籍の172ページで論じます。

 

減税については、「公共投資と異なって無駄な支出が発生しない」というメリットがありますが、不況期に景気を浮揚(ふよう)させる力は今ひとつです。明日にでも失業するかもしれないと思っている人が、給与所得減税を受けたからといって、贅沢をするとも思われず、貯金されてしまうケースが多いからです。

 

もっとも、住宅投資減税などは効くかもしれません。不況期は住宅価格も住宅ローン金利も低いので、加えて住宅投資減税があれば、住宅投資を考えている人々の「背中を押す」効果があるかもしれないからです。効果のほどは、その時々で異なるでしょうが。

 

公共投資は、政府が直接失業者を雇う(実際に雇うのは建設会社ですが)ので、減税と異なり、確実に一定数の失業者を減らす効果が見込めます。バブル崩壊後に巨額の公共投資が行なわれたにもかかわらず、景気が回復しなかったので、「公共投資は無駄である」と考える人が増えているようですが、そんなことはありません。

 

あれだけ大きなバブルが崩壊したのに、あの程度の不況で済んだのは、公共投資のおかげだったのです。経済は実験ができませんから、公共投資の効果が見えにくいのです。「実験室のなかで100回バブルを崩壊させて、公共投資を行なった場合と行なわなかった場合の景気を比較してみる」ことができれば楽なのですが(笑)。

 

大不況のときは公共投資の効きが悪いのですが、それを理解している人は少ないようです。小不況時には、雇われた元失業者が給料で消費するので、その分も景気回復に寄与しますが、大不況時は、元失業者が再度の失業を恐れて給料を消費にまわさずに貯金しますし、仮に元失業者がテレビを買ったとしても、テレビ工場は稼働率が低いので、増産のために新しく人を雇うこともありませんから、景気を回復させる力が弱いのです。「だから公共投資は無駄だ」ではなく、「その分だけ余分に公共投資をしなければ」となるべきなのですが・・・。

 

「無駄な道路」でも景気対策としては有効

もうひとつ、「無駄」な道路(ほとんど人も車も通らない道路など)がつくられていることで、人々が「公共投資は無駄だ」と思ってしまったことも不幸でした。

 

公共投資には「道路や橋をつくって国民生活を便利にする」「失業者を雇って景気を良くする」という一石二鳥の効果が期待されているわけで、無駄な道路でも景気対策としては有効なわけです。

 

ケインズは「不況なら、失業者を雇って穴を掘れ」といっているわけで、さすがにそれよりはマシでしょう(笑)。もちろん、使える道路をつくってくれればさらによかったのですが。

 

「公共投資はカンフル剤である。一時的には効果があるが、公共投資を減らしたときには景気下押し効果が出てしまうので、永遠に公共投資を行ない続けなければならなくなり、財政がもたない」という人もいますが、筆者はそうは思いません。

 

景気というものは、一度上を向くと、「売れるからつくる」「つくるために雇う」「雇われた元失業者が給料をもらって買う」といった好循環が生まれ、自分で勝手に回復を続けるのです(第2回参照)。したがって、公共投資で景気の方向を変え、景気が勝手に回復を続けるようになった段階で公共投資をやめればいいのです。マッチで部屋を暖めることはできません(マッチを擦り続けて部屋を暖めるのは膨大なマッチが必要)が、マッチでストーブに点火すれば、部屋は暖まります。それと同じことです。

 

以上のように、公共投資の景気回復効果を高く評価している筆者ですが、さすがに数十年ぶりの労働力不足という現状を見ると、公共投資は少し絞るべきだと思います。オリンピック後の不況に備えて、設計図だけでも描いておいてはいかがでしょうか?

 

久留米大学商学部 教授

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。
著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。
趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載メディアが伝えない「景気と財政」の実態

企画・編集:株式会社夢の設計社

 

 

経済暴論

経済暴論

塚崎 公義

河出書房新社

「トランプ大統領は日本経済にとってプラス」「勤勉と倹約が不況を長引かせる」…経済の話を“極論と暴論”で面白がりながら学ぶ本! 教科書はもちろんのことニュースや新聞でも知ることができない“経済の裏のウラの真実”と…

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