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アメリカの景気動向に、日本経済がいつも振り回される理由

今回は、アメリカの景気動向に、日本経済がいつも振り回される理由を解説します。※本連載は、わかりやすい経済解説で知られる久留米大学商学部教授・塚崎公義氏の著書、『経済暴論』(河出書房新社)の中から一部を抜粋し、普段なかなか報道されない、日本の景気と財政の実態について解説します。

輸出先としては、2割強にすぎない米国だが・・・

経済関係のニュースを見ていると、圧倒的に米国関係のニュースが多いことに気づきます。2016年の通関統計(貿易統計)で日本の輸出先を見ると、米国向けは2割強にすぎず、中国向け(香港向けを含む)の方がむしろ多いのに、なぜでしょうか?

 

まず思いつくのは、歴史的にも文化的にも政治・外交面でも、日本は圧倒的に米国の影響を受けているということです。したがって、米国に馴染みがあり、親しみを感じる人も多く、米国関係のニュースは読まれるので、マスコミも記事にしたがる、ということでしょう。

 

米国は、世界経済の中心であり、経済に勢いがあり、先進的な企業も集まっていますから、米国企業の経営を真似しようと思っている企業も多いでしょう。反面教師にしようという企業もあるでしょうが(笑)、いずれにしても注目されていることは間違いないでしょう。

 

しかし、それだけではありません。日本の景気動向を考える際に、米国の景気が圧倒的に重要であることが根底にあるのです。

 

まず、米国の輸入は巨額です。自動車を例にとると、米国の景気が悪化すると、米国人が自動車を買わなくなりますから、米国の自動車輸入が減ります。当然、日本車の対米輸出も減ります。加えて、米国の自動車輸入の相手国別ウエイトが変化します。日本製品は品質は高いが値段も高いので、景気が良いときにはよく売れますが、景気が悪くなって米国人が倹約し始めると、「品質はいまひとつだが、値段が安いメキシコ車」に需要がシフトするので、日本車の輸入は他国製自動車以上に大きく落ち込むのです。

 

米国が不況になると、日本から中国などへの輸出も落ち込みます。理由の第一は、部品の輸出です。米国が中国などから輸入している製品を見ると、心臓部の部品は日本製である場合が少なくありません。つまり、米国の景気が悪化して米国の輸入が減ると、中国などの日本からの輸入も減るのです。

 

また、中国等への設備機械の輸出も減ります。米国は中国から洋服を輸入していますが、中国で使われている洋服製造機は日本製のものも多くあります。たとえば日本製の洋服製造機が10台使われていて、寿命が10年なので毎年1台が日本から輸入されているとします。米国の景気が悪化し、中国からの洋服の輸入が1割減ると、中国国内で稼働する日本製洋服製造機が1割減ります。そうなると、今年壊れた分の補充をする必要がなくなるので、日本からの洋服製造機の輸入は10割減(なくなってしまう)になるのです。

日本の輸出全体に影響を及ぼす「基軸通貨・ドル」

為替レートに与える影響も重要です。米国の景気が悪化すると、米国の中央銀行が利下げをします。そうなると、日本人投資家が「円をドルに替えて米国債に投資しても、得られる金利はわずかである。一方で、ドルをもつと為替リスク(ドルが値下がりして損をする可能性)があるので、ドルを買うのはやめておこう」と考えるようになります。ドル買い注文が減ると、ドル安円高になります。

 

投機家たちは、過去の投資家の行動を観察していますから、「米国の景気が悪化するとドル安円高になる可能性が高い」ということを知っています。そこで、「米国の景気が悪化しそうだ」と思うとドルを売るのです。これがドル安円高を加速することにもなりかねません。

 

ドルは基軸通貨で、世界中の貿易に使われていますから、日本の対米輸出だけでなく、日本の輸出全体が影響を受けます。中国や欧州の景気が悪化して金融が緩和され、人民元やユーロが安くなっても、日本の輸出にはさほど影響しませんが、米ドル安の影響は段違いに大きいのです。

 

ドルが基軸通貨で、世界中の資金貸借に用いられていることも重要です。リーマン・ショックのようなことがあると、世界中の金融機関がドルの貸し借りを手控えるようになりますから、「取引のための資金が調達できなくて取引が成立しなかった」といった話も世界中で聞かれるようになるかもしれません。

 

株価についても、米国の動向は重要です。「米国の株価が下がると日本の株価が下がる」といわれています。理由はともかく、そういわれているので、米国の株価が下がったというニュースを耳にすると、日本株の売り注文を出す投資家が大勢いるのです。それによって日本株が下がる場合も多いので、日本株の投資家は米国の株価動向を注目している、というわけです。

 

[図表]

久留米大学商学部 教授

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。
著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。
趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載メディアが伝えない「景気と財政」の実態

企画・編集:株式会社夢の設計社

 

 

経済暴論

経済暴論

塚崎 公義

河出書房新社

「トランプ大統領は日本経済にとってプラス」「勤勉と倹約が不況を長引かせる」…経済の話を“極論と暴論”で面白がりながら学ぶ本! 教科書はもちろんのことニュースや新聞でも知ることができない“経済の裏のウラの真実”と…

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