
前回は、法人保険の「MHPスキーム」で子や役員に資産移転する方法解説しました。今回は、保険を解約せずに貯蓄代わりに活用する、「払済保険」という出口戦略を見ていきます。
「万一の備え」「貯蓄機能」として残すことも可能
これまでは、個人が法人から買い取った保険については、「解約して現金化する」という流れで見てきました。しかし、「解約しない」という選択肢もあります。解約せずに、その保険を「万一の備え」「貯蓄機能」として残しておくこともできます。この場合「払済保険」にするという出口戦略を採用します。
払済保険とは、積み上がっている解約返戻金を使って、一時払いの終身保険を新規で買うことをいいます。それまでに貯まったお金で買えるだけの保険を買い、保障が一生涯続く状態にします。保険料の支払いは終わります。
次の図表を見てください。法人から社長個人に名義変更をした場合、5年目の保険料を社長が負担し、解約返戻金が2425万円に立ち上がった後、払済保険にします。すると社長は、それ以降は保険料を支払う必要はなくなり、2700万円の死亡保険金が新たに設定され、保障が一生涯続きます(保険会社によっては保障額が増減する)。
[図表] 払済保険への変更の仕組みのイメージ

社長が死亡した場合は、死亡保険金2700万円は遺族に渡ります。もしも資産が潤沢にあって、特にお金はいらないというのであれば、保険を現金化せずにそのまま家族に渡す保障としてとっておいてもよいでしょう。
一方、この払済保険にした際の2425万円は、一般的に銀行の預金金利よりも高い利回りで増えていきます。したがって、長期間置いておき、2425万円が希望の額まで増えたところで現金化するという方法も採用できます。
払済保険にした際の税務処理は「解約時」に行われる
なお、ここで気になるのは、払済保険にした場合の税務です。解約をした場合は、一時所得として申告する必要がありましたが、払済保険にする場合は、その時点で税務処理は一切ありません。いずれこの払済保険を解約して、資金を回収した場合は、そこではじめて一時所得の申告の対象となります。解約は、2425万円一括だけでなく、分割でも可能なため、毎年必要な分だけ資金を引き出し、その分だけ毎年一時所得の申告をするという形もよく採用されています。