
前回は、法人保険の買い取りはどのタイミングで行うべきかを説明しました。今回は、法人保険の活用で決算書を「きれい」にするメリットを見ていきましょう。
企業の「不良債権」を消すために法人保険を活用
法人保険を販売する保険代理店には、独立系、証券会社系や銀行系などさまざまありますが、その中でも銀行系の代理店がよく行っているのが、「法人保険を活用して決算書をきれいにする」という方法です。
決算書に問題がある法人に対しては、銀行は融資しづらいものです。しかし、銀行としては何としてもその法人に融資を行いたい。決算書さえ「きれい」になっていれば、融資は比較的容易になることもあります。そこで銀行が系列の保険代理店に依頼し、法人保険を用いて決算書をきれいにさせるスキームがあるのです。
中小企業の場合、経営者が「どんぶり勘定」、すなわち会社のお金と自分のお金を混同しているケースが多いものです。
会計上は会社が経営者にお金を貸していることになっています。これは銀行の側からすると、帳簿上は資産として載っていても、不良債権のような扱いになるため、融資の承認を出しづらくなります。特に昨今は、不動産バブルの懸念から融資が厳しくなっているケースが散見されます。
もっとも、これは経営者が借りているお金なので、経営者が法人に少しずつでも返せばよいだけの話なのですが、「今この瞬間、融資審査のこのタイミングに返すお金がない」という場合が少なくありません。よく見られるのは、医療法人等で、経営者が子どもの学費などに会社のお金を使ってしまっているパターンです。
そこで、この不良債権を消すために法人保険を使うのです。
ノンバンクを活用し、法人から「貸付金勘定」を消す
以下の図表を見てください。これを行うにあたって、最初に登場するのがノンバンクです。まず、ノンバンクが、法人が経営者に対して保有している貸付金債権を買い取ります。すると債権が法人からノンバンクに譲渡されます。この時点で法人からは貸付金勘定が消え、銀行も融資できるようになります。
しかし、ノンバンクはさすがに無担保では融資できませんので、法人は、ノンバンクから受け取った債権の譲渡代金で、経営者を被保険者にした積立型の生命保険(多くは終身保険)に加入します。その生命保険はノンバンクが「質権設定」し担保に取ります。
一方、経営者は、返済の相手が法人からノンバンクに変わりますので、以後ノンバンクに返済していきます。10年〜15年返済が多いようです。
[図表]仮払金勘定を消し去るスキーム

ちなみに、経営者の返済が終われば、担保となっていた生命保険は質権が解除され、純粋に会社の資産になります。積立型の保険なので、保有していれば解約返戻金額が少しずつふえていきます。それを解約して会社のお金として使ってもよいですし、経営者の勇退退職金として経営者に戻すことも考えられます。