
前回は、解約返戻金を原資とした法人保険の「貯蓄効果」を探りました。今回は、全額損金タイプの法人保険の活用で「合法的な簿外資産」を形成する方法と、その注意点を説明します。
全額損金タイプの解約返戻金は、貸借対照表に載らない
保険料の全額が損金算入される法人保険においては、解約返戻金は、実質的には資産的な要素が強いにもかかわらず、その金額は貸借対照表には記載されないのです。これは法人保険の大きな魅力です。
つまり法人保険に加入すると「簿外資産」、いわば隠れた資産を形成することができるのです。
隠れた資産などというと、まるで悪いことをしているかのようですが、決して法律を犯しているわけではありません。法人保険を活用する以外にも、国の制度である、中小企業退職金共済や経営セーフティ共済等を活用して簿外資産を築くケースは一般的です。簿外資産があれば、将来に備えることができます。
もちろん簿外資産をつくらなくても、利益の中から「内部留保」として積み立てた分を将来の備えとすることもできるわけですが、それはあくまで通常どおり納税してしまった後の資金です。その点、簿外資産であれば、税引前の利益分をしっかり蓄えておくことができるのです。
帳簿上の資産と簿外資産のバランスに十分な注意を
とはいえ、簿外資産のウエートが大きくなりすぎると、帳簿上はかなり資産が少ない状態になります。すると、金融機関から融資を受けたくても、「資産が少ない会社」とみなされ、融資を受けられない恐れもあります。
最近でこそ、銀行自体が法人保険を販売するようになったため、簿外資産となっている法人保険の解約返戻金について、資産として評価する銀行はふえましたが、金融機関によっては保険に関する知識が極めて乏しく、簿外資産がたくさんあるのに、融資の審査には無関係となるケースも一部見受けられます。
いずれにせよ、保険営業担当者からの安易なセールストークにのせられず、帳簿上と簿外資産のバランスには十分注意を払うことが必要です。