
前回は、法人保険の活用時に十分留意したい、「入り口効果」「出口効果」について説明しました。今回は、解約返戻金を原資とした法人保険の「貯蓄効果」を見ていきます。
法人資金を「預貯金」のように保険会社へ預けられる
ここからは、解約返戻金についてもう少し詳しく説明していきましょう。
法人保険で重要となる解約返戻金ですが、そもそも解約返戻金はなぜ発生するのでしょうか。その基本メカニズムについて説明します。
以下の図表を見てください。左側の法人保険Aは、保険料が、1年目100万円、2年目200万円と保険料が毎年上昇しています。それもそのはずです。一般的に、年齢を重ねるということは「死」に近づくことになるため、死亡リスクが高まり、保険料が上昇します。
[図表] 解約返戻金が発生する基本メカニズム

この契約では、5年計で1500万円を支払っています。
一方、右側の法人保険Bは、5年計で1500万円を支払うことになるのは同じですが、毎年の支払保険料が均等になっています。5年計で1500万円を支払う保険料を5年間で均等に支払う契約になっているため、1年目は300万円の保険料の支払いとなっており、法人保険Aよりも200万円多く支払う形になっています。
この状態で1年目に解約をすると、200万円は2年目以降の保険料部分を前払いしていることになるため、未経過保険料として契約者に全額が返還されます。つまり、1年目は300万円の保険料を支払っていますが、解約をすると、200万円の返還となり、返戻率は約67%となります。これが解約返戻金の基本メカニズムです。
法人保険の解約返戻金の仕組みを活用すれば、法人の資金の一部を「預貯金」のように保険会社に預けることができます。保険と預貯金とはもちろん根本的には異なりますが、まとまったお金を一定期間プールしておけるという点では似ています。それゆえに、「法人保険には貯蓄効果がある」とまでいわれるのです。
「支払った保険料が目減りする」リスクに注意を
法人保険が預貯金と異なる点としては、払い出し時に元本の全額が必ず支払われる「元本保証」ではないということが挙げられるでしょう。
また、預貯金であれば預けっぱなしにしておいても預けた資金の額が減ることは原則ありませんが、法人保険の場合は預けた資産、すなわち支払った保険料が目減りするリスク、解約返戻金が投資額を超えないリスクがあることにも注意しなければなりません。中には、解約返戻金が0円になる商品もあるのです。
ただし法人保険には、預貯金にはない「保障」の機能があります。これは当たり前のことですが、加入している期間に、万一のことがあれば、支払った保険料の何倍、何十倍という保険金を得ることもできます。
法人保険はそもそも生命保険であるため、万一の状況に備えて加入するものですが、実際には、法人保険に加入して数年後に中途解約をして解約返戻金として回収して出口を迎えるというパターンが圧倒的に多いのです。