
株式譲渡でM&Aを行う場合、手残りを増やすための代表的な手法としてあげられるのが、退職金の活用です。ここでは、具体的な計算式を用いて解説します。
手残りを増やす「退職金の活用」
オーナー社長の手残りを最大化したい場合、M&Aによる売却では、できれば株式譲渡のほうが望ましいことはご理解いただけたと思います。
株式譲渡でM&Aを行う場合、手残りを増やすための代表的な手法が、退職金の活用です。
前回もあげた下記の例で考えてみましょう。
(資産の部) (負債および資産の部)
流動資産 諸負債
1億5000万円 5000万円
固定資産 資本金
1億5000万円 5000万円
利益余剰金
2億円
↓
アドバイザーが時価評価した純資産額
3億円
+
アドバイザーが評価したのれん代
〔5000万円(年間の経常利益)×4年分〕
2億円
↓
M&Aによる売却金額=5億円
↓
譲渡金額の5億円―取得費5000万円
=4億5000万円(キャピタル・ゲイン総額)
5000万円の出資金で40年間かけて育ててきた会社が、この度めでたく5億円相当で売却できることになりました。
このとき、仮にですが、会社の資産から5000万円をオーナー社長への退職金として先に支払ってしまうわけです。
流動資産の1億5000万円から役員退職金として5000万円をオーナー社長に支払うと、会社に残る資産がそのまま5000万円減り、売り値は4億5000万円になります。
退職金は分離課税で控除もある
退職金の控除額と税率は以下の通りです。
退職金の所得金額=(退職金-控除額)×1/2×所得税率
退職所得控除額の計算方法
所得税率(速算表)
例えば、40年勤続したオーナー社長は、「(勤続年数-20年)×70万円+800万円」の計算式にあてはめると、2200万円が控除として非課税扱いになります。
残る2800万円に、2分の1を掛けた1400万円が「退職所得金額」となります。その税率は33%、控除額の153万6000円を引いた308万4000円が5000万円への退職金に対する個人の所得税額になります。