特集 地主の相続対策

地主の相続対策

相続対策を難しくしている要因は多々あるが、その最たるものは不動産の存在だろう。いわゆる「地主」の場合、相続財産の大部分を不動産が占めるケースが多く、その評価や分割など、相続対策にあたっては解決すべき問題が山積みとなる。本特集では、経験豊富なスペシャリストたちが様々な「地主の相続対策」を紹介する。

「財産の組み替え」によって不良資産を優良資産に変えた事例
貝原 富美子
不動産を有効利用できているか、改めて検討するあなたがお持ちの不動産は、しっかり収益を上げていますか? あるいは快適な住まいとして活用できていますか?  普段は有効利用できているかどうかを意識されていない方が多いようです。一度あらためて検討してみてください。その上でもし、「あまり役立っていない」と感じられたら、財産の組み替えを考えてみてはいかがでしょう? 現在、保有している財産をより活用できる形に編成し直すのが財産の組み替えです。具体的に…
相続対策の新たな選択肢として検討したい「家族信託」とは?
土田 士朗
家族信託の活用は遺言書と同等の効果をもたらす!?まだ一般化しているとはいえませんが、今後、ぜひ活用を検討してほしい新しい相続対策として「家族信託」があります。この「家族信託」を使った相続対策は、結果として遺言書と同等の効果をもたらすといわれていますが、さらに、それにプラスした効果を期待できます。 まずは、信託そのものの基本的な仕組みから説明しておきましょう。信託は、契約等に基づいて、特定の者が、一定の目的にしたがって、財産を有する者から所…
法人を設立するための手続きと準備すべき書類とは?
貝原 富美子
まず決定する「5つの項目」とは?「会社を設立する!」というとなにか大事と思われますが、実はそれほど難しいことではありません。次の5つの項目を決めて、必要書類をそろえるだけですから、一般の方が自分で手続きすることもできます。ただ「迅速に間違いなく」と考えるなら、専門家に依頼されてもいいでしょう。 【決定事項】 ①設立する法人の名称たとえば「大阪不動産株式会社」というようないわゆる社名です。 ②設立する法人の所在地自宅の住所や不動産の所在地…
相続対策のための「養子縁組」の手続き方法と活用時の留意点
土田 士朗
「養子縁組」の手続きそのものは非常に簡単養子縁組の手続きそのものは非常に簡単です。基本的には、養親となる者と養子となる者が合意をして市町村役場で戸籍の届け出をすればよいだけです。 ただし、15歳未満の者を養子とする場合には、養親となる者と養子となる者の合意ではなく、養子の法定代理人が、養子に代わって縁組の承諾をすることが必要となります。法定代理人は、通常は親権者、つまり親のはずです。したがって、15歳未満の孫を養子にする場合には、その親の承…
不動産事業の「法人化」によって得られる節税効果とは?
貝原 富美子
相続税だけでなく毎年の所得税、住民税も節税可能に最近、不動産の貸付事業を法人化して経営することをすすめる書籍が数多く出版されています。一般にもよく知られている通り、法人化することで、相続税だけでなく所得税や住民税などの税負担も軽減されるので、一石二鳥どころか三鳥目も狙える高度な節税法なのです。 平成28年1月1日から施行される所得税の改正では、高額所得者の所得税負担も増加します。これまでは所得税・住民税合わせて50%だった最高税率が55%に引き…
相続税対策&遺留分対策としての「養子縁組」の活用法
土田 士朗
節税方法としては限界もある「養子縁組」だが・・・養子縁組、すなわち養子をとることも古くから行われてきた相続税対策の方法の一つです。 養子縁組によって子どもとなった者を「養子」、養子の親となった者を「養親」といいます。「養子」は法律上、嫡出子と全く同じ扱いになります。 相続税の基礎控除額は、法定相続人の数が多ければ多いほど増えます。養子縁組の結果、法定相続人である「子」が増えるので、「基礎控除額が増える=相続税が減る」ことになるというわけ…
「小規模宅地等の特例」の対象となるための条件とは?
貝原 富美子
特例の適用に向けた「準備」をすることも重要前回、「小規模宅地等の特例」の対象となる土地は3種類あると説明しました。 ①被相続人の住宅の敷地②被相続人が事業をしている建物の敷地③被相続人が賃貸事業を営む建物の敷地 今回は、②と③の詳しい条件について見ていきましょう。 ②被相続人が事業をしている建物の敷地 【概要】 ●被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族が事業を行っていた土地について、平成26年12月31日までの相続については、400㎡まで…
「遺留分の放棄」を活用して相続争いを防ぐ方法
土田 士朗
遺留分は「一部だけ」放棄することも可能遺留分は、一部だけを放棄することも可能です。たとえば、家族で同族会社を営んでいるような場合であれば、会社の全株式を長男に相続させるために、他の兄弟姉妹には会社の株式に関する遺留分を放棄してもらうという方法をとることもできるのです。 このような遺留分の事前放棄を利用した相続対策は、家族の仲が良い場合には、遺言書の場合と同様、おそらく不要となります(遺留分の放棄を求めたときに、やはり、「私たちを信頼して…
相続税対策の切り札「小規模宅地等の特例」とは?
貝原 富美子
1億円にのぼる土地の相続税評価額が半分以下に!?相続税について関心をお持ちの方なら、「小規模宅地等の特例」という言葉をどこかで耳にしたことがあると思います。 それほどこの特例がポピュラーなのは、利用できる条件が整えば、この特例による節税効果が非常に大きいためです。相続財産の評価が大幅に下がり、相続税の負担が軽減されます。まさに不動産相続税対策の切り札といえる特例です。 1億円にのぼるCさんの自宅土地の相続税評価額も、小規模宅地等の特例を適用…
遺留分を「放棄」するための具体的な手続きとは?
土田 士朗
特定の相続人に必ず相続財産の一部を与える「遺留分」特定の相続人には、法律上、必ず相続財産の一部を与えなければならないことになっています。これを「遺留分」といいます。遺留分は割合の形で定められており、その割合は誰が相続人になるかによって異なります。 まず、両親や祖父母などの直系尊属だけが相続人の場合は、相続財産の3分の1が遺留分となります。それ以外の場合は、相続財産の2分の1が遺留分となります。遺留分権者、すなわち遺留分権を持つ者が複数人いる…
地価の高騰で生じた「高額な相続税問題」の具体例
貝原 富美子
ごく普通の住まいにもかかわらず高額の相続税が・・・長く住み続けてきた街の人気が高まるのはうれしいことでしょう。ただ、その分地価が高くなれば、相続税課税評価額も上昇しますから、相続では思わぬ負担が生じることもあります。 大阪市近郊である西宮市に住むCさんのケースでは、次のようなごく普通の住まいについて、相続税の問題が発生してしまいました。 【概要】 <人気の街に建つ自宅>所在地:兵庫県 西宮市面積:500㎡用途地域:第一種住居地域相続税評価…
水戸黄門の「印籠」のように遺言書を活用する方法
土田 士朗
「遺言書」を作成することで不和が生じる場合も!?相続対策として遺言書を作成したとしても、それを必ずしも公表するとは限りません。そもそも、本当に仲の良い家族の場合には、遺言書が不要なことが少なくありません。そのような家族の場合には、兄弟姉妹間でも、「長兄が家業を継ぐのだから、家や土地を相続するのは当たり前」という観念が強く残っていることが多いためです。 むしろ遺言書などを作成してしまうと、「私たちを信用していなかったのか!」といたずらに反感…
悩ましい「借地権付き貸地」の相続に向けた対策とは?
貝原 富美子
契約の見直しや買い取り、返還交渉を実施貸地の問題は解決がとても難しいため、悩みを抱えながらも、「放置するしかない」とあきらめている地主さんも多く見受けられます。しかしながらこの問題を放置していては、巨額の課税負担を子孫にまで残してしまうことになります。困難でも専門家の協力も得ながら、解決に向け根気よく対策を立て実行していきましょう。 借地人との交渉にあたっては、状況に合わせて次の5つの方策を組み合わせて適用することになりますので、参考に…
作成する遺言書は「公正証書遺言」にすべき理由
土田 士朗
自筆証書遺言のようなリスクが存在しない公正証書遺言前回、自筆証書遺言の書き方については、法律で非常に厳格なルールが定められていると説明しました。 ただ、仮にルールに従って遺言書を作成することができたとしても、遺言書の内容が他の相続人、たとえば仲の良くない兄弟姉妹にとって不利益なものであれば、被相続人自身が間違いなく書いたと証明できるわけではないので、「偽造したのではないか」などと不当な言いがかりをつけられるおそれがあります。 一方、公正…
「借地権付きの貸地」を放置することで生まれる相続問題とは?
貝原 富美子
年間収益が60万円ある「貸地」だったが・・・他人が借地権を持つ「貸地」も、相続の際に問題が発生しやすい「負の財産」の有力候補です。問題を多く抱えた貸地は財産と言うより、もはや「不良資産」と呼ぶべきかもしれません。それほど所有する人にとって悩み多き不動産なのです。 筆者がご相談を受けた中にも、これからご紹介するBさんのような事例がありました。 【概要】 <長屋が建つ貸地>所在地:兵庫県 川西市面積:3000㎡ 内訳:一戸あたり20坪(66㎡)×10戸…
ルールに反すれば無効?「自筆証書遺言」の作成方法
土田 士朗
被相続人が複数いる場合には遺言書も複数作成しておく生前に行える相続対策の中では、やはり遺言書が最も重要になります。遺言書の活用方法は、様々な形で考えられますが、ここでは、都市農家の方々が利用する場合を想定して解説していきましょう。 まず、遺言書を作る際に、第一に考えなければならないのは、守らなければいけない財産、すなわち、本家の自宅や農地等の死守する財産をどのようにすれば次世代に残していけるのかということです。 被相続人が父親であるか母…
賃貸用建物を活用した相続税対策に必要となる「時間」とは?
貝原 富美子
「賃貸借契約成立」までには意外に長い時間がかかる相続税対策を行う上で、決断する時期は非常に重要です。タイミングが合わないと、「せっかく対策を行ったのに効果はゼロ」ということもありえます。 連載第2回からご紹介しているAさんのケースでは、信頼できる建設会社からの提案であり、実際に賃貸マンションを建設することになりました。Aさんはそのとき、御年75歳。旦那様には先立たれていたため、お子さま2人が相続人になる予定でした。 相続税を納税した上で、先…
相続対策=資産防衛の観点から持つべき「4つの視点」とは?
土田 士朗
「4つの視点」を知り、そのバランスをとることが重要具体的な相続対策、すなわち「資産防衛策」は、可能な限り早い段階から取り組むことが望ましいでしょう。そして、それを実際に行うにあたっては、次のような4つの視点を持つことが大切です。 1.財産の分割の視点2.節税の視点3.納税の視点4.税務申告・調査の視点 代々受け継いできた資産を防衛するためには、これら4つの視点のバランスが十分にとれていることが求められます。 たとえば、節税ができても財産の分割がで…
賃貸用住宅建築による相続税対策の効果とリスクを判断する方法
貝原 富美子
中・長期の家賃収入を「慎重に」予測する賃貸用住宅建築による相続税対策の効果とリスクをどう判断すべきか、個別に事情が異なるため、単純な判断はできないのですが、迷っている方は次のような点に注意しながら、検討している計画をチェックしてみてください。 ①5年後、10年後など将来の家賃収入について、その額と確実性を見通せていますか。特に建築資金の大半を借入金でまかなう場合は、慎重に中・長期の家賃収入を予測してください。 ②高額の建物ほど、相続税の圧…
「物納」「延納」が困難な時代に求められる相続対策とは?
土田 士朗
「物納」「延納」も制度的に存在するが・・・相続税は現金一時納付が原則となっています。つまり、全額をキャッシュで納めなければなりません。 たまたま不動産需要が高いときに相続が発生して、不動産を購入してくれる人がすぐに現れれば、不動産を売却して相続税納付のための十分な資金を確保することが可能となるでしょうが、そうなる保証はありません。 その場合には、現金による一括納付が困難となるおそれがあります。 ご存じの人もいるでしょうが、相続税について…

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