特集 「会社を売る」という選択肢

「会社を売る」という選択肢

親族内に適切な後継者がいない、赤字が続いてこのままでは廃業&破産を待つのみ・・・・・・様々な理由から「会社を売る」という選択肢を取るオーナー社長が増えている。多くのオーナー社長にとって「会社を売る」というのは初めての経験だが、社長の「最後の仕事」として失敗は絶対に許されない。本特集では、上手に「会社を売る」ためのポイントや具体的な進め方を徹底的に紹介する。

負債ごと売却できたM&A、企業文化を書き換えた事業承継の例
畠 嘉伸
学校法人のM&Aによって億単位の借金から開放前回の続きです。父としては、息子への後継が叶わないこととなりました。そこで、準備は早いに越したことはないと考え、私は父にM&Aを利用して専門学校を売却することを提案し、了承してもらうことができました。 最初に交渉したのが、首都圏で美容関連の専門学校を運営していた会社です。ところが、条件面では厳しいものがありました。まず、自社ビル購入時の借入金を引き継いでもらえず、学校の商号もM&A終了後に変更…
税理士事務所と専門学校の例に見る「承継」と「売却」の実際
畠 嘉伸
親族から打診された専門学校と税理士事務所の承継最後の事例として、私個人がサポートして私の父が売り手になった専門学校の売却、ならびに私自身が譲り受ける立場となって税理士事務所を承継した例をご紹介します。 およそ40年前から個人で税理士事務所を経営していた父は、85年に新たに情報ビジネス関連の専門学校を起こして経営を始めました。当時、北陸の若者の多くは高校卒業後に県外の大学に進学し、就職するのも東京や大阪などの県外中心で、Uターン就職が少なくな…
MBOに不可欠な「資金」「株式の集約」「秘密保持」とは?
畠 嘉伸
十分な期間を設けて「従業員である甥」への承継を準備前回の続きです。オーナー社長の会社には、当時40代の甥が二人働いていました。一人は製造や技術部門を任され、もう一人は販売や営業部門を任されていました。また、事業承継ファンドに買収してもらう交渉の過程で、将来的には甥は十分経営者として二人三脚でやっていける人物と判断。オーナー社長は、甥のことを少し頼りなく感じていたようですが、ファンドとして株式取得後もサポートしていくことを条件に、取締役から…
通常のM&Aが困難なケースで浮上した「MBO」という選択肢
畠 嘉伸
高い利益体質ながら「後継者」が見つからない・・・四つ目の事例として、M&Aの一種であるMBO(従業員への承継)をコンサルティングしたケースを紹介します。 北陸地方で有数の技術力を持った、ある金属加工メーカーがありました。当時70代のオーナー社長から、最初の相談を受けたのが05年末のことでした。その会社は、名前を聞けば誰でも知っている東証1部上場企業と縁が深く、長年にわたって部品を納入していました。売上の過半はその上場企業に依っており、当時年…
M&Aによる地方企業連合で大手の進出に対抗
畠 嘉伸
「守りのためのM&A」で規模のメリットを得る前回の続きです。もうお気付きと思いますが、この持ち株会社を設立して株式交換でM&Aを行うというスキームは、規模のメリットを活かして生き残りを図るというものでした。 化粧品や日用雑貨の卸は、もともとが薄利多売の事業です。大手ならともかく、中堅以下の会社には一般に価格決定権もなく、将来有望とも言いがたいかもしれない状況でした。そして、大手の地方進出という状況もあります。 A~Eの各社は、それぞれの…
各地域の同業5社がM&Aで持ち株会社を設立した理由
畠 嘉伸
各地域に散らばる同業5社が集まって大手に対抗三つ目の事例として、地方ならではのM&Aをご紹介しましょう。 スキームとしては先に紹介した二つの事例よりやや複雑で、地域がまたがる複数の同業の会社が集まって持ち株会社を設立し、元の企業はその持ち株会社の傘下に入って、これまで通りの事業エリアで社名や店名といった商号も維持したまま活動を続けていくというものです。 下記の図表にまとめましたが、2010年に化粧品や日用雑貨を扱う卸業者が5社集まり、αホール…
地方企業同士の「友好的M&A」が成功した理由とは?
畠 嘉伸
営業利益率のアップで自社株の価格も希望額に近づく前回の続きです。営業利益率が飛躍的にアップしたことで、客観的な自社株の価格(つまり売却価格)も2年前の当初の希望金額にほぼ近づきました。 オーナー社長と合意のうえ、M&Aの依頼を正式に受ける契約を交わし、買い手の浮上してきたのが、やはり北陸地方で水産加工食品の製造と卸販売を行っていた会社でした。主に製造していたのは、「乾珍味」といわれる乾き物です。卸のルートでは全国に販売網を有していた会社…
数年後のM&Aを見据え、戦略的に企業価値を高める方法
畠 嘉伸
息子に承継の意志がないことを確認してM&Aを決断今回は、08年に成約を見たM&Aを紹介します。「ビフォーM&A」として、売却までに2年間の準備期間を設け、その間に当社が事業コンサルティングを行うなどして企業価値を高めました。しっかりとした準備がM&Aの成功を引き寄せるという好例です。 売り手となった会社は、北陸地方の水産品加工会社でした。うなぎをはじめとする焼き魚が有名で、地元の人にはそのブランドがよく知られた会社でした。会社を売却したいという相談を…
勝ち組の体験から見る「業界再編時代」のM&Aの成功条件
渡部 恒郎
「買う側ではない。売る側だ」となった理由とは・・・第2回でお話したように、会社のベストの売り時は、各業界が業界再編の波に乗った「成長期」から「成熟期」です。逆にいえば、この時期を逃すと、会社を高値で売却することも、理想の買い手企業に出会うことも、自社に有利な条件を引き出すこともかなり難しくなってきます。 では、このタイミングを逃さないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。業界再編の波に乗り、タイミングを逃さず強者連合に仲間入りを果た…
成功事例で見る「債務超過・後継者不在」会社のM&A
畠 嘉伸
「売れるはずがない」企業だったのに・・・ここからは、筆者が実際に関わって成約を見た5件のM&Aの実例を紹介します。当事者の皆さんのプライバシーを守るため、社名を仮称にしたり人物を匿名扱いしたりしています。それでも、売買の経緯や有した時間などの部分はほぼ忠実に再現しました(成約金額を除く)。 これから複数回に分けてご紹介する実例を読んでいただくことで、「そんな買い手がいるのか」「ウチでも買ってもらえるかもしれない」といった気付きを得ていただけ…
自社にマッチングする「M&Aのタイプ」を見極める方法
畠 嘉伸
どんな企業がどのような目的で自社に興味を示すのか?前回、前々回の連載では、M&Aの四つのタイプ、「水平型」「垂直型」「コングロマリット型」「周辺市場進出型」について紹介してきました。これらは、買い手企業の視点や目的から見た分類です。 翻って、自ら経営する会社をM&Aで売却することを検討しているオーナー社長としては、「自社がどのようなタイプのM&Aにマッチングする可能性があるのか?」を考えてみるのもよいことです。つまり、どのような企業がどのような…
「ポジティブなM&A」による事業承継が急増している理由
渡部 恒郎
中小・中堅企業の3分の2で「後継者がいない」現実業界再編は、あらゆる業界で起こりうることです。しかし、ただ自然現象的に企業の統合が行われていくわけではありません。企業同士が統合・合併するにはM&Aが必要となります。 M&Aとは「Mergers&Acquisitions」の略で、企業のMergers(合併)とAcquisitions(買収)を意味します。2つ以上の企業が合併して1つになったり、ある会社が他社を買収する企業戦略の手法のひとつです。 筆者はM&Aコンサルタントとして、これまで多…
「コングロマリット型」「周辺市場進出型」のM&Aとは何か?
畠 嘉伸
意外な業種が買い手になる「コングロマリット型」前回の続きです。M&Aの三つ目のタイプが、「コングロマリット型」です。平たくいえば、買い手の企業が他業種の企業を買収することで、異業種に進出しようとするものです。  上図表では円の左上の位置に当たりますが、本業のシナジーを表す水平型や垂直型にやや近い(一部かぶっているなど)ケースもあれば、まったく本業からはかけ離れたケースもあります。水平型や垂直型が本業のシナジー効果を見込みやすいのに対して、…
「水平型M&A」「垂直型M&A」とは何か?
畠 嘉伸
M&Aの「マッチング」は大きく四つに分類できる一口にM&Aといっても、マッチングの種類やシナジー効果はさまざまです。ここからM&Aのマッチングについて、 ①水平型M&A②垂直型M&A③コングロマリット型M&A④周辺市場進出型 の、大きな四つのくくりとして分類・整理しておきます。 [図表]買い手企業のM&A 戦略4 分類  同じ業種・業態の企業が買い手になる水平型M&A最初は、図表の①にあたる「水平型」のM&Aです。主に同業種・同業態の中で行われるM&Aです。円の内側は…
地方の中小企業を「売り手」とするM&Aが脚光を浴びる理由
畠 嘉伸
買い手企業から見たM&Aのメリットとは?買い手の会社から見た場合も、M&Aによるメリットがあります。一つは効率よく経営資源を取得できるというメリットです。売り手の会社が持っている技術や人、地域に支持されているサービス・・・。これらを一から作り上げるのには時間と費用がかかります。 M&Aを利用して売り手の会社を買収することで、手間隙をかけずに効率よく欲しいものを手に入れられるわけです。また、M&Aによって買い手の会社のスケールメリットが増すだけでなく…
M&Aが事業承継に悩むオーナー社長の「魔法の杖」になる理由
畠 嘉伸
大企業だけの経営戦略ではないM&A本連載では、M&A(企業の買収・合併)のメリット、実例、実際の手続きとその際の注意点などについてまとめていきたいと思います。 M&Aは、決して大企業だけの経営戦略ではありません。中小企業にとっても、事業承継に悩むオーナー社長にとって救いの手であるばかりか、魔法の杖であるともいえます。ここでご紹介するのは、親族や従業員ではなく、第三者の企業に会社の株式または事業を譲渡し、買い手となる第三者の企業の資本の下で、会社…
専門家チームを動かすワンストップ型M&Aアドバイザーとは?
岡本 雄三
寄せ集めの集団による「隙間」が致命的なミスを生む税理士や弁護士、M&Aコンサルタント、金融機関などに相談すると、それぞれに特化したサポートは受けられますが、いずれも単独では難しいことが分かります。包括的な対応や目線が欠けてしまうからです。 M&Aアドバイザーには、M&Aの経験が豊かで、ワンストップのサービスを行える各種専門家とのネットワークがあることが重要です。複数のアドバイザーを寄せ集めるのではなく、M&Aを最初から最後まで、そしてM&A後までも一…
M&Aの各種専門家——相談先としてのメリット・デメリット
岡本 雄三
多種多様な専門性が問われるM&AM&Aには様々な専門家がいます。たとえば、次のような専門家が一般的には知られています。 M&A支援会社(コンサルタント)売り手・買い手の情報を揃え、様々な場面で支援を行う 税理士事務所、会計事務所納税や資金繰り、顧問先とのマッチングなど幅広くサポート。また、M&A後のサポートも充実している 弁護士事務所契約関係など法務面でのアドバイスを行う 金融機関M&Aで発生する資金需要に対して融資を行う 行政書士企業譲渡に関わる…
書店経営を「やり切った」という思いでM&Aを決断
「経営再建」が社長としての最初の仕事――経営されていた住吉書房さんの沿革と社長就任の経緯について教えてください。片桐 書店経営は昭和46年に先代社長である父が始めた事業です。もともとの家業は蕎麦屋で、先々代が昭和2年に創業しました。昭和24年から25年頃、先代社長がスーパー事業に乗り出し、一時は十数店舗を構えたのですが、大型チェーンの進出攻勢を受けて、何か新しい事業を、ということで始めたのが書店経営というわけです。先代は新しいお店を出すのが大…
地域のインフラとして「事業の灯」を絶対に消してはいけない
地域の消費生活者に欠かせない事業をどう持続するか?――M&Aという方法を選択されたのはなぜですか? 小山田 私には直系の後継者がいませんから、親族内の事業承継という選択肢はありませんでした。第一に考えたのは、鷗文社とビブリが手がける「本」を中心とする事業は、地域の消費生活者にとって欠かせないインフラであり、これは自分が引退するしないにかかわらず永続的に運営し続けなければならない、ということです。そのためには、やはり同様の「本」を中心とする…

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