子どもを伸ばす「しつもん」、子どもを追い詰める詰問・尋問

今回は、子どもの力を伸ばす“しつもん”について、その概要を見ていきます。※本連載は、子どもたちのやる気を引き出し、考える力をはぐくむ"しつもんメンタルトレーニング"を考案したスポーツメンタルコーチ、藤代圭一氏の著書、『スポーツメンタルコーチに学ぶ! 子どものやる気を引き出す7つのしつもん』(旬報社)の中から一部を抜粋し、"質問"で子どものやる気を引き出す指導法を紹介します。

意見の押しつけを「コミュニケーション」とは呼べない

この本では、いくつかの”しつもん”の例を見ていくことで、”しつもん”を使ったコミュニケーション術を説明してきます。”しつもん”について知ってもらうには、実際の指導現場で起きている問題やコミュニケーションのギャップを見ていただくのが一番でしょう。

 

〈例〉――サッカーの試合中、ある選手がパスミスをしました。

 

①なんであのときパスしたの?

②あのパスを出したとき、どんなことを考えていたの?

 

あなたなら①と②どちらに近い言葉をかけるでしょう?

 

これからこの本を通してみなさんにご紹介する”しつもん”は、子どもたちとの会話やコミュニケーションを深め、子どもたち自身が答えを考えるようなきっかけを与えるものです。

 

①の問いかけは、「なぜ?」と理由を聞いていますが、パスをしたこと、そのパスがミスにつながったことをとがめる響きを持っています。指導者の中には、パスミスの瞬間に「なんでパスしたんだ!」とより感情的な言葉を投げかけている人もいるかもしれません。こうした問いかけは、選手に意見を求めているようで、一方的に大人の意見を押しつけることにもなりかねません。

 

「なんであのときパスしたの?」

「すみませんでした」

 

という言葉のやりとりは会話とは呼べません。その後、「理由を言いなさい」や「根拠はなんなの?」と詰め寄っても、選手とコミュニケートしているとは言い難いでしょう。

「どうしたらよかったと思う?」

一方で、②の問いかけは、子ども自身の心の中にしか答えがありません。出てくる答えは、選手の正直な気持ちですから、そのときなにを考えてプレーしていたか、本当はどうしたかったかを知ることができます。

 

指導者や保護者はこの答えを受けて「どうしたらよかったと思う?」と次の”しつもん”で会話を続けることができます。この会話で、ミスの原因を選手自ら追究し、対策法や改善策も自分で考えるきっかけを与えるチャンスを得たわけです。

 

まずはサッカーを例に”しつもん”の効果の一例を見てもらいましたが、こうした”しつもん”が生む、子どもたちとの会話やコミュニケーションは多くのスポーツ、そしてスポーツ以外の習い事や勉強、日常生活でも効果を発揮します。

 

実例で見ていただいたように、「質問」には相手を問い詰めるような”詰問”や取り調べのように問いただす”尋問”、自分の持っている答えに相手を誘導する”誘導尋問”などさまざまな形態があります。

 

しつもんメンタルトレーニングでは、詰問や尋問、誘導尋問と、正しく相手の心を引き出す”しつもん”を分けて考えます。ひらがなの”しつもん”は、後者とすることを本書の中での定義とさせてください。

良い“しつもん”が子どものやる気を引き出す

”しつもん”という方法、そしてその考え方や価値観に触れることで、大きく変わったのは、子どもたちへの接し方だけではありません。こうしてしつもんメンタルトレーニングを本にまとめる機会をいただいて改めて考えたことは、「もしかしたら、いちばん変わったのは私自身なのかもしれないなぁ」ということです。

 

もっとも大きな変化は「わからないことが楽しくなった!」ことです。

 

ごく普通の家庭に育ち、普通に遊んで、勉強して、サッカーを続けてきた私は、ごくごく普通に「わからないことは恥ずかしいこと、わかっていることが良いこと」という価値観を持って育ちました。テストで解答が出せないこと、聞かれたことに答えられない自分を責め、恥ずかしいと思って生きてきたのですが、”しつもん”に出会ってからは、わからないことがあっても、恥ずかしがるより先に「知りたい!」という好奇心が湧き上がってくるようになりました。

 

師匠であるマツダミヒロさんのカバン持ちをしていたとき、ミヒロさんは私に「ああしろ、こうしろ」と指示を与えてくれませんでした。

 

一日の終わりに必ず「今日はどうだった?」と私に問いかけるだけ。なにをどう答えていいかわからず、はじめのうちは戸惑いましたが、徐々にその問いかけに自分なりの振り返りで答え、会話を重ねる中で次の準備ができるようになったのです。

 

今日の会はラフな会だったからいつもの服装で済んだ。浮いてなかったよな?でも明日はどんな会だろう?

「ミヒロさん、明日はどんな会ですか?ドレスコードなどはありますか?」

 

毎日投げかけられる”しつもん”に答えることで、自然に自分で考えてミヒロさんとの会話を深めていく努力をするようになっていったのです。

 

本書籍『スポーツメンタルコーチに学ぶ! 子どものやる気を引き出す7つのしつもん』は、読者であるみなさんにも七つの”しつもん”をします。そして、それに答えてもらうことで、子どもたちを輝かせる「しつもん力」を身に付けられる構成としています。

 

良い”しつもん”には、子どもたちの

 

魅力を引き出す力

やる気を引き出す力

本来持っている力を引き出す力

あなたと子どもたちのコミュニケーションを円滑にする力

 

があります。

 

その子がいちばん輝ける未来のために、ぜひ、しつもんを役立ててください。

「その他」この記事を読んだ方はこんな記事も読んでいます

「教育」この記事を読んだ方はこんな記事も読んでいます

連載スポーツメンタルコーチ直伝! 「しつもん」で子どものやる気を引き出す指導術

メンタルトレーニング代表 メンタルコーチ

1984年名古屋市生まれ。東京都町田市で育つ。スポーツスクールのコーチとして活動後、教えるのではなく問いかけることで子どもたちのやる気を引き出し、考える力をはぐくむ〝しつもんメンタルトレーニング〟を考案。

日本女子フットサルリーグ優勝チーム、インターハイ(サッカー)出場チームをはじめ、全国優勝から地域で1勝を目指すチームまで、さまざまなスポーツジャンルのメンタルコーチをつとめる。

全国各地のスポーツチームや学校教育の現場などでワークショップを開催し、スポーツ指導者、保護者、教育関係者から「子どもたちが変わった」と高い評価を得ている。

ビジョンは「1人でも多くの子どもたち・選手が、その子らしく輝く世の中をめざして」。

著者紹介

スポーツメンタルコーチに学ぶ! 子どものやる気を引き出す7つのしつもん

スポーツメンタルコーチに学ぶ! 子どものやる気を引き出す7つのしつもん

藤代 圭一

旬報社

サッカーや野球といったスポーツに限らず、習い事や勉強など、子どもたちのやる気を引き出すのは難しい・・・。 「どうしたら、子どもたちがやる気を出してくれるんだろう?」 実はこれは、数年前までスポーツ指導の現場…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧