今回は、会計ソフトによる「電子保存」が企業にもたらすメリットと課題について見ていきます。※本連載は、アアクス堂上税理士事務所の代表税理士で行政書士の堂上孝生氏の著書、『ベテラン税理士だけが知っている自動経理の成功パターン』(合同フォレスト)から内容を一部抜粋し、小規模企業の経理の悩みを解決する、クラウド会計ソフトによる「自動経理」について説明します。

紙ベースの「経理帳簿」等の保存が不要に

スキャナで読み取られた領収書等は、自動仕訳され、同時に、電子帳簿保存法に則してイメージ(PDF情報)が「電子保存」されます。経理帳簿である総勘定元帳や決算書等の経理帳簿は、もともと会計ソフトの中で「電子保存」されているので、いつでも出力できれば適法な「電子帳簿保存」ということになっています。

 

電子保存が認められたおかげで、紙ベースの「経理帳簿」や「経理の証拠書類」の保存は不要となりました。これはじつは、小規模企業の経営管理上、大きなメリットです。誰も見ない帳簿・証拠書類を会社法・税法の縛りで7年とか10年とか、保存しなければならないのは苦痛です。

 

その経営上の苦痛から解放してくれるのが、クラウド会計ソフトです。さまざまなメーカーが提供していますが、ここでは代表的なものとして、freeeを例に挙げて説明していきます。

素人でも処理できるため、間違いが起こる確率は高い

自動経理により「経理は素人化」しましたが、自動仕訳した段階の「総勘定元帳」や「試算表」では、素人が処理した経理帳簿ですから、間違いが起こる確率は高いです。

 

そのためかどうか分かりませんが、freeeは会計ソフト内に、「freee認定アドバイザー」として税理士や会計事務所の紹介欄が設けられ、税理士関与を積極的に奨励しています。

 

顧問税理士にとって、お客様に対する会計責任は相当に重いといえます。税理士は「特別に経理知識をもった専門家」と位置付けられていますから、経理検査しないなど許されることではありません。

 

たとえば、裁判でその非が指摘されれば、税理士は当然に「敗訴」し、損害賠償やときとして刑法罰が科せられることもあり得ます。税理士の「忠実義務」「助言義務」「善管注意義務」、お客様の不正に対する「注意義務」は、法理(法律上の常識)として、報酬の有無にかかわらず、職能として課せられた社会的な義務と考えられています。

 

freee社の認定アドバイザー制度は「税務会計ソフトは、便利なクラウド会計ソフトを安価に提供します。しかしクラウド会計ソフトの運用に関しては、職能的に税理士にお願いするように」というメッセージが筆者には感じられるのです。

 

会計ソフトfreee内にわざわざ「顧問税理士」の名前を記載させる欄があるのですから、「経理は税理士に頼みましょう」と暗に言っているわけです。

 

筆者の事務所では「経理検査」「決算監査(簡易監査)」は当然の義務として、freeeのユーザーには無料で対応しています。自動経理で「経理の素人化」が分かっているのに、「経理の検査・監査」をしないのは、やはり「専門家の倫理」を逸脱していることになるからです。

融資審査を迅速に進める画期的なサービスも

「会計情報を銀行と直接結ぶことで、融資審査が迅速に進む」という画期的なサービスが既に始まっています。これは、メガバンクおよびいくつかの革新的な信用金庫と、freee社の提携サービスです。

 

このサービスは個人情報として、銀行に会計情報が筒抜けになるのが嫌な方には向きません。ただ、厳格な守秘義務で知られる銀行に企業情報が洩れても、小規模企業にとって実害はほとんどないと思います。ですから、これは経営判断の問題です。

 

ただ、融資審査がいつでもできると、銀行にとってあなたの企業は、信頼できる取引相手ということになります。経営がオープンになるからです。ですから、やらない手はありません。

ベテラン税理士だけが知っている 自動経理の成功パターン

ベテラン税理士だけが知っている 自動経理の成功パターン

堂上 孝生

合同フォレスト

freee株式会社代表取締役社長 佐々木大輔氏推薦! 業務負担増、人材不足、人件費の経営圧…。小規模企業の経理の悩みは、クラウド会計ソフトで解決できます! 小規模企業の悩みの種である「経理」業務をいかに効率的に行い、…

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