日本との比較で見る「米国西海岸州」のアパート融資の特徴

一口に米国不動産投資といっても、地域によって法律や仕組みが大きく異なってきます。今回は、「米国西海岸州」における日本人向けアパート融資の特徴について見ていきましょう。

人ではなく物に貸すという考えが浸透している西海岸州

今回は、日本とカリフォルニア州を含めた米国西海岸州における、日本人向けアパート融資に対する金融機関の対応について比較します。

 

結論から先に申し上げれば、大きな違いは、

 

①金利・返済スケジュール等の融資条件面

②不払発生・担保処分後の不足金請求の有無

 

にあると言えます。

 

まずは、後者の②から見ていきましょう。

 

ちょうど1年前に掲載した第14回で、米国における融資制度について触れていますが、米国西海岸州については、不払い(返済滞納)が起こったあとの金融機関による担保処分後の不足金請求が、法的に省略される仕組みになっています。

 

債務者本人あるいはスポンサー主体のSPC(LLCとするケースがほとんどで、スポンサーが保証人となる)が債務者となっているケースでは、たとえ債務者あるいは保証人に担保以外の資産に余力がある場合でも、裁判所を経ない形での担保処分が行われると不足金請求が行えないことになっています。

 

スポンサー側からすると、不足金を追加で返済する義務は存在しません。つまり、実質ノンリコース・ローンになると言えるでしょう。

 

逆に言えば、スポンサーの資力を審査・そのリスクを取るというより、物件(から上がるキャッシュフロー)のみで、どの程度ローン返済能力があるかどうかを判断しリスクを取ることになるのです。米国西海岸ではアパート向け商業ローンは人に貸すのではなく、物に貸すという考え方が浸透しています。

アパート向け商業ローンの金利・手数料は・・・

次に、①の条件面について見ていきましょう。上記のような諸々の事情(リスク度合いの差)が、アパート向け商業ローンの条件面に表れています。

 

つまり米国西海岸では、アパート向け商業ローンはある種ハイリスクに分類されるとの認識から、通常の企業向け融資に比べ、金利・手数料で割高になっています。債務者の資力に依存する住宅ローンに比べると金利が1〜2%程度高く、アパート向け商業ローンのローンスプレッドだと約3%前後と言えるでしょう。

 

また利息以外に、ローン手数料も、0.5〜1%程度は通常のこととして金融機関に要求されます(筆者がユニオンバンク駐在時代担当していた、よりリスクの高い非日系デベ向け建設ローン引受では、ローン手数料以外にローンスプレッドが通常4〜5%という水準でした)。

 

一般の商業銀行は、ローン引受後政府系金融機関(ファニーメイ等)にローン債権を売却しますので、ファニーメイ等の引受条件がある種引受基準となっています。

 

ファニーメイは米国内居住者向けに限定していますが、ご参考までに、ファニーメイにおける小規模アパート向けローン引受基準を以下に記します。

 

融資期間:5〜30年

約弁スケジュール:30年(米国ではアパート築年に関わらず30年となる)

最大LTV:80% → 50-60%

最低DSCR:1.25x → 1.40x

担保物件:5戸以上の安定期にある共同住宅

 

赤字は、非居住者向けローンプログラムのある金融機関の引受条件です。一般的には、非居住者向けアパートローンは居住者向け条件よりも厳しくなっています。

 

一方、日本ではどうかというと、個人あるいは小規模事業主が借りるアパート向けローンのレベルでいくと、必ずスポンサーの連帯保証人か本人が債務者となり、ローンスプレッドはその個人あるいはスポンサーの資力に依存することになります。

 

当然のことながら、ローン不払いが起こった場合には貸し手は担保以外の個人資産等の手段提供で不足金を請求できます。したがって、一般的には個人資力によるところでローンスプレッドが1〜3%と様々です(一方、ローン手数料は数万円)。

 

また、約定弁済スケジュールは建物の法定償却年数から築年を引いた残存期間をベースとして一般的に設定されます。木造新築であればフルに22年+αの約弁となりますが、米国のように築年が何年であれ30年というわけにはいきません。

 

日本では税法上の法定年数が実際の耐用年数と一致しているようです。米国では50〜100年築がザラで長持ちしていますが、日本では建物は年数が経つと実際もつかどうかにかかわらず価値がなくなります。

 

したがって、資力のある個人(富裕層)は日本では低い金利を享受できるので、比較的新しい建物付き不動産であれば、十分にイールドスプレッドを取れることになります。

 

また、日本では担保評価がデットカバレッジレシオ(DSCR)ベースでローン残高を決めず、積算ベースで不動産価値を算出するような金融機関があるので、一切自己資金を使わないフルローンも可能となります。

 

大企業・機関投資家・REIT・外資ファンド等はノンリコースを享受できる上に、ローンスプレッドも破格の低さとなる最近の金融機関の現在の融資積極姿勢から、日本の不動産が安全・安定的かどうかとは別として、スポンサーが取るべきリスクは少なくイールドギャップを取りやすい環境にあるわけです。

 

正確に同じとは言えないかもしれませんが、あたかもバブル時代一世を風靡した、特金ファントラ向けバックファイナンスのようです。

不動産金融マンが言う「ローン・コンスタント」とは?

それでは、最後に不動産金融マンがよく使う「ローン・コンスタント(ローン定数とも言う)」という考え方について披露して終わりにしましょう。

 

一言でいうと、ローン元本に占める、約弁スケジュールを含めたデットサービスの比率です。物件利回りとの比較でレバレッジが効いているかどうかの目安となります。「ローン・コンスタント<物件利回り」であればレバが効いている。逆に「ローン・コンスタント>物件利回り」であれば逆レバ状況となっています。

 

下の表は、融資金利水準と約弁スケジュールによるローン・コンスタントの関係です。

 

 

これから分かることは、金利水準よりも約定弁済スケジュールの長さがローン・コンスタントに与える影響が大きいということです。要するに、金融機関から良い条件を引き出すためには、金利水準を引き下げるよりも約定弁済スケジュールをできるだけ長くする交渉が重要と言えます。

 

米国では家賃成長が享受できますので、たとえ入り口のキャップレートが低くても、毎年キャッシュフロー(物件利回り)が成長します。ローン・コンスタント逓減効果があり、レバレッジが翌年度以降強まることとなりますが、日本の場合にはキャッシュフローが減少する物件もあるでしょうから注意が必要です。

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連載集積するイノベーション産業と頭脳――米国シリコンバレー不動産投資の最新事情

クラウドクレジット株式会社 商品部 商品組成担当マネージャー

北海道出身、一橋大学経済学部卒業。UCLA不動産関連科目履修。
東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)開発金融部海外不動産グループ(米国担当2年半)、ユニオンバンク(7年加州駐在)にて、不動産を中心とした開発金融・アドバイザリー業務を経験。2000年に退職後、ローンスターファンド・ラサールインベストメント等の外資系投資ファンド・日系投資会社、ブルックス・グループで、不良債権・再生・不動産・未公開企業等のオルタナ投融資の実績と経験。2017年7月より、クラウドクレジット商品部にてソーシャルレンディング関連販売ファンド組成業務に就き、現在に至る。

著者紹介

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