今回は、契約書の内容は「隅々まで」確認すべき理由を見ていきます。※本連載は、新日本パートナーズ法律事務所の代表弁護士・初澤寛成氏と、TH総合法律事務所の弁護士・大久保映貴氏による共著、『会社を守る!社長だったら知っておくべきビジネス法務』(翔泳社)の中から一部を抜粋し、経営陣が知っておくべきビジネス関連の法律知識の基本と、会社を取り巻くトラブルへの対応策、および予防法務について説明します。

「契約書はあればよい」という意識を持っていないか?

<事例>
当社は、誰もが知っているような有名企業と取引することになりました。当社としては、今後の事業展開を見据えますと、取引をしないというのは考えにくいのですが、取引を開始するにあたり、先方所定の契約書での締結を求められています。

しかし、小難しい言葉や専門的な用語が多く、内容がよくわかりません。当社に不利な内容が書かれているのではないか、想定外のことが書かれているのではないかと不安です。このような場合、どのような点に注意すればいいでしょうか?

 

 

「契約の相手から出された契約書にそのままサインしている」「作っておかないとまずそうだからなんとなく契約書を作っている」「ひな形を使い回している」・・・そんな会社も多いのではないでしょうか。しかし、それではせっかくの契約書の意味がありません。

 

大手企業とは契約書を作らないと取引できないから、中身も見ずにサインしてしまう方や、とりあえずざっと目を通しておくという方がいらっしゃいます。そういう方達に共通しているのが、「うちの会社はトラブルになったことがないから大丈夫」という認識です。また、こちらの希望を伝えても、契約書を修正してもらえないという思いもあるようです。

 

しかし、契約書がもとで、思わぬ落とし穴にはまることがあります。納品物でトラブルになったり、多額の賠償金を負ったりという会社が多数あるのです。さらにいえば、賠償金をせしめる等、気づかないうちに悪意をもった契約書にサインさせられているということもあるかもしれません。相手に「契約書に書いてあるでしょ」といわれて、「読んでいません」というのは通用しません。

 

このようなことを防ぐためにも、「うちは大丈夫」「契約書はあればよい」という意識ではなく、まずは、契約書を隅々まで確認するようにしましょう。

「曖昧な内容の契約書」はすぐに修正依頼を

契約書は、当事者が拘束される内容を明確にするとともに、将来万が一紛争となった場合には、紛争を解決するための基準を示す証拠となるものです。小難しい言葉や専門用語が多いから、修正の希望が通らないからといって契約書を理解しないと、拘束される内容や紛争となった場合の見通しが立たず困ってしまいます。

 

冒頭の事例の場合、先方から提示された契約書案を読んでみて、曖昧に使用されている語句はないか、趣旨のわからない文章はないか、法律上の意味がわからないところはないか等、まずは内容を確認してみましょう。

 

相手方が有名企業でも、読んでみると、似たような取引で使われている契約書のひな形を当事者に関する部分だけ修正し、提示してくる、というのはよくあることです。

 

このような曖昧な内容の契約書は、できる限り具体的、かつ明確にするようにしましょう。曖昧な語句や趣旨がわからない文章については、相手方担当者とよく擦り合わせを行う。専門的な用語や法律上の意味・効果がわからないところがある場合には、弁護士等の専門家に相談する。

 

このように、契約書の内容を理解することで、将来の見通しを立てることができるのです。確かに、取引先企業によっては、修正の希望が通らないかもしれません。しかし、契約書の内容を理解しておくことで、万が一の賠償責任等、取引上のリスクを把握することができ、非常に有益です。

 

<当事者間できちんと共通認識となっていますか?>

 

契約書を隅々まで読んで、具体的な内容に修正し、曖昧な部分をなくしました。過不足はありません。よし、これでOKと思っても、まだ注意しなければならないことがあります。それが、業界の独自のルールであったり、独自の用語だったりします。

 

同じ業界内での「元請け」「下請け」というような場合であれば、業界のルール・慣習や業界独自の用語の意味について、共通認識となっているので大丈夫でしょう。しかし、業界外の会社と取引をするような場合や個人と取引をする場合等は、共通認識となっていないことがあるので注意が必要です。

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