金融庁も本腰・・・フィデューシャリー・デューティーの概要

前回は、鉄道・航空産業などを投資対象とする「インフラファンド」について解説しました。今回は、「フィデューシャリー・デューティー」の概要を見ていきます。

基本的な意味は「受託者が負う義務」

「フィデューシャリー・デューティー」という言葉を最近、新聞や経済紙などでよく目にします。あまり馴染みのない、しかし、日本の金融に携わる会社、従事者には、大変重要な言葉です。「フィデューシャリー・デューティー」とは、受託者(他人から信頼を受けて職務を遂行する人)が負う義務(デューティー)のことです。

 

今回は、「フィデューシャリー・デューティー」が、いつ頃から言われ始め、どのような議論を経て、金融庁から「顧客本位の業務運営に関する原則(案)」として公表されたのかを見ていきます。

 

この言葉が、広く知られるようになったのは、金融庁が2014年9月に公表した「平成26事務年度金融モニタリング基本方針」において「資産運用の高度化」という重点施策の中で、「商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関がその役割・責任(フィデューシャリー・デューティー)を実際に果たすことが求められる」と指摘したことが挙げられます。ちなみに、その文章中での「フィデューシャリー・デューティー」の注釈は、「他者の信認を得て、一定の任務を遂行すべき者が負っている幅広い様々な役割・責任の総称」となっています。

 

「資産運用の高度化」という重点施策の中で、「フィデューシャリー・デューティー」が用いられたのは、金融機関が自主的に資産運用のあり方を改革し、資本市場を活性化させることを期待したあらわれと考えられます。

 

2015年9月の「平成27事務年度金融行政方針」では、投資信託・貯蓄性保険商品等の商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関等が、真に顧客のために行動しているかを検証するとともに、この分野における民間の自主的な取組みを支援することで、フィデューシャリー・デューティーの徹底を図るとし、促進すべき取組みとして、以下のようなことを挙げました。


●投資運用業者:系列販売会社との間の適切な経営の独立性の確保、顧客の利益に適う商品の組成・運用等


●保険会社:顧客のニーズや利益に真に適う商品の提供等


●販売会社:顧客本位の販売商品の選定、顧客本位の経営姿勢と整合的な業績評価、商品のリスク特性や各種手数料の透明性の向上、これらを通じた顧客との間の利益相反や情報の非対称性の排除等

 

さらに、議論に拍車をかけたのが、2016年6月「日本再興戦略2016」において活力ある金融・資本市場の実現に向けて新たに講ずべき具体的施策として「フィデューシャリー・デューティーの徹底」が揚げられたことです。


●商品開発・販売・運用・資産管理といった顧客の資産形成に携わる全ての業者において、フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の徹底が図られるよう、必要な対応について、金融審議会において検討を行う。


●顧客のニーズや利益に真に適う商品の提供の観点から、投資信託や貯蓄性保険などのリスク性商品にかかる手数料の透明化・適切化に向けた取組を進める。

 

これまでは、金融庁は「フィデューシャリー・デューティー」と言う言葉を主に使っていましたが、「日本再興戦略2016」から「顧客本位の業務運営」に集約されていきました。

資金提供者・受益者の利益を第一に考えた業務運営を

2016年10月の「平成28事務年度金融行政方針」では、金融機関等に対する取組みとして「金融機関等による「顧客本位の業務運営」(フィデューシャリー・デューティー)の確立と定着」が課題であると指摘しています。この中で注目されるのが、フィデューシャリー・デューティーに「顧客本位の業務運営」との定義を与え、「金融機関等が、当局に目を向けるのではなく、顧客と向き合い、各社横並びではない主体的で多様な創意工夫を通じて、顧客に各種の情報を分かりやすく提供するなど、顧客の利益に適う金融商品・サービスを提供するためのベスト・プラクティスを不断に追求することが求められる。」と説明しています。

 

また、「フィデューシャリー・デューティーの概念は、しばしば、信託契約等に基づく受託者が負うべき義務を指すものとして用いられてきたが、近時ではより広く、他者の信任に応えるべく一定の任務を遂行する者が負うべき幅広い様々な役割・責任の総称として用いる動きが広がっており、我が国においてもこうした動きを広く定着・浸透させていくことが必要である。すなわち、金融商品の販売、助言、商品開発、資産管理、運用等のインベストメ ント・チェーンに含まれる全ての金融機関等において、顧客本位の業務運営(最終的な資 金提供者・受益者の利益を第一に考えた業務運営)を行うべきとのプリンシプルが共有され、実行されていく必要がある。」と説明しています。

 

ここでは、「顧客本位の業務運営」は、具体的には「最終的な資金提供者・受益者の利益を第一に考えた業務運営」としています。これにより、金融庁がフィデューシャリー・デューティーに込めた意味が明確になりました。そして金融庁は、金融審議会市場ワーキング・グループが2016年12月22日付で公表した報告(~国民の安定的な資産形成に向けた取組みと市場・取引所を巡る制度整備について~)に基づき、「顧客本位の業務運営」を実現するために、「顧客本位の業務運営に関する原則(案)」を今年1月19日に公表しました。

 

時間をかけ、いろいろな議論を経て、「顧客本位の業務運営に関する原則(案)」が公表されたことがお分かり頂けたと思います。次回から、日本版フィデューシャリー・デューティーが、海外のルールとの相違点やその内容について解説していきます。

本連載は、一般的な投資信託の仕組みなどを紹介することを目的にしています。投資を促したり、筆者が所属する「幻冬舎アセットマネジメント」に勧誘することを目的としたものではありません。また、投資にはリスクがあります。リスクに十分に考慮をして、投資判断を行ってください。本連載の内容に関して投資した結果につきましては、著者及び幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。

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幻冬舎アセットマネジメント 事業開発室 室長

1984年、日興証券(現SMBC日興証券)入社。個人富裕層向けの資産運用アドバイス、外資系金融機関への機関投資家営業ののち、投資開発部、ファンドマーケティング部でデリバティブ商品、投資信託業務に従事。
2001年からは三菱UFJ証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)で商品開発本部に所属し、銀証連携により企業オーナー、個人富裕層に対しての商品企画、販売プロモーションを経験。
2011年、バークレイズ・ウェルス・サービシズに移り、日系メガバンクとのプライベートバンキング事業立ち上げに参加。プライベートバンカーとして、資産5億円以上の富裕層顧客に資産のコンサルティング業務を行う。
2017年1月から現職。これまでの経験を生かし、金融機関とは一線を画し、企業オーナー、富裕層の財産を守る為に、公正、中立な情報の提供を心がけている。

著者紹介

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