自分の売りたい範囲を選んで売却できる「事業譲渡」

前回に引き続き、中小企業においてポピュラーなM&Aスキームを紹介します。今回は、「事業譲渡」について見ていきます。

黒字部門だけを売却することも可能な事業譲渡

前回の続きです。「株式譲渡」に続く、2つ目のスキームについてです。

 

スキーム②・・・ 事業の売却範囲を選んで売る「事業譲渡」

自分の売りたい範囲を選んで売却する事業譲渡では、たとえば、赤字部門は清算し黒字部門のみ売却するといったような選択ができます。赤字部門があることで買い手が付きにくかったり、売却金額が安くなったりするよりは、それらを清算して黒字部門だけを売りに出したほうが有利になるからです。

 

事業譲渡では、会社の保有する財産および営業権の部分売りをします。そのため、個別の財産譲渡として処理しなくてはなりません。消費税については、資産ごとに課税・非課税を判定します。

 

売り手側の税務としては、事業譲渡の対価を法人の所得に組み込んで、法人税を計算します。対価が社長個人に入るのではなく、法人に入る点がポイントです。

 

買い手側の税務としては、譲り受けた資産・負債の個別の時価をもって帳簿価額を決定します。このとき、資産・負債の時価合計額と、事業譲渡で支払った対価が異なることがあります。差額については、税務上、資産調整勘定もしくは負債調整勘定として処理します。

「売り手」「買い手」のメリット・デメリットとは?

事業譲渡によるメリットとデメリットは、次のとおりです。

 

【売り手】

★メリット

●事業の一部だけを譲渡することができる

●譲渡代金を獲得できる

●株主総会の特別決議が必要で、上場企業ではかなりのコストがかかるが、中小企業ではそれほど大きな負担にはならない

 

★デメリット

●株式譲渡と違って会社そのものが変わるため、従業員や取引先との契約はすべて新しい会社でやり直しとなる(従業員や取引先を守れない可能性がある)

●譲渡益について法人税が課税される

●事業を清算する場合、株主への配当に所得税

●住民税が課税される

●消費税の課税対象となる

 

【買い手】

★メリット

●株式譲渡と比べ買収資金を抑えることができる場合が多い

●既存企業のマイナス部分(簿外債務や訴訟トラブル、見えない労務リスクなど)を引き継がなくて済む

●組織的一体運営を図ることができるので、スケールメリットやその他のシナジー効果を享受しやすい

 

★デメリット

●許認可の再取得や商号の変更が必要になる

●就業規則、給与テーブルなどの統合を行う必要がある

●契約や債権債務は、個別に移転手続きが必要になる

本連載は、2015年9月25日刊行の書籍『後継ぎがいない会社を圧倒的な高値で売る方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載後継ぎがいない会社を圧倒的な高値で売る方法

岡本雄三税理士事務所 代表
株式会社MARKコンサルタンツ 代表 

岡本雄三税理士事務所代表。株式会社MARKコンサルタンツ代表。税理士、行政書士、宅地建物取引士、M&Aシニアエキスパート、経済産業省認定経営革新等支援機関。1967年生まれ。1991年、早稲田大学商学部卒業。1998年、岡本雄三税理士事務所開設。2000年、公益社団法人日本医業経営コンサルタント登録。個人医院の開業、医療法人の設立、税務など、医業コンサルティング業務のほか、一般法人の税務、事業承継、M&A支援、資産税にかかわるコンサルティング業務を手掛ける。

著者紹介

後継ぎがいない会社を 圧倒的な高値で売る方法

後継ぎがいない会社を 圧倒的な高値で売る方法

岡本 雄三

幻冬舎メディアコンサルティング

「後継者がいない」「後継者がいても継がせたくない」そう悩む中小企業経営者が増えています。しかし、廃業となると、経営者自身の連帯保証の問題や従業員の生活の保証、取引先への影響などもあるため、なかなか踏み切るのは難…

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