その他 事業再生 事業承継
連載引き継いだ赤字企業の「再生」術【第9回】

「事業譲渡」「新設分割」で別会社を設立する方法

事業譲渡取締役会決議特別決議分割会社新設分割

「事業譲渡」「新設分割」で別会社を設立する方法

前回は、別会社を使った事業再生スキームについて留意点等を説明しました。今回は、「事業譲渡」「新設分割」による別会社設立の進め方や効果について、具体的に見ていきましょう。

取締役会の有無によって事業譲渡の手続きは異なる

別会社を設立する方法としては、事業譲渡、新設分割、吸収分割の三つがあります。今回は、二つの方法について解説します。

 

最初は、事業譲渡の進め方から見ていきましょう。事業譲渡については、事業を譲り渡す会社(元の会社)、譲り受ける会社(別会社)双方において、会社法で定められている手続きを行わなければなりません。

 

また、事業譲渡で求められる手続きは、第一に取締役会が設けられているか否かによって異なります。すなわち、取締役会の設けられている会社(取締役会設置会社)の場合には、事業譲渡を行うために取締役会決議が必要となります。

 

さらに、株主保護の観点から、原則として株主総会の承認を受けることが義務づけられています。この承認決議は、特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席して、3分の2以上の賛成があること)によることが求められています。

 

一方、事業を譲り受ける会社のほうでも、取締役会設置会社の場合には、取締役会決議が必要です。さらに事業の全部を譲り受ける場合には、原則として株主総会の承認を要します。この承認決議についても特別決議が必要とされています。事業を譲渡する会社、譲り受ける会社いずれにおいても、株主総会決議に反対した株主には株式を買い取るよう求める権利(株式買取請求権)が認められます。

 

余談ですが、私どもが、営業権譲渡のためにこれらの特別決議を行おうとした際に、債権者の中である信託銀行だけは、株主総会で反対する姿勢を示してきました。そこで、総会当日は、弁護士、公認会計士に別室に待機してもらい、株主から何らかの質問や異議があればすぐに対応できるような態勢を整えました。しかし結局のところ、全く質問はなく、総会で反対したのもその信託銀行のみだったため、問題なく決議が行われ、無事に営業権譲渡が認められる運びとなったのです。

新設分割では「分割計画」を作成する

続いて新設分割の進め方について説明です。まず、分割会社が取締役会設置会社の場合には、取締役会の決議に基づき、取締役会非設置会社(取締役会のない会社)の場合には、取締役の決定に基づいて、法定決定事項を記載した分割計画を作成します。

 

法定決定事項の内容は以下の通りです。
①設立会社の目的・商号等
②その他定款で定める事項
③設立時取締役
④設立時のその他役員等
⑤承継される資産等
⑥新設会社の交付する株式等
⑦新設会社の新株予約権の交付等・新設会社株式の交付

 

また、分割会社は、株主および債権者に対して新設分割に関する情報開示を行わなければなりません。具体的には、新設分割計画の内容、分割対価の相当性に関する事項、分割会社及び設立会社のそれぞれにおける債務の履行の見込みに関する事項等を記載した書面または記録した電磁的記録を本店に備え置かなければなりません。

 

分割会社の株主及び債権者は、備え置かれた書面または電磁的記録について閲覧請求及び謄本抄本交付請求を行うことができます。さらに、分割会社の株主総会において、特別決議により新設分割計画の承認を行います。事業譲渡と同様、分割に反対する少数株主には株式買取請求権が認められています。

 

なお、分割会社は、所定の債権者に対して異議を述べる機会を与えるなど債権者保護手続きを行わなければなりません。最終的には、設立会社の本店所在地において設立の登記がなされた時に分割の効力が生じます。

 

分割会社及び設立会社は、新設分割の効力発生日後遅滞なく、設立会社が承継した権利義務及びその他の重要な事項を記載した書面または記録した電磁的記録を作成し、効力発生日後6か月間、本店に備え置かなければなりません。株主、債権者およびその他の利害関係人は、備え置かれた書面または電磁的記録について閲覧請求と謄本抄本交付請求を行うことができます。

本連載は、2014年10月25日刊行の書籍『引き継いだ赤字企業を別会社を使って再生する方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

高山 義章

株式会社スペース 代表取締役兼CEO

1954年東京都生まれ。三井不動産販売退職後、祖父が大正12年に中野で創業した「山一不動産」の3代目に就任。バブル崩壊とともに300億円の負債を背負いながら、事業再生に奔走する。1996年「スペース」を創設し、「山一不動産」の営業権譲渡を行うことで、先代からの基盤を守り、社員を切り捨てることなく事業再生させた。現在はこの時の自身の経験を元に、同じような悩みを抱える中小企業経営者の相談に乗り、専門家チームのメンバーとして、ボランティアでアドバイザーも務めている。中野区観光協会準備会メンバー。一般社団法人中野区観光協会監事。

著者紹介

連載引き継いだ赤字企業の「再生」術

引き継いだ赤字企業を別会社を使って再生する方法

引き継いだ赤字企業を別会社を使って再生する方法

高山 義章

幻冬舎MC

中小企業の資金繰り悪化の対応策として時限立法として成立した法案、「金融円滑化法」が終了した。現在のところ、これにより目立った動きはないものの、この先いつ債権者が債権処理に動き出してもおかしくはない。そうなれば日…

Special Feature

2016.12

「法人保険」活用バイブル<書籍刊行>

決算対策、相続・事業承継、財産移転・・・企業とオーナー社長のさまざまな課題解決に、絶大な効果を発揮する「法人保険」の活用…

GGO編集部(保険取材班)

[連載]オーナー社長のための「法人保険」活用バイブル~決算対策編

【第19回】保険のための医的診査 結果が「少し悪い」ほうが社長が喜ぶ理由

GTAC(吉永 秀史)

[連載]法人保険を活用した資産移転の節税スキーム

【第15回】「逆ハーフタックスプラン」活用時の留意点

Seminar information

不動産活用セミナーのご案内

償却メリットを狙った「京都の町家」投資の魅力

~建物比率5割超&4年で減価償却も可能!独自の不動産マーケットを形成する京町家だから実現する投資法

日時 2016年12月10日(土)
講師 平野準

海外不動産セミナーのご案内

償却メリットにフォーカスした「ハワイ不動産」投資の最新事情

~築古木造のタウンハウスで建物比率80%以上。「ハワイの償却物件」の実際と活用法

日時 2016年12月10日(土)
講師 大橋 登

海外活用セミナーのご案内

国際金融都市「香港」で始めるグローバル資産防衛

~本格的な海外投資環境を整えるメリットと現地の最新金融事情

日時 2016年12月10日(土)
講師 長谷川建一

The Latest