今回は、広告・メディア産業を脅かすグーグルのビジネスモデルを見ていきます。※本連載は、シーオス株式会社の代表取締役・松島聡氏の著書、『UXの時代――IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか 』(英治出版)の中から一部を抜粋し、AIやIoTなどテクノロジーの進化によって大変革期を迎えている経済・産業の今とこれからについて解説します。

人や企業に「水平にコミュニケート」する場を提供

グーグルはネット検索を軸として、世の中の膨大なコミュニケーションから収益を得るビジネスを創り出した。ネット検索サービスはそれ以前にもあったが、ヤフーなどがポータルサイトとしてコンテンツの充実に向かったのに対して、グーグルはひたすら検索の速さ、正確さを追求し、圧倒的な勝利をおさめた。

 

検索という行為を基盤に、グーグルは広告ビジネスを展開して巨額の売上を上げている。さらに誰もがウェブサイトを広告メディアにできる仕組みを創り出し、幅広い企業・個人に新たなビジネスの手段をもたらした。

 

同時にそれは既存の広告・メディア産業に大きな打撃を与えた。それまでコミュニケーションを支配していた垂直型の広告・メディア産業に対し、グーグルはインターネットを通じて人や企業が直接、水平にコミュニケートするプラットフォームを提供したのだ。

 

グーグルのサービスはユーチューブによって動画共有へ、グーグルマップやグーグルアース、ストリートビューなどによって地図・空間検索へ、そしてアンドロイド(Android)によってスマートフォンへと広がった。さらにグーグルはテンソルフロー(TensorFlow)というAIシステムのサービスを提供しているが、膨大な情報へのアクセスは膨大なデータの蓄積を可能にし、このAIをより賢くすることにつながっている。

現実の地図・空間からも膨大なデータを収集・解析

グーグルがめざしているのは、インターネット経由で行われる世の中のあらゆる行動を把握・解析することなのかもしれない。それは人や社会の役に立つことにもつながるが、世界中のビッグデータを掌握することでさらに巨大なビジネスを生みだす可能性もある。

 

また、グーグルは車の自動運転技術の開発にも力を入れている。自動運転は自動車メーカーも開発しているが、メーカーがめざしているのが新しい機能を搭載した自動車・ハードウェアであるのに対して、グーグルがめざしているのはスマートフォンにおけるアンドロイドやアプリを通じたサービスのような、新しいUXの提供だろう。

 

インターネットから地図・空間へ、そこを走る車・人を情報端末とした、より膨大なデータ収集と解析へ、グーグルは着々とその世界を広げつつある。ビジネスモデルそのものはシェアリング型ではないかもしれないが、多くの企業や個人が行うシェアリングエコノミー型の活動をサポートするような、プラットフォームを提供することは可能だ。

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