前回は、床の傾きやたわみが引き起こす事故について説明しました。今回は、「床の傾き」によって生じる従業員の危険性について見ていきましょう。

自分の身体を歯止めにして台車の暴走を防止…

●CASE6 作業員は、台車が動く方向に自分の身体を置いて暴走を防止

(食品メーカー・F社・工場)

 

地盤沈下が激しい土地に建つ工場で、沈下は最大で110ミリ。床の傾きはぱっと見てもわかるほどでした。

 

実際、材料や製品であるパンを載せて移動するための台車は、放っておくと勝手に走り出してしまいます。そのため、——これは「現場の知恵」と言えないこともありませんが、作業中は自分の身体を台車よりも坂下側に置いて、身体で台車を止めながら荷物の移動を行っていたのだそうです。

 

また、パンの材料をこねる機械なども、そのままでは傾いてしまいますから、機械の下にゲタ(スペーサー)を履かせて調整していました。もっともそれが不充分だったのか、それとも調整してからさらに沈んでしまったのか、それでも脚が浮いてしまっている部分もあります。

 

機械の片側の下にスペーサーを入れざるをえない状態
機械の片側の下にスペーサーを入れざるをえない状態

 

設備担当会社の方も視察に来ていたのですが、その様子を見て「これは怖い」と言っていました。もともとこね機などは振動の激しい機械なので、設置場所が不安定だと事故発生の危険性も高く、これはさすがに見過ごせない状態だとか。

「安全」は、あって当たり前のもの

工場設備のリニューアルとともに、沈下修正工事をすることになりました。主に学校給食のパンを生産し卸しているため、学校の長期休暇中なら工事のための時間が捻出できます。そこで機械も止めて一気に修正施工を行いました。

 

床が水平を取り戻したことで、「安全」という、あって当たり前のものに気を取られることなく、作業員の方が製造工程に集中できるようになったというお話です。

本連載は、2016年11月25日刊行の書籍『改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9割』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

松藤 展和

幻冬舎メディアコンサルティング

4年前出版し関係者の間で話題沸騰したあの書籍が、「傾いた床」による様々なリスクを追加収録し、 【改訂版】としてパワーアップして帰ってきた! たった0.6度の床の傾きで、業務も傾く! 日本の建物の9割が地盤に起因…

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