残高が大きい=良いファンド!? 投資信託を選ぶ際の留意点

今回は、投資信託を選ぶ際の留意点について見ていきます。※本連載では、毎年1000を超えるファンドを分析する投信評価会社に所属する「投信のプロ」が、投資信託の基礎知識を世界一わかりやすく解説します。

金融機関の取り扱い姿勢に左右される「ファンド残高」

投資信託は、人気があるファンドとともに、残高が大きいファンドが好まれ選ばれる傾向にあります。残高が大きいということは、多くの人から投資されているファンドということになりますので、その観点からみることは間違ってはいません。

 

しかし、残高が大きいという事実だけで、そのファンドが優良であると捉えるのは適切ではありません。そこには、私たちが普段から意識しているランキングのイメージとは異なる結果が反映しているからです。

 

たとえば、化粧品でも家電でもたくさん売れていれば、人気がある良いものであるという判断基準の1つになります。宣伝上手なメーカーや潤沢な広告宣伝費を持っている企業の製品が実力以上にランキングの上位に食い込むこともありますが、多くのケースでは、購入者サイドの人気を反映してランキングが成り立っています。

 

一方で、投資信託の販売では、いまのところ、購入する側よりも販売する側が強い影響力を持っています。すべての投資信託が、株式の個別銘柄のように一律に取引されているわけではないため、販売会社である金融機関の取り扱いによって大きく左右されるのです。

 

たとえば、200以上の金融機関で採用されているファンドもあれば、ほんの数社でしか取り扱われていないファンドもたくさんあります。こういった取り扱いの違いは、「販売=残高」にかなりの影響を与えます。多くの金融機関に採用されているのだから良いファンドではないかと反論されるかもしれませんが、そうとも限りません。

 

販売力のある金融機関は、グループ内の運用会社の投資信託を取り扱う傾向があります。そのため、特定のグループに属さない多くの金融機関は、中立的な運用会社の投資信託を扱うケースが多くなります。すると、「日本中の地方銀行で採用されるファンド」が生まれることになります。

 

また、投資信託などの金融商品は、私たちにとって優劣を見分けることが難しいので、購入者の判断による影響がランキングに強く反映しないことも大きな理由です。

 

このように、いつでもどこでも買えるものではなく、また、だれでも良し悪しを簡単に判断できるものではないので、「上位=良い」とは限らないのです。

 

実際に、残高の多いファンドが同類のファンドの中で良い成績を残しているかといえば、決してそうではありません。図表は、外国株式に投資するファンド全体と、その中でも数千億円の純資産残高を有する実在のファンドAのリターンを示したものです。外国株式ファンドの中でも多くの資金を集めているファンドAのリターンは全体を下回っています。

 

[図表]

残高の少ないファンドは運用がおろそかになる!?

一部には、これらとは違う視点で、残高が多いファンドの影響を語ることがあります。それは、人材面の充実です。

 

残高の大きなファンドは運用会社にとって収益を生む金の卵であり、人もお金も潤沢に投入する傾向にあるので、残高は大切だという意見があります。運用会社にとって、ファンドから得られる収益の多くは残高に応じて得る運用管理費用です。

 

日本でも1兆円規模のファンドが数本存在しますが、仮に1兆円の残高にまで成長したファンドがあれば、運用管理費用が全体の1%とすると、毎年100億円もの金額になります。そのうちの半分が運用会社の収益分とすれば毎年50億円にもなりますので、ものすごい収益です。

 

一方で、残高が少ないファンドは運営の費用が嵩むわりに収益を生まないので、運用がおろそかになる懸念があります。残高10億円のファンドの場合、さきほどと同じように運用会社の収益分を計算すると500万円になります。この金額は、必要経費にもならないでしょう。この見方は確かに理にかなっています。

残高が極端に大きいと、逆に運用面の制約が・・・

運用の制約面としては、残高が少ないと銘柄に十分な投資をすることができないとか、ファンドで銘柄を売り買いする際に取引コストがかかりやすいという指摘があります。これは正しい見方です。

 

また、残高が低迷すると、繰り上げ償還される可能性も高まります。ただ、これらは10億円以下のような極端に残高の小さいファンドについて言えることであり、一定水準以上の残高があれば、そういう問題はほとんど生じません。逆に、極端に大きなファンドや急に資金が集まっているファンドにも運用上の制約を受けやすくなります。

 

株式に投資する投資信託であれば、残高があまりに大きくなると、魅力ある銘柄をたくさん購入することが難しくなるケースもあります。というのも、将来性を秘めた金の卵のような企業の株式は、トヨタやソフトバンクのように活発に取引されているわけではないので、価格を動かさずにたくさん購入することもテクニックのひとつだからです。同様に、魅力ある債券があったとしても、買いたいだけの売り物が出回っているわけではありません。

 

このようなことから、大きなファンドでは、思ったような運用ができないこともあり得るのです。運用力の高いヘッジファンドのなかには、一定の規模以上になると新たな資金の受け入れを中止するところすらあります。

 

このように、良いと思われる点もあれば制約と考えられる点もあります。そして、実際の運用実績を見る限りでは、私の理解している範囲ではありますが、残高が大きいファンドのほうが明らかによい結果を示すような関係は見いだせない気がします。日常生活のランキングとは異なり、投資信託選びにファンドの残高ランキングは、それほど関係がなさそうです。

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三菱アセット・ブレインズ株式会社 シニアコンサルタント

慶応義塾大学卒、唐木研究会出身。三菱UFJ信託銀行において、投資の専門家として20代前半から数十年にわたり、ファンドマネージャー、トレーダーとして一貫して運用の最前線に身を置き、市場のなんたるかを体得。その経験をもって、現在は、投資信託の評価会社である三菱アセット・ブレインズ(MAB)において、投資信託の販売支援や投資教育などを通じ、個人が安心して健全な資産形成に励むことができるための啓蒙に取り組んでいる。
書籍『顧客をリスクから守る資産形成術』(きんざい)を始め、資産形成に関する記事を新聞、雑誌に多数掲載。

三菱アセット・ブレインズ株式会社(MAB)
http://www.mab.jp/

著者紹介

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