前回は、相続発生後に判明した愛人と隠し子の相続権について取り上げました。今回は、遺産分割において「二次相続」まで考慮すべき理由を見ていきます。

配偶者が遺産のほとんどを相続したが・・・

宗太郎 いろいろ聞いていると、やはり母さんのことが心配になってくるな。相子や相一はしっかり家庭を持っていて支えてくれる家族がいるが、ワシにもしものことがあったら、母さんはひとりぼっちだからな。

 

圭子 あら、私はこの家があればとりあえず大丈夫ですよ。

 

宗太郎 うっ。冷たいね母さん。しかし預貯金も母さんが全部相続するようにしないと、老後資金も心配だ。

 

圭子 でもお友達のYさんはそんなふうに旦那様の遺産をほとんど丸ごと相続したんだけど、あとで子供たちはずいぶん苦労したみたいよ。

 

北井 相続税が増えてしまったんですね。

 

圭子 そうなんです。Yさんの旦那様は会社の役員にもなった人で、亡くなったときの財産は1億5,000万円もあったそうです。財産の内訳は自宅の土地が3,000万円で、残りは預貯金や株式だったんですけど、Yさんが全部の財産を相続したらしいです。

 

宗太郎 相続税の支払いや老後資金を考えたら普通だろう。

 

圭子 ところが6年後にYさんが亡くなると、長男・長女に課税された税額がずいぶん大きなものになってしまったらしいわ。

二次相続では「配偶者の税額軽減」が使えない

相子 Yさんのケースで一番問題なのは、やはり旦那様が亡くなった一次相続で配偶者であるYさんが全部相続してしまったことですよね?

 

北井 はい。親の生活と「配偶者の税額軽減」を考えて子供たちが財産を相続しない例は多いのですが、二次相続までを考えることも場合によっては必要だと思います。

 

相子 二次相続までを考えなければいけないのなぜですか?

 

北井 二次相続では「配偶者の税額軽減」が使えず、親が住んでいた家に子供が住む予定がないなどの事情があれば「小規模宅地等の特例」も使えません。相続財産の額が一緒でも、一次相続に比べて必然的に税額が大きくなってしまうのです。

 

相子 二次相続までを考えるのと考えないのとではどのくらい税額が違うのでしょう?

 

北井 Yさんのケースを少し簡素化して計算してみましょう。

 

[図表]

 

相子 意外です! Yさんが一次相続で半分を受け取るケースが、一次相続、二次相続を合計した税額は一番低くなるんですね。

 

北井 Yさんの相続割合を0%にしてしまうと、子供たちに相続財産が渡るため、二次相続がなくなるという利点はあるものの、特例が使えないので一次相続分の税額が膨らみます。一方、100%にすると特例を使って一次相続の税額を0円にできますが、二次相続の額が大きくなってしまいます。

 

相子 この例では、大まかに3パターンに分けていただきましたけど、本当は財産の状況や家族の希望を取り入れて、一次・二次の最適な按分を決めなきゃいけないんですよね。

 

北井 はい。それができれば節税だけでなく、相続人全員にとって一番いい相続が実現できます。

 

<ONE POINT>

 

●二次相続では配偶者控除や小規模宅地等の特例など、つかえない控除が出てくる

●各種控除をうまく利用するためには二次相続を視野に入れた分配が必要

本連載は、2016年12月14日刊行の書籍『「相続」のことがたった1時間でわかる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「相続」のことがたった1時間でわかる本

「相続」のことがたった1時間でわかる本

北井 雄大

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税の納税資金が足りず資産を手放すことになった、知らぬ間に親が多額の借金をしていた、相続財産の分配について家族間で争いが起こった…。相続では、正しく対策を打っておかなければ、残された家族が大きなトラブルに巻き…

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