今回は、製造業における外国人雇用の傾向と対策について見ていきます。※本連載は、外国人社員のビザ手続きや、外国人雇用コンサルティングなどを提供するACROSEEDグループの佐野誠氏(代表取締役/行政書士)、宮川真史氏(行政書士)、野口勝哉氏(社会保険労務士)、西澤毅氏(税理士)による共著、『すぐに使える! 事例でわかる! 外国人雇用 実戦ガイド』(レクシスネクシス・ジャパン)より一部を抜粋し、外国人の就労実態や業種別の傾向など、企業目線で「外国人雇用」の現状を説明します。

「技能実習1号」なら、比較的容易に受入れを行える

製造業においては、低コストの労働力確保の観点から、製造現場を日本から海外に移す事例が多くみられます。特に最近では、製造の拠点を中国から東南アジアに拡大する動きがみられ、元請会社の移転に伴い下請会社が東南アジアに進出するケースが目立ちます。

 

このような動きに伴って、外国人雇用に関しては、外国人技能実習生の受入れが拡大し、企業内転勤者が増加する傾向がみられます。

 

新たな国に拠点を設ける場合には、現地採用社員の教育が重要な課題となりますが、特に製造業では、現地で生産する製品を日本で生産する製品の品質に近づけることが課題であり、専門的な能力を持つ日本人社員が現地に出向き、製造現場で直接現地社員に指導することが、もはや当たり前となっています。

 

この動きをさらに拡大させていくと、現地採用社員から有望な人員を選んで日本に招き、技術研修を行い、優秀な技術を身に着けた上で帰国してもらい、現地でのリーダーとして育成することも考えられます。このような場合には、外国人研修・技能実習制度が広く活用されています。

 

なお、実務研修を伴う場合は企業が単独で受け入れる「技能実習1号」での受入れが大部分を占めています。組合等を通して受け入れる「技能実習2号」とは異なり、労働力不足の確保として利用される可能性が低いため、しっかりとした受入態勢さえ築くことができれば、比較的容易に受入れを行うことが可能となっています。

「実務研修」と「非実務研修」の違いに要注意

一方、実務研修を伴わない研修の場合には、「実務研修」と「非実務研修」の違いに十分に注意を払う必要があります。受入企業としては「非実務研修」のつもりであっても、入国管理局の見解からすれば「実務研修」に該当し、申請後にトラブルとなるケースがみられるからです。

 

特に、工場での生産活動の終了後、その生産ラインにおいて実習を行うような場合には、ラインと資材を別に設ける、生産した製品をすべて廃棄するなど、誰がみても実務研修とみなされないよう、入念な準備が必要となります。

 

不安に思われるような場合は、入国管理局等で研修計画をよく説明した上で、具体的な指導を仰ぎながら研修計画を立てるようにしてください。

 

さらに、非実務研修だけの「研修」を実施する場合には、「短期滞在」に該当する可能性がないかを確認する必要があります。「研修」と「短期滞在」を比較した場合、当然に「短期滞在」の方が低コストで呼び寄せることができますし、受入企業の負担も軽減します。

 

もちろん、研修費用の支払いや日本に滞在できる期間等で違いはありますが、該当する可能性がある場合には十分に検討する価値があります。

 

とはいえ、「実務研修」と「非実務研修」、それに「研修」と「短期滞在」の違いはケースによっては非常に複雑であり、専門家でも判断に悩む事例が多く、自社で手続を行う場合には入国管理局等で確認をとりながら慎重に進めなければなりません。

 

さらに、最近増加しているケースとしては、企業内転勤者の受入れがあります。これは製造現場を監督するリーダーの育成のために利用されることが多く、技能の移転よりも日本企業の理念教育やモノづくりの考え・態度、日本流の仕事の進め方などを身につけてもらうためのインバウンド研修です。

 

本書でも4章1.5で触れますが(本書籍をご覧ください)、インバウンド研修の場合には、受入条件や研修内容等によって、実に様々な選択肢が考えられます。

 

「入国管理及び難民認定法」(以下「入管法」といいます)はもちろんですが、二国間にまたがる税法、日本での労働条件など、コンプライアンスを考慮した場合には、その内容は非常に複雑なものになるため、受入企業としては慎重な対応が求められます。

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