今回は、遺言書を作成する際には、じっくり考えるべきか、それとも直感で書くべきか、どちらが良いのかを見ていきます。※本連載では、株式会社日本中央研修会・代表取締役で、公認会計士/税理士/行政書士としても活躍する青木寿幸氏の著書、『あなたの相続、もめないのはどっち!?』(秀和システム)より一部を抜粋し、もめない相続のために、親として「やっておきたいこと」を説明します。

<遺言書の内容は>

A:じっくり、考えてから決める

B:とりあえず、思いつくことを書く

どっちが正解?

60歳になったら「気の向くままに」書いてみる

父親は、「子供にあげる財産が決まらなければ、遺言書は作れないので、自分が死ぬ間際に書けばよいかな」と考えがちです。とすれば、日本の平均寿命は男性が80歳、女性が85歳なので、80歳前後で作ることになります。

 

しかし、80歳になると病気で入院していたり、判断能力が劣ってしまい、遺言書を作れないこともあります。また、80歳になると、父親が自分の財産を調べて一覧を作ったり、誰にあげるのかを考えることが、面倒くさいと感じてしまうのです。

 

子供は、遺言書なんて書くだけなので、簡単な手続きだと思うでしょう。それが、80歳になると、1つのことをやるにも、時間がかかるのです。そして、父親が高齢になるほど、「あんなに仲のよかった子供たちが、もめるはずがない」と古い思い出がよみがえり、「自分が亡くなったら、お前たちの好きなように分ければよい」と言い出します。

 

結局、遺言書がなかったことで、遺産分割でもめている家族が、現実に、たくさんいるのです。遅くとも、父親が60歳になったら、そのときの気持ちをもとに、思いつくまま、とりあえず、遺言書を作ってみましょう。

 

「まだ、子供が小さいし、これから、財産の内容も大きく変わるから、あわてて作っても、意味がないのでは?」と言う方もいます。

 

でも、あとで作りなおせば、最後の日付の遺言書が最優先されるのです。それに、例えば、現金でアパートを買ったら、全部を書きなおさなくても、その部分だけの遺言書を作ればよいのです。

 

将来、自分の財産がどのように変わっていくかは、誰にも分かりません。じっくり考えていたら、結局、80歳になってしまいます。

 

[図表]基本となる遺言書は、60歳になったら作る

遺言書を書く際にやっておきたい「3つのポイント」

さらに、遺言書を作るときに、ぜひ、やって欲しいことがあります。

 

①公正証書遺言で、作っておく

 

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。自筆証書遺言は、自筆で書くだけなので、費用もかからず、証人も必要ありません。ただ、法律の条件を満たしていないと、無効になってしまいます。それに、自筆証書遺言は、封をして閉まっておくため、相続人が見つけてくれないというリスクもあるのです。

 

一方、公正証書遺言は、全国に300ヶ所もある公証役場にいる公証人に作ってもらいます。費用がかかり、相続人以外の2人の証人も必要とはなりますが、無効になったり、見つからないリスクはゼロです。

 

そのため、原則は、公正証書遺言で作成すべきでしょう。なお、2つの遺言書の効力の強さは同じで、公正証書遺言の内容と違う、あとの日付で自筆証書遺言を作れば、当然、後者の内容が優先されます。

 

②付言事項を書いて、家族に説明する

 

長男に財産を多くあげるならば、遺言書に、その理由を書いてください。他の相続人への心配りがあると、あとの家族の関係が円満に保てます。

 

③予備的遺言で、次の相続人を指定する

 

父親の寿命が100歳を超えて、子供の方が先に亡くなることもあります。民法では、相続人である子供が亡くなっていると、その子供(孫)に相続の権利が自動的に移るという、代襲相続を認めています。

 

ところが、遺言書で、「自宅は、長男に相続させる」と指定されていても、本人がいないと、自動的には、その子供(孫)が代襲相続できないのです。長男の子供(孫)が、父親と同居していても、他の相続人と遺産分割で合意しないかぎり、その自宅を相続できない事態になります。

 

そこで、予備的遺言として、「長男が亡くなっている場合は、その子供に相続させる」と書いておきましょう。

 

<正解 B>

父親は60歳になったら、とりあえず、遺言書を書いてみる。あとで、何度でも作りなおすことができ、日付の新しいものが、有効となる。

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