市場開拓でも大きな力を発揮する学生の「チャレンジ精神」

前回は、海外進出の資金を調達に成功した学生主導のクラウドファンディングについて紹介しました。今回は、市場開拓でも大きな力を発揮する学生の「チャレンジ精神」について見ていきます。

現地で見つけた自社製品の「意外な可能性」

製品の販売に際して、インドでは提携パートナーがいないとビジネスができない環境です。提携先の候補として事前に目をつけていた5~6社に対して営業をかけると、2016年2月に契約が成立。T君とM君の活躍によってインド事業が軌道に乗りました。

 

日本の遮熱技術は、世界でトップクラスです。テントで日陰をつくり、素材表面の金属が熱を反射させる。そのような製品は、世界にも類がありません。

 

インドにも遮熱テントとして販売されているものがありますが、生地を見てみるとグレードでいえば中の下程度。日本でしかつくれない高品質の遮熱テントを販売すれば、ヒットすることは間違いありません。

 

そこで遮熱テントの技術を応用したパラソルをインドのビジネススクールに持っていったところ、「こんなに日差しがあって暑いのに、パラソルの下はなんて涼しいんだ」とよいリアクションをもらいました。

 

[図1]インドで施工した遮熱パラソル(2015/9/9)

 

日本から持ち込む場合、価格が高くなるので、一般層よりもまずは大企業や日系企業をターゲットに営業を展開する予定です。

 

インドでは、エアコンの普及率が高くありません。バスや電車といった公共交通機関では、気温が摂氏40度以上であっても窓が開いているだけ。工場内は蒸し暑く、作業員たちは汗だくで仕事をしています。

 

そこでT君とM君の2人の学生は、現地の大手企業と取引のある工場の窓に遮熱シートを貼り、室温が何度下がるかというプロモーションを計画しました。マージンを乗せずに販売して実績をつくり、そのあとに他の企業へと営業を展開し、口コミがどんどん広がることを見込んで、今動いているところです。

 

[図2]現地の新聞にも取り上げられた(2016/1/9)

 

現地調査へ向かう前には遮熱製品が主力になるだろうと予想していたのですが、実際にインドを訪れてみると全く違う方向の可能性が見つかりました。

 

インドは、人口の半分が農業従事者です。国の中心産業として農業が盛んにもかかわらず、乾季の水不足の対策がなされていません。農家の人々は作物が育たず困っている。水不足は深刻な問題になっています。NPO団体の方にテント業者だと伝えると、水タンクやため池をテント生地でつくってほしいと熱く語られ、そこで農業関連製品というアイデアが生まれました。

 

[図3]インドの学生と施工したため池シート(2016/8/3)

 

現状は遮熱と農業というキーワードですが、私の会社が日本で得意としているテント倉庫やオーニングテント、店舗の屋根のようなテントといったものはインドを見ていてもなかなかありません。商業用のものは徐々に増えつつありますが、産業用のものがほとんどないので、ゆくゆくはこの大きなマーケットにも進む構想です。

「何にでもぶつかっていく度胸」が学生の武器

現地でのコミュニケーションは、基本的に英語です。留学経験のある学生や語学系の学部に所属する学生にとって、日常会話はなんら問題がない。ビジネス英語については不安もあったようですが、そこは学生の強みであるチャレンジ精神を発揮してくれます。「失うものは何もない」という勢いがある。学生たちがいなければ、インドのビジネスは今後も進まないでしょう。

 

現在、私の会社の「学生インドチーム」は愛知県立大学のN君とAさん、東京からのインターン生M君の3人を中心に動いています。日本の3人に加えて、インドからは現地のビジネススクールで出会った熱意のある2人をスタッフとして迎え、日本とインド計5人でインド向け遮熱テント製品の販売戦略の立案や、インド南部の町工場などへの地道な営業活動を通じたニーズ調査などを実施しています。

 

インド人と日本人の時間に対する考え方の違いや文化の違いなどに悩まされ、動き出しはスムーズとはいえませんでしたが、学生の強みである粘り強さや泥臭さ、何にでもぶつかっていく度胸を武器に、地道に一歩一歩、インドでの初売り上げに向けて歩みを進めています。2016年7月には日本の学生たちが3回目のインド出張に出向き、現地でため池シートを施工しました。

本連載は、2016年11月12日刊行の書籍『事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載事業拡大を実現する!中小企業のための長期インターン活用戦略

株式会社丸八テント商会 代表取締役社長

1960年愛知県生まれ。1979年名古屋市立工芸高校卒業後、祖父が1951年に創業した丸八テント商会に入社。職人として製造現場で経験を積んだ後、海外の店舗で使用されるオーニングなどを撮影し、全6冊にも及ぶ世界のテントフォトブックを営業ツールとして自作。2005年の愛・地球博や2010年の上海万博では、大手企業の展示会ブースを手がけるなど、卓越した発想力と行動力でテント業界に新しい風を吹き込む。
いち早くインターネットビジネスを活用し、自社HPのPV数(閲覧者)は1日に800~1000人となるなど“営業しない営業”のモデルを構築、他社との差別化を図る。また、伝統技術を活かした西陣帆布、西陣カーボンをプロデュース。JAPANブランド育成支援事業として経済産業省の認定を得る。伊東豊雄が設計した、“みんなの森・ぎふメディアコスモス”のグローブに携わる。
2015年には、映画「シン・ゴジラ」の劇中で使用されたテントを施工した。“ものづくりから、ひとづくり”を信条に、これまで培ってきたプロデュース力を活かして、地域の中小企業を応援しようとミチカラプロジェクトを発足。地域の役に立てるテント屋さんを目指している。一般財団法人日本国際協力センター(JICE)国際協力機関「外国人が日本で働く」セミナー講師をはじめ、各地でセミナー講師を務める。

2000~2001年 日本テントシート工業組合青年部会長
2003~2005年 愛知万博飛行船Bプロジェクト実行委員
2016年~ 愛知県テントシート工業組合理事長

著者紹介

事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略

事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略

佐藤 均

幻冬舎メディアコンサルティング

中小企業にとって「採用」は非常に大きな問題です。新卒学生の大手志向が進み、中途採用も思うようにはできない時代。優秀な人材ほど条件面で折り合わない等の問題があり、人材獲得は困難を極めます。しかも、中小企業における…

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