今回は、「ブロックチェーン」の今後の発展について考えていきましょう。※本連載は、ドローン・ジャパン株式会社取締役会長の春原久徳氏、近畿大学教授の山崎重一郎氏が著書として名を連ねる『インターネット白書2017 IoTが生み出す新たなリアル市場』(インプレスR&D)の中から一部を抜粋し、AI、ブロックチェーン、VR、コネクテッドカーやドローンなどのキーワードをもとに、最新テクノロジーの現在を解説します。

既存システムの多くを変え得る「ブロックチェーン」

著者:近畿大学/山崎 重一郎

 

FinTechの主役として過熱しているブロックチェーンへの期待は、短期間に実現するものではないが、幻滅期に入っても消え去ることはないだろう。

 

現在のブロックチェーン技術は玩具レベルだが、実用技術に昇華するための技術革新は次々に提案されて実施されている。また、「ブロックチェーン化」は、歴史的理由によって過剰に複雑化している現在の金融システムを刷新する契機になるかもしれない。

 

ここでは、FinTech以外の用途へのブロックチェーン利用の可能性について触れておく。ただし、これらもやはり短期間で実現するものではない。

 

(1)著作権管理の基盤としてのブロックチェーン

 

これまでの歴史の中で、著作権とテクノロジーは、常に対立関係にあった。新しいテクノロジーの発明は、著作権者やコンテンツ産業の権利に対する脅威を引き起こしていた。

 

新しいテクノロジーの発明、たとえば、レコードやラジオ、録音テープ、家庭用ビデオ、デジタル録音、インターネット、Web、P2P型ファイル共有技術などのテクノロジーの進歩の歴史は、それに対する著作権や著作隣接権の歴史でもあったと言ってよい。

 

これに対して、ブロックチェーンは著作権や著作隣接権と対立するのではなく、むしろその管理を容易にする技術となる可能性を持っている。

 

ブロックチェーンは、電子通貨の二重使用問題を解決し、デジタルデータの通貨をあたかも現物のコインのように人から人へと安全に転々流通させることを可能にした。これと同様のことをデジタルコンテンツに適用できる可能性がある。ブロックチェーンによる著作権管理は、人間の支配を超えた絶対中立性を持つ。

 

つまり、たとえばJASRAC(日本著作権協会)のような存在がなくても、きめ細かく著作権者に著作権使用料を支払う仕組みを構築できるのである。

 

(2)投票の基盤としてのブロックチェーン

 

紙による投票の開票作業や集計作業では、原理的に、担当者による不正の可能性を完全に払拭できない。電子投票の場合は、さらに開発や運用の主体による不正の可能性が存在する。電子投票には、電子通貨以上に政府からの中立性と透明性が求められる。

 

ビットコインは、国家を超越した通貨システムを実現したが、ブロックチェーンは政府や国家を超越した、高度な中立性を備えた投票システムを実現できる可能性がある。

実用レベルの技術にするには、まだ数年の時間が必要

ビットコインのブロックチェーンには、時間あたりの取引数に関するスケーラビリティの問題が存在する。また、送金に利用されているアドレスと本人が紐づくと取引の履歴が完全に追跡できてしまうという問題も存在する。

 

現時点でこれらの問題に対する対策として注目されているのは、ブロックチェーンの外側での決済を可能にする「オフチェーン技術」である。中でも「マイクロペイメントチャンネル」や「ライトニングネットワーク」という提案が有望視されている。

 

また、ビットコインとは別の独自のブロックチェーンと、ビットコインのブロックチェーンの仮想通貨を、双方向でペグ(紐づけ)して連携する「サイドチェーン技術」というアプローチも存在する。

 

ブロックチェーン技術を玩具レベルから実用レベルに進化させるにはまだ数年の時間が必要だろう。しかし、それはおそらく可能である。

インターネット白書2017 IoTが生み出す新たなリアル市場

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インターネット白書編集委員会

インプレスR&D

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