前回は、新築区分マンションの節税面での問題点を解説しました。今回は、「新築一棟」のデメリットについて見ていきます。

新築の「プレミアム」は1回の入居でなくなってしまう

「新築一棟」も新築区分マンションと同様、基本的にはおすすめはできないと考えています。新築物件は家賃が中古に比べて高く、建物が新しいので修繕費も低く抑えられる・・・一般にはそう捉えられているため、一見すると魅力的に感じます。

 

たしかに新築の家賃は中古に比べて高めに設定できますが、数年経過後、あるいは最初の入居者が退去したあと、10〜20%程度下落します。なぜなら、新築プレミアムがなくなるからです。

 

新築物件と築5年の中古物件、どちらの住宅に住みたいかと問われると、ほとんどの人が新築と答えるでしょう。希望する人が多いというのは需要が供給を上回っている状況と同じであり、その分、家賃を高く設定できることを意味します。これを新築プレミアムといいます。しかし、新築で入居した人が退去すると、次は中古物件としての募集となり、新築プレミアムが働かなくなります。エリアによって差がありますが、平均して10〜20%の賃料下落と考えていいでしょう。

 

さらに業者によっては、新築時の入居賃料を相場以上に吊り上げている可能性があります。その場合、一度退去が出ると、次からは賃料が20%以上も下落してしまうリスクもあるのです。たとえば利回り7.5%の新築物件の場合、5年後に賃料が20%下がったと仮定すると、利回りは6.0%。空室が長期化するなどすれば、借入の返済が厳しい状況となりかねません。

 

収益物件の価格は、収益価格か積算価格の高いほうが採用されます。新築一棟の場合、新築プレミアムがなくなるなどして家賃収入が低下するとともに、還元利回り(キャップレート)が大きくなるため、収益価格の下落幅がかなり拡大してしまいます。ここでいう還元利回りとは、わかりやすくいえば、不動産投資家が購入したいと思える投資利回りのことです。

 

収益価格=収入÷還元利回り
(収益価格が下落する要因は収入の減少または還元利回りの上昇など)

 

最終的には土地値になりますが、新築物件の物件価格全体に占める土地の割合は半分以下のケースが多く、価格の下支えは期待できません。新築一棟アパートの購入後に賃料が下がり、物件の価値が低下すれば、売却しようにも残債以下でしか値段がつかず、売るに売れなくなるというケースがほとんどなのです。家賃下落で保有期間中のキャッシュフローの見込みは外れ、物件価値の低下で売却後のキャッシュフローもマイナスになる、これが新築一棟を所有した先の顛末です。

 

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サブリース契約での長期家賃保証には要注意

新築一棟の購入を検討されている方のなかには、サブリース(家賃保証・一括借り上げ)契約があるから安心、と考えている人もいるのではないでしょうか。サブリース契約とは、オーナーが所有する物件を管理会社が借り上げて、第三者に転貸する契約をいいます。

 

アパートビルダー(工務店などアパートを建てる業者)の多くは30年家賃保証などと銘打って、地主に営業をかけたり、一般の方に「一括借り上げがあるので、家賃は寝ていても入ってきますよ」などとセールストークをしていますが、そのような家賃保証はまず不可能です。

 

先の30年家賃保証でいえば、家賃の支払いは30年保証するけれど、その保証する金額は30年間一定ではない、ということになります。サブリース契約で物件購入後、歳月が経って突然、サブリース会社が家賃の減額を提案してきたとします。「家賃保証といいながら、それはおかしいじゃないか」として、保証家賃の減額交渉を断るとどうなるでしょうか。

 

契約を解除され、入居者を他の物件に移されてしまう可能性があります。そうなると全室空室となり、即債務不履行となってしまいます。サブリースの場合、入居者と賃貸借契約を結んでいるのはオーナーではなくサブリース管理会社です。ですからサブリース会社側は、極端にいえばオーナーとの契約を解除後、その物件の入居者をどうしようが勝手なのです。

 

一方、家賃の減額を受け入れた場合も厳しい状況になります。不動産投資は購入時に借入をするケースがほとんどです。保証家賃を下げられてしまうと、返済原資が足りなくなり、同じく返済不能になるリスクがあるのです。30年もの長期間にわたり、家賃が安定して入ってくる。そんな業者の甘い言葉に踊らされてはいけないということです。

築3年以内であれば新築と同程度で売れる可能性もあり

個々までは新築一棟のデメリットをながながと述べてきましたが、の不動産市況を前提にすれば、利益を出す投資形態は考えられます。

 

不動産価格には値上がりの期待感があるため、新築一棟アパートを購入して数年保有したのち、高値で売り抜けるのです。築3年以内であれば、新築と同程度の利回りで売れる可能性はあります。仲介手数料など取引コストはかかりますが、うまく上乗せして売却すれば、保有期間中のキャッシュフローとキャピタルゲインが得られるので、投資としては有効といえるでしょう。

 

ただし、売却益を狙った投資は一時的な経済局面にのみ有効で、かつ継続的な収入が望めるわけでもありません。本連載で提唱している「安定収入」や「資産形成」に役立つわけではないのです。私は物件価格上昇トレンドの現在においても、新築一棟をおすすめすることはありません。

 

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    本連載は、2014年11月4日刊行の書籍『はじめての不動産投資 成功の法則』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    藤原 正明

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