今回は、莫大な資金が流入している「ブロックチェーン」の死角について見ていきましょう。※本連載は、ドローン・ジャパン株式会社取締役会長の春原久徳氏、近畿大学教授の山崎重一郎氏が著書として名を連ねる『インターネット白書2017 IoTが生み出す新たなリアル市場』(インプレスR&D)の中から一部を抜粋し、AI、ブロックチェーン、VR、コネクテッドカーやドローンなどのキーワードをもとに、最新テクノロジーの現在を解説します。

進むブロックチェーン技術の「標準化」

著:近畿大学/山崎 重一郎

 

2015年には、金融技術の標準化を担うISO/TC68に、デジタルカレンシーの通貨記号に関する標準化を扱うSC7サブグループが設置された。

 

またオーストラリアから、ブロックチェーン技術の標準化に関する新たなTCの設立が提案され、2016年9月にISO/TC307  Blockchain and electronic distributed ledger technologiesが設立された。

 

このTCのParticipating memberは、日本、オーストラリア、カナダ、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、韓国、マレーシア、ノルウェー、イギリスである。これを受けて、2016年10月に国内でも経済産業省の外郭団体のJIPDECにISO/TC307に係る国内審議団体が設置された。

ブロックチェーンと「自称」する技術が溢れる事態に

莫大な資金の流入による熱狂の渦中にあることが、「ブロックチェーン」という用語が甚だしく拡大解釈される要因になっている。さらに、関連して「分散台帳」という用語も登場するようになった。IBMが中心となって開発が進められているオープンソースHyperledgerでは、ブロックチェーンではなく分散台帳と呼んでいる。

 

また、「ブロックチェーン」という用語の内容が未定義なまま、「通貨以外の用途にも広範に利用可能な革命的な技術だ」という言説が広まっている。その期待と投資に呼応してブロックチェーンと称するシステムが次々に登場している。

 

ブロックチェーンという用語の正確な定義が存在しないために、ブロックチェーンと自称している技術が何を指しているのか不明である。現在、異常なまでに膨張している幻想のバブルが弾け、幻滅期が到来する可能性を否定できない。

「信頼できる第三者」の不要化を目指すビットコイン

ビットコインの発明者のサトシ・ナカモトの論文によると、ビットコインの開発目的は「信頼できる第三者」を必要としない通貨システムの提案である。そしてブロックチェーンは仮想通貨ビットコインの中核となる台帳システムとして発明された。

 

電子通貨の最大の課題は、電子通貨の二重使用の問題である。従来はこの問題の解決には、ICカードなどの特殊なハードウェアや信頼できるサーバが必要だと考えられていた。

 

これをビットコインは、世界中の夥しい数の仮想通貨利用者によって構成されるP2P型ネットワークのすべてのノードが、ブロックチェーンによる取引台帳の整合性監査を定常的に繰り返すことによって、電子通貨の二重使用の問題をソフトウェアだけで鮮やかに解決した。

インターネット白書2017 IoTが生み出す新たなリアル市場

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インターネット白書編集委員会

インプレスR&D

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