今回は、ドローンを動かすシステムについて見ていきます。※本連載は、ドローン・ジャパン株式会社取締役会長の春原久徳氏、近畿大学教授の山崎重一郎氏が著書として名を連ねる『インターネット白書2017 IoTが生み出す新たなリアル市場』(インプレスR&D)の中から一部を抜粋し、AI、ブロックチェーン、VR、コネクテッドカーやドローンなどのキーワードをもとに、最新テクノロジーの現在を解説します。

最も熱い開発領域「コンパニオンコンピューティング」

著:ドローンジャパン株式会社取締役会長/春原久徳

 

ドローン活用が業務用途を中心に広がっていく中で、既存の機体を単に飛行させるだけでなく、より業務に適した利用や、サービスとしてのドローン(Drone as a Service)といった考え方が重要になってきている。そのためには、ドローン技術全体をきちんとシステムで捉えていくことが必要だ(以下の図表を参照)。

 

[図表]ドローンの技術フレームワーク

出典:筆者作成
出典:筆者作成

 

ドローンシステムは主に以下の4つのブロックのリソースによって成立している。

 

●機体上のフライトコントローラー

 

フライトコントローラーは、内蔵した各種センサーから機体姿勢を計算し、モーターの回転を制御するものだ。

 

世界の潮流では、現在2つの流れに収斂してきている。一つは世界でNo.1のシェアを持つDJIのもの(NAZAV2やA2、A3など)である。もう一つはDronecode陣営のもの(Pixhawk、NAVIO、SnapDragon Flyなど)である。

 

この2つのほかに独自で開発されているケースもあるが、DJIの開発リソースの豊富さやDronecodeのオープンイノベーション(よってたかって開発を進める動き)に対して、どうしても開発のスピードについていくことが難しくなっているのが現状だ。

 

フライトコントローラーはまさにドローンを“自律”たらしめるものであり、人間の機能でいうと筋肉や“反射”に近いようなある種の肉体性というものを感じさせる。

 

今後は、フライトコントローラーに新しい機体制御用のセンサーが追加されていくことで、“自律”の精緻さが向上していくことになる。

 

●機体上のコンパニオンコンピューティング

 

コンパニオンコンピューティングは、2015年ごろから急速に動き出している分野だ。フライトコントローラーのCPUでは主にARM系のレスポンス性が高いものが使われるのに対し、コンパニオンコンピューティングではより処理能力が高いインテル系のCPUやエヌビディアのGPUが使われる傾向にある。

 

これはフライトコントローラーが筋肉や反射といった肉体系の機能だったのに対し、コンパニオンコンピューティングはいわば人間の脳にあたる機能だからだ。

 

現在、コンパニオンコンピューティングとして、画像解析による衝突回避や他ドローンとの群制御などが開発されはじめている。この開発が進んで人工知能(AI)が活用されると、ドローンが自ら判断し目的に応じて航行していくようになっていくことが予想される。現在、一番ホットな開発領域といってよいだろう。

ドローンで取得したデータの処理を行うサービスも出現

●地上側のPC、タブレット、スマホ

 

この分野では現在、操作用のアプリケーションや、テレメトリーと呼ばれる機体からの情報収集用アプリ、自動航行用のソフトウェアなどが開発されている。また、空から収集したデータを解析してクラウドにアップロードするツールなども作られている。

 

今後は、飛行ログの解析といったものも、非常に重要なツールとなっていくだろう。

 

●クラウド

 

これまで日本では、機体からデータを直接クラウドに上げる手段がなく、地上側のPCやタブレット、スマホを経由して送る形をとってきた。SIMは陸上局扱いであり、ドローンに搭載して使うことが認められていなかったためだ。これについては、2016年秋より実験用途で一部解禁された。

 

ドローンで取得したデータの処理や解析をクラウド上で行うサービスが、海外では展開されはじめている。ドローンの空撮映像を3Dマッピング化するといったデータ加工サービスや、ドローンで撮った画像・動画を共有するサービスなどだ。ドローンの機体や運用、データを管理するサービスも起こってきている。

 

日本でもSIMのドローンへの搭載により、リアルタイムに機体を管理するサービスや、遠隔地の画像や映像をリアルタイムで送るようなサービスも生まれてくることが予想される。

 

こうした技術フレームワークの中で、欧米においては、新規ベンチャー企業から既存のIT企業まで、インターネットやクラウドを活用したサービスを提供しはじめている。日本においても、技術フレームワークの理解を深め、各業務分野に適したアプリケーションやサービスが提供されていくことが望まれる。

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