今回は、官民一体で進む、インターネットを活用した災害対策について見ていきます。※本連載は、ドローン・ジャパン株式会社取締役会長の春原久徳氏、近畿大学教授の山崎重一郎氏が著書として名を連ねる『インターネット白書2017 IoTが生み出す新たなリアル市場』(インプレスR&D)の中から一部を抜粋し、AI、ブロックチェーン、VR、コネクテッドカーやドローンなどのキーワードをもとに、最新テクノロジーの現在を解説します。

これまで閉鎖的だった公共データの活用が進む!?

東日本大震災での反省を踏まえて策定された「電子行政オープンデータ戦略」を経て、日本のオープンデータ政策は基盤整備の段階を終えた。これをオープンデータ1.0とし、2016年5月からは官民一体でデータ活用による社会課題解決やビジネス創出をめざしたオープンデータ2.0が始まっている。

 

さらに、「官民データ活用推進基本法」が成立したことも、活用推進の後押しとなる。業界構造が見直され、これまで閉鎖的・限定的だった公共データの提供が、可能性を引き出しやすい形に改善されることが期待されている。

 

●官民データ活用推進基本法

 

2016年12月7日に参議院本会議で可決・成立。11月25日に議員立法として発議・法案化されてから、わずか10日足らずでの成立となった。法律で初めて「AI」「IoT」「クラウド・コンピューティング・サービス」という用語を定義した点も注目されている。

 

 

●地域経済分析システム「RESAS」

 

自治体による地方創生の取り組みを情報面から支援するために、経済産業省と内閣官房との連携で開発された。産業構造や人口動態、人の流れなどに関する官民のデータが集約されている。11月からはAPIも提供されたことで、より高度な活用事例の登場が期待されている。

 

熊本地震によってインターネットの課題も浮き彫りに

東日本大震災から6年がたったが、その間におけるITサービスと利用環境の発展により、災害支援の形も変化している。スマホ充電設備や移動基地局、モバイルルーター、ウェブサイト構築などの支援が提供されたが、これは裏を返すとスマホやネットがライフラインになっていることの証である。

 

また、物資ニーズの発信手段として、アマゾンの「ほしい物リスト」を避難所等で利用した事例がある。不正利用などの課題はあるものの、日ごろから使い慣れたツールやサービスを転用することは、非常時だからこそ効果的といえる。

 

●災害時における情報発信メディア使用率比較

 

災害ボランティアセンターに限ったデータだが、ここ数年でFacebookの利用率が飛躍的に増えていることがわかる。ただし、各サービスとも長所と短所があり、さらに障害発生の可能性も考えると、特定メディアへの過度な期待は避けるべきだろう。

 

●熊本地震時のOSMによるマップ制作活動

 

2015年の鬼怒川災害に続き、2016年も熊本地震や鳥取県中部地震、北海道の台風被害など、大規模な災害が発生。ボランティアによるOpenStreetMapを使ったクライシスマッピングやGoogleマップを使った被災者向け情報の収載地図が公開された。

インターネット白書2017 IoTが生み出す新たなリアル市場

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インターネット白書編集委員会

インプレスR&D

「The Internet for Everything」を掲げ、インターネットによる技術・ビジネス・社会の変革を伝える業界定番の年鑑。21年目を迎える2017年版は36人の専門家が寄稿。 LPWAと5Gという、2つの通信のイノベーションや、AI、ブロッ…

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