前回は、会社の再生のために不可欠な「出ていくお金」の減らし方について紹介しました。今回は、経費の公私混同、在庫の余剰など経営者がチェックすべきポイントについて見ていきます。

その経費は本当に業務上、必要か?

前回の続きです。

 

経費の公私混同の例は、他にもあります。

 

●商品券を贈答用として購入し、自分で使ってしまう

●個人的な飲み代を会社の交際費として落とす

●会議以外の飲食代を会議費として落とす

●個人使用が主な目的である機械(パソコンなど)を経費にしてしまう

●自宅で着る服や子ども・孫の服を、作業着として経費にしてしまう

 

ここで挙げた例は、明らかに経費にはなりません。しかしパソコンなどは仕事でも使うし、プライベートでも使うかもしれません。取引先の社長との会食も、仕事上の接待の時もあるだろうし、プライベートの飲み会の時もあるでしょう。

 

このように業務上で必要なものかどうかは、社長の心の中でしか判断できないものであることが多いのです。経費になるものと、ならないものが法律にすべて明記してあれば問題ないのですが、複雑な経済活動のすべてが法律に明記されているわけではないため、グレーゾーンが発生します。

 

グレーゾーンを自分に都合よく解釈し、公私混同を「当たり前」と捉えていることが、あなたの会社を赤字に転落させ、自転車操業に陥らせた大きな要因のひとつであることに間違いありません。公私混同を徹底して見直すことは、「仕事のため」と湯水のごとく経費を使うことを防ぎ、無駄な出費を抑えることにも繫がります。

 

売上を伸ばして利益を上げる。それに関する税金はきちんと納める。そういう潔い姿勢で事業再生に取り組むべきなのです。これを機会に、一切のグレーゾーンを絶ってしまう覚悟を持ってみてはいかがでしょうか。

過不足や原価を知るためにも正確な在庫把握を

経営者が見るべき数字はもうひとつあります。それが、月々の「在庫数」です。

 

変動費(原価)は、月初の在庫と仕入れ高から、残った月末の在庫を引いて求めることができます。月初の在庫とは先月末の在庫ですから、毎月末に在庫数を把握しておくことは、変動費を把握するために非常に重要なのです。

 

ここが間違っていたり、粉飾して水増しされた在庫になっていたらまったく意味がありません。事業再生計画をするつもりが誤った経営判断によって、取り返しのつかない事態を招くこともあるでしょう。

 

在庫管理には、面倒な棚卸をイメージする人も多いでしょう。毎月そこまでしていては、労力も時間もかかりますが、決してこの過程を省略したり、どんぶり勘定にしてはいけません。特にはじめのうちは、徹底的に在庫を調べる必要があるでしょう。

 

これまで在庫管理を行っていなかった企業であれば、在庫の把握だけで数週間を要することもあるでしょうが、一度把握してしまえば後がとても楽になります。エクセルや在庫管理ソフトで把握して、その後はデータ上で管理していけば、毎月の棚卸は確認作業程度でよくなるはずです。

 

さらに、部門ごとに担当者が在庫を担当し、各原価を見積もります。製品ごとの外注費や仕入れ値を把握し、詳細な計算は税理士に確認しながら進めます。こうした作業を定期的に行うことで、在庫が多すぎないかや原価が高すぎないかを知る指標ができあがるのです。

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    本連載は、2017年3月23日刊行の書籍『「万年自転車操業」の会社を「万年安定経営」に変える方法 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    小林 優一

    幻冬舎メディアコンサルティング

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