前回は、「会社の帳簿付け」は経営者自らが取り組むべき理由を説明しました。今回は、経理の自計化を行うためのIT活用について見ていきます。

経理のIT化で「自計化」を進める

自社で会計を行う「自計化」。私がこれをすすめると、多くの経営者からは「自社で経理ができないから税理士に頼んでいるのだ」「自社で経理を行うなら、税理士の顧問料を値下げしてもらえるのか」という声が上がります。確かに、この気持ちはわかります。面倒な経理はやりたくないから、わざわざ税理士に高い顧問料を払っているのに、自分で経理を行うなんて話が違う!となるわけです。

 

しかし、経理が面倒だったのはひと昔前の話です。現在はIT化が進み、「フィンテック(FinTech)」という新たな金融サービスも急速に拡大しています。

 

このフィンテックとは、「ファイナンス(Finance)」と「テクノロジー(Technology)」の2つを合わせた造語で、日本語では金融ITあるいは金融テクノロジーと略されることもあります。

IT化で経理の時間短縮と負担軽減を実現

フィンテックは複数のサービスが組み合わさることで、より利便性が高まります。たとえば、金融機関の振り込みをネットバンキングで行い、それを会計データに連動させることで帳簿の作成が劇的にスピードアップします。振り込みが完了したそばから、帳簿に記帳されていくのです。

 

昔ながらの会計の作業だと、売上の請求書を手書きでつけ、請求書をもとに売掛帳簿をつくり、入金があれば領収書を作成し、会計データに入力する……。何段階もの事務作業が必要です。また給与計算においても、源泉徴収、社会保険料の計算や、雇用保険、労災保険といった労働保険料の算定など、専門的で複雑な計算をすべて手作業で行わなければなりませんでした。そのため、計算間違いも多く発生します。実際に、私も今まで手書きの給料明細を何百、何千と確認しましたが、源泉税や社会保険料が間違って計算されていたことは少なくありません。

 

しかし、会計業務がIT化されていれば、一度の入力ですべてのデータが連動し、二度手間・三度手間を簡単に排除することができます。計算にも間違いがありません。

 

さらに会計ソフトと請求書を発行するソフトを連動させることで、請求書を発行するだけで自動的に帳簿に同期することもできます。つまり、通常業務を行うだけで帳簿が自動的にできあがっていくのです。会計業務のIT化は時間短縮と負担軽減を実現する、非常にメリットのある方法だということがおわかりいただけるはずです。

 

日々の会計業務が負担なく進むため、適時の帳簿作成、月次の決算書作成も可能になります。この月次データをすぐに金融機関にメール送信すれば、金融機関からの信頼度はいっそう上がっていくというわけです。

 

ここ1、2年で会計ソフトやアプリは爆発的に普及しています。私の所属するTKCでも「FX2」「e21まいスター」といった会計ソフトが出ており、請求書を発行すると同時に帳簿の記帳も行ってくれるすぐれものです。

 

こうしたソフトによって、会計にかける時間は大幅に減少し、他の業務に時間と労力を割くことが可能になります。環境はすでに整っています。あとは、経営者自身がこれまでの手法を変えるか否かーー「やる気」にかかっているのです。

 

今このタイミングで会計システムを導入してIT化しなければ、経営は取り返しのつかないことになると言わざるを得ません。

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