今回は、中国人パートナーの信頼度を測るための「仮説力チェック」という方法をご紹介します。※本連載では、中国に進出する日本企業支援などに携わってきた、吉村章氏の著書『中国とビジネスをするための鉄則55』(アルク)の中から一部を抜粋し、仕事において「信頼できる中国人」の探し方を実践的に紹介していきます。

「問題ありませんよ」を繰り返す中国人は要注意!?

Q.「信頼できる中国人」と「危ない中国人」を見極める方法を教えてください。(1)「問題ない」をチェックするには?

 

A.一つ目は、「問題ない」と言う相手を「仮説力チェック」で見極める方法。問題が起きたと仮定して、対策などをどのように想定しているかを確かめてみましょう。

 

今回から、「信頼できる中国人」と「危ない中国人」の見極め方がテーマです。ここでは三つの方法を紹介します。もちろん、これらの方法は万能ではありません。それぞれの現場で必ずうまくいくというわけではありませんが、少なくとも私自身がこれまで現場で実践し、手応えを感じている方法です。ぜひ、皆さんも現場で試してみてください。

 

最初は「仮説力チェック」という方法です。

 

基本的に「没有问题」(問題ない)という言葉を口癖のように使う中国人は「有问题」(問題あり)と思っていた方が無難です。相手の言葉をそのまま受け入れるのではなく、本当に問題がないのか皆さんがチェックした方がよいことを第1回で取り上げました。

 

そこで、「問題ありません。心配しないでください」と言う相手に対してこう問いかけてみます。

 

「もし、問題が起こるとすれば、どんな問題が起こると考えられますか?」

 

この問い掛けに対して、相手がしっかり考えてきちんと自分の考えを話してくれるか、それともやはり「問題ない」と答えてくるか、相手の対応を見るのが「仮説力チェック」です。

 

本当に「問題ない」なら構わないのですが、経験上まったく問題がないということはむしろまれなことです。心配な点や起こり得る課題をきちんと整理して、きちんと説明してくれるかどうか、相手の対応をチェックするのが「仮説力チェック」です。

 

「今のところ問題はないのですね。しかし、仮に問題が起こるとすればどんな点が懸念されますか?」と問い掛けて、起こり得る課題を先回りして想定し、一つ一つ検証した上で、きちんと説明してくれるのが、理想的な相手です。

 

「没有问题」(問題ありませんよ)と口癖のように繰り返す中国人は要注意です。私自身痛い思いや苦い経験をしてきたのは、やはり「問題ない」を連発する相手です。「問題ないって言っているじゃないですか」「私のことが信用できないんですか?」と逆切れ(?)する相手はもっと要注意です。

 

もちろん、問題点を指摘されたり、疑われたり、まだ起こってもいない問題を持ち出されたりするのはあまり気分のいいものではありません。また、自分の方から問題点を相手に言い出すことは勇気が要ることかもしれません。しかし、「仮説力チェック」は信頼できるパートナーを見つけ出すための基本中の基本です。ぜひ、皆さんも実践してみてください。

相手の面子をつぶさない、という配慮も必要

社内のミーティングで「もし、問題が起こると仮定した場合」という問い掛けを行ってみます。これは社内で直属の部下をトレーニングするときにも効果的ですし、チーム力の育成やリーダーとしての資質チェックにも有効です。

 

「仮説力チェック」をしてみると、その人の仕事に取り組む姿勢やビジネスセンスがよく分かります。起こり得る問題の可能性を考えて、仮説を立て、それをきちんと話してくれる中国人は、社内でも社外でもビジネスのパートナーとして大切にしたい人材です。

 

仮説を上手に引き出し、きちんと意見交換ができる関係を作ることが社内のコア人材の発掘や対外的に信頼できるビジネスパートナーを見つけ出すポイントです。早い段階で危ない中国人を避けて、長く付き合える信頼できる中国人を見つけ出すために「仮説力チェック」は有効です。

 

私自身もこの方法でパートナー候補者の見極めを行っています。頼りになる中国人を何人も見つけてきました。

 

時には問題を隠そうとしているケースもあります。単に知らせたくないというのではなく、意図的に隠そうとしているのであれば、そもそもビジネスパートナーとして失格です。こういうタイプの人は遠ざけた方が無難です。

 

また、仮説やコメントを必要以上に迫り過ぎて追い込むと彼の面子をつぶすことにもなりかねません。相手の粗探しや問題を疑って掛かるのではなく、上手に仮説を引き出し、意見交換ができる関係を作ることがパートナーを見つけ出すポイントです。相手の面子をつぶさないという配慮も必要です。

 

実は、危ない中国人を避ける「特効薬」はありません。日本側からも問題点の発見を積極的に働き掛けて双方で問題点を洗い出し、仮説を考えることが相手にとってもメリットがあるということを伝えながら、しっかりコミュニケーションを図ることが重要なのです。

 

信頼できるビジネスパートナーを見つけ出すには、トライ&エラーを繰り返しながら、相手の考え方も理解し、時間をかけて地道にコツコツと進めていくことが必要です。

本連載は、2017年3月15日刊行の書籍『中国とビジネスをするための鉄則55』から抜粋したものです。その後の社会情勢等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

中国とビジネスをするための 鉄則55

中国とビジネスをするための 鉄則55

吉村 卓

アルク

海外ビジネスにかかわる人が知っておきたい情報をQ&A形式で簡潔にまとめる国別ビジネスガイドの第5弾。 これまでの4冊と異なり、仕事における人間関係に重点を置きました。これから中国ビジネスに携わる人だけでなく、すでに…

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