前回は、チャールズ・ブースが分析した居住層と「特定の小売業」の関係について取り上げました。今回は、商圏分析に社会地図を活用した「宅配ピザサービス」の事例について見ていきます。

カード分析による購買動向の知見が豊富なam/pm

「ピザブランドと居住者には相性がある」と指摘するのは、かつて成城石井や焼肉の牛角、コンビニエスストアのam/pm(2009年ファミリーマートに売却)を所有していたREXホールディングスの取締役でam/pm のCFO(最高財務責任者)でもあった佐々木靖典氏(金融投資会社リサ・パートナーズ)だ。関西拠点のピザチェーンの東京進出を支援したときの商圏分析に社会地図(ジオデモグラフィックス)を活用したときのことだ。

 

当初、コンビニエンスストアの経営に携わった経験から、宅配ピザのようなファストフードは都市部の若い単身世帯の多い地域に需要があるのではと想定していた。コンビニエンス業界の中でもam/pm は早い時期からEdy(エディ)などの電子マネー決済サービスを導入していた。そのカード分析経験があったので顧客の購買動向に関しての知見を豊富に持っていた。

 

am/pm は都心部を中心に店舗展開をする都市型コンビニの先駆けでもある。そのときの経験を宅配ピザのマーケティングに応用できるのではと考えた。

 

am/pm は都市部に店舗が多く中食(弁当、サンドウィッチ、総菜)などの売り上げは堅調だった。2008年のリーマンショックの際、郊外店舗の売り上げは落ち込みが激しかったものの、東京23区の店舗への影響はほとんどなかった。都心部には豊富な需要があることはデータからも明らかであった。

売上が視認性に左右されない宅配ピザサービス

宅配ピザサービスでは、商圏がそのまま宅配エリアとなる。通常、調理から配達まで30分で到達できるエリアを設定し、そこが商圏となる。コンビニエンスストアと違い、駐車場台数、看板の見えやすさといった施設と敷地に関わる制約条件はほとんどない。

 

コンビニエンスストアの場合、店舗や看板の見えやすさである視認性、アクセスのしやすさなどが売り上げに影響するが、宅配ピザサービスではこのようなミクロの立地条件に左右されないため、物件取得コストと初期投資を抑えて迅速に店舗網を拡大することができる。

 

その代わりに30分でピザを配達できるエリアの居住者特性が重要となる。都市部の若い単身・二人世帯やオフィスの多いエリアをターゲットとする仮説はコンビニエンスストアのマーケティング経験から想定したものであった。具体的な地域のイメージは都心環状7号線の内側だ。

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